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狼から来ました

1 :名無し募集中。。。:03/10/29 18:24 ID:nDOkntuJ
お前らカスですね

2 :ヘケタソ ◆yqNeta5laE :03/10/29 18:25 ID:OfcevR5t
        ,,.ノ)
       (;:;;◎・)∋
     ∋oノハヽヽ
      (:;川o・ー・)) クルップ-
     とと;:;フ(鳩)フ
      .じ``(,,,,,,,)


3 :名無し募集中。。。:03/10/29 18:28 ID:0qQqqHzL
GMから来ました

4 :名無し募集中。。。:03/10/29 18:30 ID:OfcevR5t
ずるいから来ました

5 :名無し募集中。。。:03/10/30 09:37 ID:H4nW5mUl
おかえり

6 :名無しべいべ―:03/10/30 10:06 ID:XKuxFXjz
いつも羊にいます

7 :名無し募集中。。。:03/10/31 09:40 ID:rmS6Xhmu


8 :名無し募集中。。。:03/10/31 18:51 ID:Yt/JIUne


9 :名無し募集中。。。:03/11/01 07:29 ID:gnMaiCnD


10 :でらえもん調査局ヽ(`Д´)ノ ◆CJMS06S/xs :03/11/01 12:09 ID:rGE2zgts
このスレは--

高卒でヒキコモリ、20歳で精神病院に入りながら
あらゆる迫害と戦い、ふり向くことなく、基地外としての自己を確立した>>1の記録である。

11 :名無し募集中。。。:03/11/01 16:05 ID:LoDgIiZh


12 :名無し募集中。。。:03/11/01 19:02 ID:j4ESsqPL


13 :名無し募集中。。。:03/11/02 00:01 ID:JR2cwzoJ


14 :名無し募集中。。。:03/11/02 06:23 ID:l8Wl2oDs


15 :名無し募集中。。。:03/11/02 11:19 ID:rDrjnRXP


16 :名無し募集中。。。:03/11/02 13:22 ID:wgkXcw1i


17 :名無し募集中。。。:03/11/02 19:35 ID:JR2cwzoJ


18 :名無し募集中。。。:03/11/02 21:58 ID:cxcZ8wcv


19 :名無し募集中。。。:03/11/03 06:03 ID:+Q67M7KK


20 :名無し募集中。。。 :03/11/03 07:31 ID:ZB7UNJPb
ここで小説書いてもいいですか?
内容は隔離された魔界街と言う異界の小都市で其々の青春を生き抜く
娘達の青春群像です。

21 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:15 ID:T9Fj394l
じゃあがんがって40まで持って行くよ

22 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:16 ID:T9Fj394l


23 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:17 ID:T9Fj394l


24 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:21 ID:0O1iOO6N


25 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:21 ID:0O1iOO6N


26 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:21 ID:0O1iOO6N


27 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:22 ID:0O1iOO6N


28 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:24 ID:bSRUTilq


29 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:25 ID:bSRUTilq


30 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:25 ID:bSRUTilq


31 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:25 ID:bSRUTilq


32 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:25 ID:T9Fj394l


33 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:25 ID:T9Fj394l


34 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:26 ID:T9Fj394l


35 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:26 ID:T9Fj394l


36 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:26 ID:0O1iOO6N


37 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:27 ID:0O1iOO6N


38 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:27 ID:0O1iOO6N


39 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:27 ID:0O1iOO6N


40 :名無し募集中。。。:03/11/03 09:28 ID:bSRUTilq
はいどうぞ

41 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:07 ID:WwHj351h

――― プロローグ ―――


人口が推定30万人弱の小都市がある。
市名は朝娘市(あさめし)。
関東の中心より北東にある某県の県庁所在地のある市より東方に有る
海に面したこの朝娘市は世界でもっとも有名な街の一つだ。


別名『魔界街』…


日本に有りながら日本の法律が適用できないこの小都市は日本国から…
いや、世界の理(ことわり)から隔世していた。


朝娘市は隣接する市町村…
いや日本とは『奇異な地割れ』によって隔離されている。
その地割れは一辺が20キロメートル程の六角形の形を形成していて
朝娘市を囲むように出来ていた。
地割れの幅は50メートル〜100メートル…
深さは…測定不能…一説には魔界に繋がっているとの噂だ。

そして、隔世のこの街と外界を繋ぐのは一本の橋だけ…
幅50メートルもあるこの橋は最高の強度を誇る最新の技術が使われている。

橋の下側に伸びている十数本の直径数メートルの極太のパイプは、
電気 水道管は勿論、あらゆる生活の為の光回線が伸びており、
日本と魔界街を繋ぐインフラの要となっている。


42 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:08 ID:WwHj351h

魔界街への流入は基本的には自由、簡単なチェックがあるだけだ。
しかし、出る時には自由は無い。
橋の外側で待ち構える日本側の自衛隊による厳重なチェックが必要だった。




魔界街へ入ろうとする一台のワゴン車があった。
チェックする自衛官が運転手の顔を見て上司の班長に目配せをする。
運転手は重大な事件を起こした指名手配犯に似ていたからだ。
しかし、首をすくめる班長は車内に武器の類が無い事を確認してから、すんなりと通した。

「班長、今のは…」
何故、あっさりと通行を許可したのか理解できない新入りの隊員に、半笑いの班長は
「放っておけ、猛獣の檻に何も知らないネズミが入るようなもんだ」
タバコをふかしながら新入りのヘルメットをポンと叩いた。




43 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:09 ID:WwHj351h

20年前…

芸能プロデューサーとして成功した、つんくという男がいた。
自分の芸能事務所が傾きかけた時、その男はあっさりと事務所を畳んだ。

つんくには野望があった。

日本のトップになる…
政治家として頂点に立つ事がつんくの夢だった。

芸能界での一時期の勢いは、つんくの貪欲な野望に拍車を駆けた。
「あの勢いを…駆け上る快感を永遠に!」

事務所閉鎖時に手元に残った数億円の金は初めての株で数十倍に跳ね上がった。

その泡銭で倒産寸前の製薬会社を買い取った。

子飼いの元アイドル崩れ達を使い、ライバル社の下半身スキャンダルを握り、
契約会社を次々と落とし、使い古した女達はゴミ屑のように捨てた。

関東の、ある田舎村『朝娘村』の中心地に本社ビルを構え
人口2千人弱の村の村長に就任したのは製薬会社起こして2年足らずのこと。

つんくは利益の殆どを村の復興に注ぎ込んだ。
翌年の人口は倍、更にその翌年は3倍に膨れる。

関係会社と下請け会社、その家族を次々と入村させ、
人口10万の市に格上げしたのは、それから5年後の事だった。



44 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:10 ID:WwHj351h

市の中心地にそびえる100階建ての超高層本社ビルの社長室から
自分の街を見下ろす市長兼社長のつんくは順調過ぎる自分の人生を
想いながら葉巻を燻(くゆ)らせる。

「ほっほっほ…ワシの言った通りになったじゃろう」
90度以上腰が曲がったしわくちゃな老婆がつんくの横で相好を崩した。

全ての成功の裏には、この老婆の存在が有った。

「あぁ…アンタの言う通りだった…素直にアンタに従った自分自身に感心するよ」
窓の外を眺めながら、つんくは次の計画への実行段階に入る事を決意した。




45 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:13 ID:WwHj351h

あの日…

芸能事務所が傾きかけた時…

自棄酒を浴びて酩酊しながら入った風変わりな店が、その後のつんくの人生を変えた。



『魔法堂』と書かれたその店を、酒で濁った頭の つんくは変わった飲み屋だと思った。
淀んだ空気のその店は、壁一面に異様な仮面や人形が掛けられ、
カウンターには見たことも無い変わった形の酒瓶が並んでいる。
酔いのせいか、空間も歪んで見えた。

「なんやぁ?けったいな店やな…まあええわ、ママァいっちゃん高い酒頼むわ」
カウンターに座りママを見た つんくの顔がギョっとする。
「…アンタその年で仕事して大丈夫か?」

年齢さえ定かではない黒尽くめの老婆が樫の杖を突いてヨタヨタと店の奥から出てきたからだ。

「ほっほっほ…おぬし、ようこの店を見つけたのぅ」
つんくの心配を他所に老婆はニンマリと笑う。

「…はぁ?」

「ここは人生の慇懃(いんぎん)に疲れ、迷い、苦しみ、酩酊した者が訪れる
虚ろな理が巣食う魔店じゃよ…」

「………??」
何を言ってるのか意味が分からない つんくはポカンと口を開けたままだ。


46 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:15 ID:WwHj351h

ヒッヒッヒと笑う老婆は、つんくに紫色の液体が入った小さなグラスを差し出した。
「まぁ飲みなしゃい…酔い止めの魔酒じゃよ」

「………」
グラスを一気に飲み干した つんくの酔いは完全に醒めた。

「この店は年に1人か2人しか客が来なくてのぅ…
まぁ一般人には見え難いようになっておるんだがのぅ」

「………」

「来た客には夢と引き換えに人生を賭けて貰っておる…
今まで成功した奴はおらんがのぅ、ヒッヒッヒ…」

「……そ、そうですか…じゃ」
そう言って席を立って手を振り出ようとする つんく。

「待ちんしゃい」
コツンと杖が鳴った。

恐る恐る振り返る つんくの目の前に10p程の黒い球状の空間が有った。

「魔界に繋がる空間じゃ…手を突っ込み抜けたら おぬしの願いは叶う」

「…ハハ…抜けなかったら…?」

老婆はニヤリと笑って答えなかった。


47 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:17 ID:WwHj351h

有り得ない…
そう思いつつも、目の前に黒い球状の空間が有るのも事実だ。

「さっき飲んだ魔酒は魔を惹きつける…
ほっほっほ、もう後には戻れんのじゃよ」

確かに、引き返そうと思えば出来る。
だが…何故かその選択は考えられなくなっていた。

もう、潰れそうな人生だ…
どうなってもいい…

つんくは空間に右手を入れて瞬時に抜き取った。

「うわぁぁあああぁぁああ!!!」

抜いた右手には黒い液状の蠢く物体が絡み付いていて
プツプツと湧き出る数え切れない小さな目が つんくを見ていた。

「ひぃ!…あぐぁ!」
その奇異な生き物は開いた つんくの口に入り消えた。

卒倒した つんくが気付くと目の前に老婆の顔が有った。

「ほっほっほ、魔を体内に入れた人間は久しぶりに見たぞぃ
普通はあのまま魔空間に引き擦り込まれて終わりじゃ」

「……ど、どうなんだ?…俺はどうなるんだ?」
つんくは老婆の細い肩を揺さぶった。


48 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:18 ID:WwHj351h

「じゃから言ったろうに…夢が叶うって…
それにはワシのアドバイスが必要になるがのぅ」

「………」

「…この地に来て50年…ようやくワシも、この店を畳むことが出来るわい…」

「……」

「ワシの名前はマジョユウコ…齢200歳の婆じゃ…日本では中沢裕子と名乗っとるわぃ」

「…俺は…つんくだ…」

「ほっほっほ、けったいな名前じゃのぅ…まあええわ、さあ立ちぃ」


しわくちゃな老婆の手が つんくに差し出された…





49 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:20 ID:WwHj351h

朝娘市がすっぽりと入る市の外郭に6本のタワーが建設された。
高さ50メートルにもなる三角錐の建築物は市の中心地にそびえる
『ハロー製薬』本社ビルを中心に六方に均等に広がり巨大な六角形を形成していた。

市民には観光目的の記念碑と説明し理解を求めた つんく市長に反対意見が出るはずも無く
あっさりと市議会を通過して市の予算で建設されたのだ。

2年の突貫工事で建設されたタワーは異様な佇まいを醸し出している。



「ついにこの時が来たようじゃな…」
深夜の社長室の中心に六角形の紋様を書き六個の蝋燭を立てたマジョユウコは
樫の杖をその中心に突き立てた。

「もうじき午前2時じゃ…」
壁掛け時計に目をやり、つんくを見た老婆は笑っていた。

「この六芒星の中心に魔空間を出現させれば、この街は魔界と通じる…」

魔空間と聞いて つんくは、あの時のおぞましい出来事が脳裏を過ぎった。
「…俺の野望は本当に叶うのか?」

「ひっひっひ、思いのままじゃ!おぬしの…そしてワシの願いもじゃ!」

「アンタの願い…?…聞いてないぞ」
少し怪訝そうな つんく…

「ほっほっほ…おぬしに比べれば他愛も無い願いじゃ…」


50 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:22 ID:WwHj351h

「……やってくれ…」
僅かな沈黙の後、重苦しそうに呟く。

----俺はマジョユウコの手足になっていただけなのかもしれない----

微かな疑念がつんくの頭を過ぎったが、ここまで来ては引き返すことは出来ない。

「ほっほっほ…」
突き立てた樫の杖の丸い瘤がボウと青く光りだす。

「いくぞぃ…」
何やら呪文を唱える老婆の目が光りだす。

「キェェエエエェエエ!!」
叫ぶと共に青い光の中心に黒い空間が浮かび出てきた。

----ブン----

世界が黒くなった…
「停電か!」
社長室の窓から外を見ると街全体が黒く塗り潰されている。

「な、なんだ!アレは!?」

街を取り巻く六個のタワーが青白く光り振動し、自ら放電していた。

その青白い炎は、まっすぐにこの巨大ビルに伸びてくる…


51 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:23 ID:WwHj351h
----ブォン----

マジョユウコが描いた六芒星が青く光り始める…
瞬間、異様な雄叫びが室内に響いた。

いや、朝娘市全体に響き渡った。

それは、人の物では無い…

地の底から湧き上がる無数の魔声の集合体だ。

----ドン!----

邪声が収まると同時に、ソレは来た…

「うわぁぁああ!!」

バリバリと耳を引き裂くような雷鳴と共に つんくは宙を舞う。

巨大地震が朝娘市を覆ったのだ。

ゴゴゴゴと鳴り響く地震の音は地中を蠢く魔界からの咆哮に聞こえた。

「マ、マジョユゥゥウコォオオ!!どうなってるんだぁぁぁあ!!」

「…ヒャハハハ…」

ガラガラと崩れる壁に紛れて魔女の哄笑が木霊する。

「き、貴様ぁぁああ!!知ってたなぁ!こうなる事を知ってた…!!!」

魔震とも呼べるその激震は一瞬とも永遠とも感じた。

52 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:25 ID:WwHj351h


気を失った つんくが気付いたのは割れた窓から朝日が差し込んで顔を照らしてからだった。

「……」
朦朧(もうろう)とする つんくの耳に初めて聞く声が届いた。

「おや、ようやく気が付いたかい?」

「…?…誰だ?…お前…」

「この服…分かんない?」

「…!!」

杖を持った黒マントと黒服…
妖艶な微笑みを湛える美女はマジョユウコだった。

「…お前…」

「あんたのお陰で若さを手に入れたよ」

齢200歳を越える老女の目的は永遠の若さだった。
其の為だけに魔術を学び研鑽し、巨大なエネルギーを呼び込む生贄を探した。

数年の内に巨大な資産と名誉を創り上げた つんくは、言わば魔術の為の人柱だったのだ。

「魔界のエネルギーは私に永遠の若さを与えたのよ!」

キャハハハハと笑う魔女を恨めし気に見る つんく。


53 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:26 ID:WwHj351h

「き…きさま…」

「フフ、あんたの街は崩壊したよ…見てごらん」

「……!!!」

つんくの目が驚愕のソレに変わる…

「…う…うがぁぁぁああぁぁぁぁああああ!!!」

ヨタヨタと立ち上がり壊れた窓に手を掛けた つんくは絶望の絶叫を上げた。


あちこちに火の手が上がる街はサイレンの音も無く静まり返り、
無残な残骸だけが残った廃墟の街に変貌していたのだ。


「さて…」
マジョユウコは杖に跨るとヒョイと窓から飛んだ。

「もう、アンタも、この街にも用は無いわ、強力な魔力も戻ったしね」

手を振って飛んで、高笑いを上げながら空の彼方へ消えていく魔女を呆然と見送りながら、
つんくはガックリと膝を突き、魔女の真意を見抜けなかった自分を呪った…





54 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:28 ID:WwHj351h

朝娘市は完全に外部から遮断された…

六芒星のタワーの外周は巨大な地割れによって隣接する市町村と別れ
朝娘市を完全な陸の孤島に化したのだ。

携帯も通じず、ヘリコプターも朝娘市に入れなかった。

地割れの上空に入ると機械類…エンジンが止まったのだ。
何台ものヘリコプターが地割れに飲み込まれ、行方が分からなくなった。

何よりも心配されたのは市民への被害だったが、
地割れにより遮断された50メートル足らずの向こう側は
底の見えない地割れより湧き出てるとしか思えない、
空気の歪みにより望遠鏡でも見えない状況なのだ。

あらゆる手を尽くしたが不可思議な力によって全ての救助活動は失敗に終わり、
朝娘市への救助は諦めざるを得なかった。


外部と朝娘市の接触は日本側から頑丈な橋を掛けるまで2年もの時間を有した。

街の人口は2/3まで減っていたが市民は自分達の手である程度まで街を復興させていた。


55 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:29 ID:WwHj351h

しかし…

時間がかかると思われていた復興は、ある企業によって急速に回復し
急カーブを描くように発展し、5年後には人口30万とも言われる小都市にまでなった。

『ハロー製薬』

つんくの企業は死んではいなかったのだ。

癌の特効薬を開発したのを皮切りに
次々と新薬を造り、発表する開発能力は世界でもこの企業だけだ。

その秘密は、次第に明らかになる『魔界街』に巣食う魑魅魍魎の類…
新発見の植物、生物…それらから抽出される物質が新薬開発の源だったのだ。




56 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:31 ID:WwHj351h

橋を渡してから1年後…
政府は朝娘市に対して隔離政策を取る事になる。

無断で持ち出される、それらの動植物が通常の人間界に牙を剥き出す
究極のバイオハザードの原因だと明らかになったのからだ。

朝娘市内では殆ど無害な動植物は
街を離れると、途端に凶暴な毒性を撒き散らす…

ある町は朝娘市から持ち帰った植物が噴出す謎のガスにより伝染病の蔓延で死の町になり、
ある市では獣人と思しき人間による大量殺人で数十人にも上る犠牲者がでた。
自衛隊が出動したその事件は朝娘市から観光で帰った人間が変異した姿だった事が後で分かり、
警官だけで対応しようとした警察庁長官が責任を取って辞職する騒動にもなった。


朝娘市からの出入りを厳重にチェックしだした政府は
この街が日本の法律さえ適用出来ない事を悟った。

朝娘市は日本から完全に隔離された、治外法権の特別都市に指定されたのだ。

そして、何時しか朝娘市は『魔界街』と呼ばれるようになる…

その『魔界街』…朝娘市の市長兼国会議員は つんく…

朝娘市独自の法律を制定し、自ら全ての権力を手中に収め、
不死身の復活を果たした この男は、
世界一の製薬企業『ハロー製薬』の社長兼会長になっていた…



57 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:32 ID:WwHj351h

――― 1話 不安 ―――



窓から見える空には名前も知らない鳥が羽ばたいて遠くに消えていく…

自分もあのように飛べたら、どんなにいい事だろう…

そうしたら、今、ここから羽ばたいて逃げれるのに…

逃げる…?

どこから…?

逃げられる事など出来ない事はとっくに分かっている…

でも…

飛んでみたい…

空を思いっきり飛んで、何もかも忘れたい…

そうしたら…

きっと…



58 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:34 ID:WwHj351h
車のフロントガラスから朝娘市の中心にそびえる『ハロー製薬』本社ビルが遠くに見える…
3月下旬の春の陽気に包まれていながらも、
魔界街の外側からは街並みが陽炎のように歪んで見えるのは、
地割れから湧き出る妖気の為だと皆が言う。

セダンの後部座席に乗る安部なつみは運転席の父親と助手席の母親を交互に見詰めた。

2人とも談笑し、和やかだ…
「見えてきたな…」
「噂通りの外観ねぇ…」

安部はハ〜と不安のため息をつく。

「どうした?なつみ…不安か?」

「…う、うん…ねぇ、やっぱり北海道に帰ろうよ」

「何言ってるの、お父さんは仕事なのよ」

「そうだぞ、しかも栄転だぞ、なつみも最初は喜んでたじゃないか」

「……」

『ハロー製薬』北海道支社に勤める父親は、薬の開発能力を認められ
部長待遇で本社勤務を命じられたのだ。

ハロー製薬本社勤務…
観光では人気が有るが、そこに住むとなると話が違う、
皆が忌み嫌う魔界街勤務を喜ぶのには理由が有る。
それは、地方支社と本社勤務では給与に雲泥の差があり、
日本の法律が及ばないこの土地では、様々な優遇措置を得られるのも大きい。
この栄転話しに乗らない手は無かった。

59 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:36 ID:WwHj351h

「…心配するなって、我が社の社宅は魔界街でも最高級のセキュリティレベルだ
変な怪物がいたって襲われる事はないよ」

「ハハハ…怪物って…」

「もう、お姉ちゃん心配しすぎ!」

何度かめのため息をつく なつみに妹の麻美が呆れる。

なつみが高校3年生、麻美は高校1年生の春である。


魔都へと繋がる橋が見えてきた。

「ずいぶんと広い橋だねぇ」

「朝娘市に繋がるのはこの橋一本だからな」

朝娘橋と名付けられてるこの橋は幅50メートル6車線の巨大橋である。
外界から魔界街に入る車線が一本に対して魔界街から出る車線は4本も有った。
しかし、その4本の車線は全て渋滞している。
危険な街と分かってはいても、怖い物見たさの観光客は後が絶えず、
帰りの橋の出口での、自衛隊による物々しい厳重なチェックに何時間も待たされようが
この街への観光ツアーは絶大的な大人気を誇っているのだ。

そして、もう一本の車線は『ハロー製薬』専用の車線だ。
こちらは魔都に入るのが簡単なチェックで済まされるのと同様に
出るのもチェックが簡単な手続きだけで済まされた。

『ハロー製薬』は絶対的に優遇されているのだ。


60 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:37 ID:WwHj351h

一般車に交ざり魔界街に入る安倍家のセダン。

「ねぇお父さん、なんでハロー製薬専用の道で行かないの?」

麻美の質問に父親は笑って答える。
「あぁ、あの道は専用車じゃないと駄目なんだよ」

「じゃあ、私達も出るときは、向こうの道の渋滞に巻き込まれなきゃ駄目なの?」

「まぁ、この車じゃそうだろうな、でも会社の車を使えば専用車線を使えるから
そんなに心配するな…って麻美はもう出る事を考えてるのか?」

「い、いや、ほら東京も近いし、休みの日には東京に遊びに行きたいなぁって…」

ヘヘヘと笑う麻美と、ハハハと笑う両親…
安倍なつみは、窓の外に流れて見える眼下の地割れを ぼんやりと眺めていた…

本当に何処まで深いのか分からない、魔震で出来た地割れの溝は
政府の調査団が数人の死亡者を出した為に諦めた事で、
謎のまま有耶無耶(うやむや)になっているのだ。




61 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:38 ID:WwHj351h


車の後ろの窓から空を見る、安倍なつみの表情は重い…


鳥達は魔界街には入らず、旋回して引き返していく…


あの街に入ったら出られない事を知っているかのように…


この橋を渡りきったら、もう2度と此方側には帰って来れない…


安倍なつみは、重い瞼をそっと閉じて、なんとなく そう思った…





62 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:39 ID:WwHj351h

――― 2話 吉沢と石川 ―――


「ふう、今日も良い湯だったぜ」
ゴシゴシとタオルで頭を拭きながら自分の部屋への階段を上がる。

「さてと…」
洗いざしの髪をバサバサと頭を振って右手で掻き上げ、
自分の部屋の机の引き出しに隠してあるタバコを取り出し、
窓枠に腰かけ、夜空を眺めながら一服するのが吉沢ひとみの寝る前の日課だった。

「ありゃ!今日は満月か…」
空は星が煌き、煌々と夜景を照らす月明かりが心地良い…
だが、吉沢は恐る恐る、パジャマの上から自分の胸を触ってみた。

「…やっぱり…なんか風呂に入ってる時モゾモゾしたんだよなぁ…」
自分の胸の膨らみを確かめて吉沢ひとみは明日の新学期の制服をセーラー服にするか
それとも、何時も通りの学ランにするか少し悩んだ。

吉沢の通う高校『私立ハロー女子高』は明日から新学年(3年生)の新学期を迎える。

「やっぱり、学ランにするか…」
一人勝手に頷くが、パジャマの首の部分を引っ張り、中を覗いて ため息をつく。

こんな体になったのは何時ぐらいからか…

思い出して、少し顔を赤らめた…



63 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:41 ID:WwHj351h

子供の頃から男勝りだった吉沢は何時も男子とばかり遊んでいた。
男子に混ざって、女子のスカートめくりをしてゲラゲラ笑っていた少女だった。

そんな吉沢も小学校を卒業する頃には、丸みを帯びた体型になり
男子にからかわれて、泣いて帰った事もあった。

女の子の体形のまま男子と遊ぶのが急に恥ずかしくなり
中学は女子大までエスカレーター式の私立の女子中学を選んだ。

そして当たり前の事だが、中二の二学期を迎える頃、少し遅い初潮を迎えた。


どんな作用が有ったのかは、勿論知る由も無い、病院にも行ってないからだが、
行ったところで治る訳でもないし、治す気も無い…
ましてや病院なんか「あっそう…で?」で済ますような街だ…

ここは『魔界街』なのだ。

生理はその初潮一回きりだ。
次からは無くなった。

徐々にではあるが男性器が生え、喉仏が出て、体もごつくなった。

「ハハハハハ…」
何故か笑いがこみ上げてきた。


64 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:42 ID:WwHj351h

「しゃあないだろ、なってしまった物はなってしまったんだから」
最初、親は泣いて神を呪ったが、吉沢はあっけらかんとした物だ…
その姿を見て両親も諦めがついたのか、男の子が出来たと今は喜んでいる。

そんな性格の吉沢ひとみ…
性別など、別にどうでも良かったし…どちらかと言えばこっちの方が面白そうだ。

同級生の反応を想像してニンマリしたり、悩んだり…

懊悩を繰り返し、出した答え…

暫くの間、隠して通学するつもりだった…が…直ぐにバレた。




65 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:44 ID:WwHj351h

「な、なに?よっすぃ!ソ…ソレは!?」
体育の時間にクラスメートの石川梨華が吉沢のブルマの股間の膨らみを
目敏く見つけ指を刺して叫んだのだ。

「わぁ!バ、バカ!ち、違うんだよ!コレは!」
何が違うのか分からないが、吉沢の嘘は石川が股間を握って完全にバレた。

「痛ッテェ!バカ!何すんだ!」

「…ゲェ!なに?本物?」

「うるせー…!!…って、お、お前等…」

吉沢の顔が蒼くなる…
クラスメート達が興味津々な顔つきで吉沢の股間ににじり寄って来たからだ。

「わぁぁああ!止めろぉぉおお!」

吉沢は男の体力で股間を触ろうと近づくクラスメート達を薙ぎ倒した。

ハァハァと息を切らして対峙する、一人の男と股間の膨らみを狙う女達の間抜けな光景は
体育の教師が怒鳴り散らして納まった。



66 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:45 ID:WwHj351h

職員室に呼ばれ、事情を聞かれたが
吉沢の処遇をどうするか教師達も決めかねず、結局暫く様子を見る事で落ち着いた。

数ヵ月後…
自分でも何故かは知らないが、月に数日間 女に戻る事が分かった。

女の体を担任に見せて…職員会議で出た結論は、学校に居ても問題無しとの事だった。
退学させられるのではと思っていた吉沢には、
少し拍子抜けだったが、ホッとしたと言うのが本当の気持ちだ…

吉沢はこの学校とクラスメート達が好きだったのだ。

満月の夜から数日間 女に戻ると分かったのは、高校に進学してからの事だ。






67 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:51 ID:WwHj351h

ぼんやりと満月の夜空を眺めていると、月に吸い込まれそうな…不思議な気持ちになる。

「よっすぃ…」

呼ばれて、声のする方を見ると月明かりに照らされた石川梨華が
路地にポツンと佇み、此方に向かって手を振っている。

「なんだ、オマエか…」
ピッと火の点いたタバコを石川に投げつけて吉沢はニッと笑った。

「わぁ!危ないなぁ、もう!」

「ハハ、待ってろ、今行くよ」

Tシャツとジーンズに着替えて、ベッドの下に隠してたスニーカーを履き
二階の自室の窓から跳び下りる。

「おいおい、いったい何時だと思ってるんだ?もう11時過ぎてるぞ」
頭を掻き毟りながら面倒臭そうに石川の存在を突き放しつつも、
吉沢は満更でもなさそうだ。

「へへ、会いたくなったんだもん」
そう言いながら石川は腕を組んでくる。

「ぁあ゙、もう離せよ!暑苦しい」

「いいじゃん…ってアレ?」

吉沢の胸の膨らみを見て石川は空を見上げた。


68 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:54 ID:WwHj351h
「なぁんだ、今日は満月か…ちぇ」
腕を離して頬を膨らませて、プイと唇を尖らせる。

「…オマエ、俺が女だと分かると、えらく態度が悪くなるな…なんだよ『ちぇ』って」

「だってぇ…」

石川は腕を後ろに組んで不満タラタラだ。

「あのなぁ、俺はオマエと付き合ってる訳でも、何でもないんだぜ…
そりゃまぁ、そのなんだ…弾みでキスぐらいはした事あるけどよ…」

吉沢はポリポリと鼻の頭を掻いて、少し照れた。

「私はその先に進みたいの!」

「ハハハ…って、ハァ?」

「いいじゃん!」

吉沢は呆れて空を見上げた。


69 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:56 ID:WwHj351h

「オマエ…アレだ」

「何よ?」

「ほれ…」

吉沢は満月を指差した。

「だから何よ?」

「満月は女を変えるって言うからな…」

「……?」

「サカリがついたんだろ?」

「…!!…よ〜っすぃ!!」

怒る石川に笑顔の吉沢…

石川はドキリとした。

吉沢の瞳に吸い込まれそうになった…


70 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:58 ID:WwHj351h

「バ〜カ、冗談だよ、ほら 送るから素直に帰ろうぜ」

「…う、うん」

「なんだぁ?急に しおらしくなって…変な奴だなぁ」

「…うん…変なの…」

スッと吉沢の腕に自分の腕を絡めて身を寄せる…

「わぁ!だから腕を組むなって!」

「いいじゃん…」

「……勝手にしろ!」

「勝手にするもん…」

「……」

月明かりに照らされる2人の影は恋人同士そのものに見えた…





71 :HN募集中。。。 :03/11/03 19:59 ID:WwHj351h

「おいおい、可愛いらしいお嬢ちゃんが2人、こんな夜中に出歩いてちゃイケナイねぇ」
ビルの物陰から吉沢と石川に声をかける男の声。

無視する2人を物陰から出てきた男が呼び止める。
「待てや!娘っ子共!」

振り向く吉沢の声は気だるい。
「何の用?」

「ここは魔界街だぜ、こんな時間に俺達に呼び止められたらどうなるか…
答えは分かっているだろう?」
男は2人…見るからに悪人面の痩せ男とチビだ。

ダラリとポケットに突っ込んだ吉沢の右手の指がピクピクと動く。
(使うか…アレを…)
だが、こんな『魔界街を知らない』チンピラに『アレ』使うのもバカバカしい…

「ご、強姦でもするの?」
石川は怯えた振りをして吉沢の後ろに隠れて、背中にピッタリと身を寄せた。
(強姦って、コイツ…)
業とらしい石川の演技に、吉沢は苦笑する。

「…うん?」
吉沢は男達の足元を見て ある物に気付き、 腰に両手を置いて、
(駄目だこりゃ…ご愁傷様)と溜め息混じりに首を左右に振った。


72 :HN募集中。。。 :03/11/03 20:02 ID:WwHj351h

「ねぇ…アンタ達、市外から来た人間かい?」
呆れついでに 分かってはいるが、一応聞いてみる。

「ハァ?何言ってんだ?」
立場を分かっていないのはお前達だ、と言わんばかりに歪んだ笑みを漏らす痩せ男。

吉沢は少しイラついた…その醜い笑いが癪(しゃく)に触った。
「だから、市外から来たのかって聞いてるの…これでも丁寧に聞いてるんだよ、答えな!」

「そんな事に答える義理は無えなぁ!」

「フ…」

「何が可笑しい!」

踏み出そうとする男に、右手を上げて制した吉沢は侮蔑の笑みだ。

「人間の心理かねぇ…恥ずかしさからなのか、舐められるのが嫌なのか…
市外から来た人間は大概 答えないんだよねぇ」

上げた右手が男たちの足元を指差す。
「見てみな…」

「…!!…な、なんだこりゃ!」
男たちの両足は足首が見えなくなる程、コールタール状の物体がネットリと絡み付いてる。


73 :HN募集中。。。 :03/11/03 20:04 ID:WwHj351h

「ハハ、今頃気付いたのかい?名前は知らないが、皆 黒アメーバて呼んでるよ」

「う、うわぁ!うわ!」
ビルの陰から伸びている黒アメーバは男達を引きずり込もうと
膝までコールタール状のネバネバが絡みついている。

---パンパンパン---

男が懐から取り出した拳銃がアメーバに向かって火を噴く…
だが、効く筈も無くアメーバは男達の体を飲み込んでいく。

「わぁぁぁああ!!た、助けてくれ!!」

「知らないね…」

「そ、そんな…」
ブクンと飲み込まれた男達はそのまま物陰に引き擦り込まれて消えた。

「…いくらココがA地区(治安が良い地区)だと解かってても、
こんな時間に何の知識も無く、ビルの陰に隠れている奴はこの街では生きていけないよ」
タバコを取り出して咥える吉沢は、ビルの壁でマッチを擦り火を点けた。


74 :HN募集中。。。 :03/11/03 20:06 ID:WwHj351h

「よっすぃ!格好いい!いよっ男前!!」
石川はパンと吉沢の尻を叩いてケラケラ笑った。

「バカ、ちゃかすなよ…それに俺は何もしてないぜ」
フウと紫煙を吐き出し、サラリとこんな台詞を言うところがまた、石川の心をくすぐる。

「フフ‥格好いい」
石川はマジマジと吉沢の顔を見詰めた。

「……ハハ‥ハ」
吉沢は半笑いだ。

「でも、コイツ等 銃使っちゃったね」
しょうがない連中だなぁと言うように石川は車列の少ない道路を
手をかざして何かを探すように眺めた。

「……あぁ」
吉沢は フゥとため息をついた。
現場から逃げるのも面倒だ…どうせ見付かり追いかけられる…
だったら、待ってる方が楽だ。


「来た…」

パトカーのサイレンが聞こえてきた…




75 :HN募集中。。。 :03/11/03 20:08 ID:WwHj351h

実は魔界街は案外 治安は良い方なのだ。
その理由は絶対的武力を誇る朝娘市の警察組織にある。

許可の無い者の銃火器の所持 発砲は御法度、見つかれば射殺されても文句は言えない。
市民権を持つ者だけが朝娘市警察の許可の上で
自衛の為の所持が許されているのだ。

自由に入れるこの街だが、市民権を得るのは難しい。
いや、条件をクリアすれば難しくは無いが…
この街に入る人間は観光客以外、なんらかの理由が有る人間が殆どだからだ。

警察での指紋摂取、犯罪暦の有無、病暦、等が徹底的に調べられ、
住居の確保とソコを引っ越す場合の3年間の届出の義務…等々…
市外から来る「訳有り人間」が警察での調査など耐えられる筈が無い。
故に市民権を得るのが難しいのだ。



パトロール中の朝娘市警察の新人警官、後藤真希のパトカーに装備されている
高性能レーダーが発砲音を確認した。
『娘通り**−*番地の○×ビル付近から銃声を探知しました』
レーダーのスピーカーから聞こえる無機質な音声を切り、
ハンドルを回し急発進で現場に向かった。

新入りと言っても『魔界街』の警官は訓練の結果、殆どの銃火器を使いこなし、
武術も有る程度まで達していないと採用されない。
後藤真希は、若干18歳ながら殆どの試験をトップクラスで通過した
今年度最高の期待の新人だった。


76 :HN募集中。。。 :03/11/03 20:10 ID:WwHj351h

後藤が現場に到着すると2人の少女が佇んでいた。

パトカーを降りた後藤の両手には自動小銃が握られている。
「手を上げて、頭の上で組んで」

言われた通りにする吉沢と石川。

「…高校生か?IDカードは?」

「家に忘れた…」

「あっ、私持ってます」

石川のポーチからIDカードを取り出して確認する後藤…
どうやら本物のようだ。

「ハロー女子高の生徒か…お嬢様なんだな」

「へへへ…」
石川はペロリと舌を出して愛想笑いだ。

「ふむ、じゃあ事情を説明して」
手を下ろさせて事情を聞く。

「市外から来た2人組みに襲われそうになった…それだけだよ」
首を竦める吉沢は全く悪びれてない。


77 :HN募集中。。。 :03/11/03 20:11 ID:WwHj351h

「銃声は?」

「アメーバに向かってアイツ等が撃った」

「…ふーん、で?」

「ソイツ等は黒アメーバに襲われて、そのビルの陰に…」
吉沢は顎をしゃくってビルの陰を指した。

「アレか…チッ、やっかいなんだよなぁ、あの生き物は…」
聞かなきゃ良かったと後藤は少し後悔した…
成績トップの新人でも、嫌なものは嫌だ。

しかし、どのような理由であれ、人間を襲った生物は殺さなければいけない。

「ふぅ…分かった、お前等はもう帰っていいぞ…気をつけてな」

そっけなく立ち去る2人の女子高生を見送り、
後藤はパトカーから本署に連絡を取ってから、
助手席に並べられた武器類から火炎放射器を選び出し肩にかけた。

「チッ、つれない連中だぜ…」
本署からの返事は、取り合えず応援に行くが
それまでに処理しておけ、と言うものだった。

キュっと生物耐性の革ジャンのチャックを首まで締めて
ヘルメットを被り、後藤はビルの谷間に消えた…




78 :HN募集中。。。 :03/11/03 20:16 ID:WwHj351h
取り合えず、一気にココまでUPしてみました。
小説の題名は考えてなかった、考えても良い案が出なかったので『魔界街』そのままにします。
>>21-40おお!ありがとうございます。


79 :名無し募集中。。。:03/11/03 20:25 ID:wcF+OOdm
更新お疲れです

もうね、のっけから面白そうな展開
今後どんな風に話が続いていくのか楽しみです

80 :HN募集中。。。 :03/11/04 00:25 ID:Cr5AFMoh
他のスレ回ったら「HN募集中。。。」って名前の作者さんがいた…
知らずとは言え、失礼な事をしてしまった。
全然別人です、申し訳ない。
次回にはHN考えておきます。

>>79早速レスくれてありがとうございます。
明日もUPするつもりですので待ってて下さい。


81 :名無し募集中。。。:03/11/04 19:41 ID:J6HBqquV
小説総合スレでタイトルに惹かれて来てみたらやっぱり「新宿」だ……楽しみ楽しみ。
配役が面白いですね。ブルース系だとさらに嬉しいけど。


82 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:03 ID:Cr5AFMoh
――― 3話 出会い ―――


安倍なつみが朝娘市に引越して来て一週間が過ぎた。
過ごしてみて分かった事が有る…
それは当初のオドロオドロしい魔界街の印象と現実は違っていたという事だ。

安倍の住む地区の治安が最高レベルの高級住宅街といった理由もあるが
そこに住む住民は普通に過ごし、変な生き物も見なかった。

そして、何よりも治安が良い事に驚いた。
この街の警官は何時も武装していて街をパトロールしている…
それも数が市外の都市なんかより断然多い。
最初に見かけた時は怖い印象が有ったが
一般住民が普通に過ごす分には、これほど頼もしい存在もなかった。


安倍は段々この街が好きになってきていた。

そして、今日は『私立ハロー女子高』の転入の日だ。

新調した真新しいセーラー服に身を包んだ安倍に
担任の石井リカは廊下で待つように言い残し、教室に消えた…
安倍の心臓はドキドキし始めた。

3年B組の表札を見ながら、どんな挨拶を言うつもりだったかを
思い出そうとしたが完全に忘れていた。

安倍の緊張は頂点に達していたのだ。

「あわわわ…どうしよう、どうしよう…」
オロオロし始めた所に石井から入るように言われ、恐る々教室に足を踏み入れた。

83 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:04 ID:Cr5AFMoh

30名程の視線が安倍に突き刺さり、安倍の体は硬直してカチカチになった。

「ほら、なにやってるの?挨拶しなさい」

「は、はぃ!」

石井に促されてもピンと硬直した体は元に戻らない。
「え…え‥と‥あの…そ、その…」

「もぅ!…一回、深呼吸しなさい」

「は、はひ!」」

安倍は落ち着こうと深呼吸をする…その数、1回、2回、3回、4回…
教室からクスクスと笑う声がチラホラと漏れる…
5回、6回、7回…

「貴女、何時までやるつもり!」
石井に尻をペンと叩かれ我に返った。

「…!は、はい」
少し落ち着いた…

「あ…っと、初めまして、安倍なつみと言います…北海道から来たべさ」
ペコリと頭を下げる。

「べさ…って…」
「か〜わいい」
クスクスとまた失笑が漏れる…


84 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:06 ID:Cr5AFMoh

安倍は昨日考えた挨拶を思い出して、滞(とどこう)りなく話した…
が、話しながら教室内のクラスメートをさり気無く見ていて、
奇妙な光景に目を奪われた。

奇妙と言っても2人の生徒なのだが…

廊下側の一番後ろの席の生徒と、窓側の一番後ろの席の生徒だ。

廊下側の生徒は「学ラン」を着ていて、安倍の事など興味が無いのか、
腕を組んで目と閉じて寝ているように見える…
(男子…?…何故?)

そして、さっきから安倍を見て、声を出して「うぉお」と感心したり
クスクス笑ったり、「キャハハハ」と声を出して笑ったりする
リアクションの大きい生徒だ…
それはいいとして、安倍が目を丸くしたのは、その生徒の頭の上で子猫が
丸まって寝ているいるからだった。
(なに?なんで頭の上で猫が寝てるの?)

目を白黒させてる安倍に向かって その生徒はニーっと笑って見せた。

「それじゃあ、席は…」
何処にしようかと教室を見渡す石井に向かって
「先生!ココ、ココ!」
と、頭に猫を乗せた生徒は自分の隣の席をバンバン叩いた。

「うん?どうしたの矢口さん、そこ空いてるの…よし、安倍さん、あそこの席に座って」

「はい…」


85 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:08 ID:Cr5AFMoh
安倍が席に着くと矢口と呼ばれた猫娘はニンマリと笑って手を差し出してきた。

「オイラ…矢口真里、ヨロシク」

「は、はい」

握手をしながらも安倍の目は猫に釘付けだ。

よく見ると猫は子猫ではない、子猫並みの大きさだが
体型はシャム猫の成獣だ。

猫はチラリと安倍に一瞥を繰れると、欠伸をして頭の上で丸くなった。

「ハハ、コレか?」
矢口は自分の頭の上の猫を指差した。

「…はい」

「この子はオイラの使い魔の『ヤグ』」

「…使い魔?」

「そう、簡単に言えば、何でも言う事を聞くペットみたいなもんだよ…
フフ、私って魔女なんだよねぇ、まだ見習いだけど」

そう言うと矢口はヘヘヘと舌を出しながらニーッと笑った。

「後で、オイラが校内を色々と案内してあげるよ、なぁヤグ?」

「あ、ありがとう」

どういたしましてと、ヤグが「ミャーオ」と鳴いた。

86 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:10 ID:Cr5AFMoh

初日の学校は午前中で終わりだった。

転校生が珍しいのか、クラスメート達は安倍の周りに集まり質問攻めにした。

少し困り始めた安倍を見て、矢口が間に入った。
「あ〜!もう、オマイ等、質問しすぎ!安倍さんが困ってるじゃん!
これからオイラが校内を案内するんだから、解散、解散!」

「なによ!」
「なんで矢口が安倍さんを独占する訳?」
「矢口の癖に生意気よ!」

口々に矢口を攻めるが、矢口がロッカーから自分のホウキを取り出すと、皆 口をつぐんだ。
矢口の手に有る そのホウキは、漫画や映画で見た魔女のホウキそのものだ。

「行こう」
安倍の手を取って教室を出る矢口。

「でも…」
「いいの、いいの」
白い目で矢口を見るクラスメート達に向かって小さく手を振って、
安倍は引きずられるように教室を出た。

それでも、ゾロゾロと着いてくる同級生達に矢口はホウキを振った。
魔力なのか、ボウと突風が吹き皆のスカートが捲れる。
「きゃ!」
「矢口!こらっ!」

「キャハハ!逃げるよ!安倍さん!」
「う…うん」
高笑いしながら逃げる矢口と一緒に安倍は走った。

87 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:12 ID:Cr5AFMoh



トコトコと前を歩くヤグを道案内役にして、
矢口に校内を説明して貰いながら、安倍は気になっている事を聞いた。

「ねえ矢口さん」

「矢口でいいよ、みんなそう呼んでるから」

「…じゃあ、矢口」

「なんだい?…えっと」

「なっちでいいべさ、北海道ではそう呼ばれてたから」

ニッと笑う安倍の笑顔は天使のように見えた。
同級生達が安倍を囲んでキャーキャー騒ぐのも分かる気がする。

「なっちかぁ、…うん、可愛いな なっち…で、なんだい?」


88 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:13 ID:Cr5AFMoh

「クラスにいた、学生服着た人って…?」

「あぁ、よっすぃか…うん、あれは男だよ」

「よっすぃ‥って男の人…?…いいの?ここ女子高だよ」

「いいんじゃないの?女だし…あぁ、本名は吉沢ひとみって言うんだけどな」

「…へ?…女?」
安倍は訳が分からないというふうに目をパチパチと瞬きする。

「フフ‥まぁ、その内、分かるよ」

「…ハハ…」
矢口の意味有り気な含み笑いが怖かった。



89 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:14 ID:Cr5AFMoh

そして、もう一つ聞きたい事…

「矢口は何で自分の事を『おいら』って言うの?」

「ウッ…!」

「…?」

「小さい頃からの、口癖なんだ…直したいとは思ってるんだけど…
やっぱり おかしいかな?」
矢口は鼻の頭をポリポリ掻きながら はにかんだ。

安倍はニッコリ笑って首を振る。

「可愛いじゃん、矢口に合ってるよ」

「なっち…」

矢口の瞳が潤み始めた。



90 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:15 ID:Cr5AFMoh

「でね、でねっ…」
更に、もう一つ聞きたい事。

「なんで、そんなに優しくするの?」
転校初日だからなのか分からないが、矢口は安倍に対してとても親切だった。

そして、矢口の事が好きになりだした安倍が一番聞きたかった事だ。

「え?」

「なんで?」

少し躊躇するも矢口は嘘がつけない性格なのだろう…
「…いや、私、魔女見習いだからさ…修行してるんだ」

「……?」

「良い事すると、魔力が上がるんだよね…」
ばつが悪そうに語った。

「…ふーん、魔力とやらを上げる為に優しくするの?」

ちょっぴりガッガリそうに言う安倍に矢口は慌てる。

「…あ、いや…違うよ…それは違う」
矢口は直ぐさま 手を振って否定した。


91 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:16 ID:Cr5AFMoh

「じゃあ、何…?」

「…友達…」
ポツリと出た。

「え?」

「…いや…その、オイラ親友っていないんだよねぇ
ほら、魔女見習いだし…使い魔 持ってるし…皆、どこかで引くんだよ…」

「…そうなの?」

「心のどこかで怖いって思ってるんだよ」
矢口はポリポリと頭を掻きながら うつむいた。

「……」

「ハハハ…」
なんとなく寂しそうな笑顔。


「ね?そのホウキって飛べるの?」
安倍は業と明るく矢口のホウキを指差した。

「え?」

「魔女なんでしょ?」
矢口の顔を覗き込むようにしてニコリと笑った。


92 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:17 ID:Cr5AFMoh

「…いや、まだ全然…今は飛べるようになる為に修行してんだよ」

「…ねぇ、貸して?」

安倍は右手を差し出した。

「うん?」

「そのホウキ、貸して」

矢口は黙ってホウキを手渡した。

「こうして飛ぶんだよね…」
安倍はホウキを跨いで飛ぶ格好をする。

「ねえ、飛ぶときって気合入れるの?」

「…え?」

「どうなの?」

「う‥うん、、まぁ」

「ようし!」
安倍は腕まくりをして、気合いを入れた。

5秒…10秒…20秒…

「ハハハ、無理、無…」
言い掛けた矢口は、次の言葉を飲み込んだ。


93 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:18 ID:Cr5AFMoh

安倍の足元の空気が撓(たわ)んだ。

その撓みが渦を巻いて砂を巻き上げる…

フワフワと安倍のスカートを捲り上げた風は数秒の後にスッと消えた。

「う…うっそ〜〜!?」

疲れたのか、膝を付いてハァハァと肩で息をする安部を矢口は目を丸くして見詰めた。

「なっち!凄え!凄えよ!」

「そ、そう?…なんか知らないけど、風が出たみたいだべ…ハハ‥」

矢口は安倍の手を取ってギュッと握った。
その瞳は何かを訴えるようにウルウルと潤んでいる。

「な、何?‥矢口?」

「なっち、一緒に行こう!」

「え?…何処へ?」

「MAHO堂だよ!なっちもオイラと一緒に魔女になるんだよ!」

「え?‥え?…えぇええ!?」

安倍は又しても矢口に引きずられる様にして校門を出た…




94 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:23 ID:Cr5AFMoh
今日はここまでです。

>>81
バレましたか…
ブルース系になるのは7話からになります。

95 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/04 22:24 ID:Cr5AFMoh
あと、HN変えました。

96 :名無し募集中。。。:03/11/05 21:39 ID:IOduJU8G
更新乙。
なんか面白そうでつね。楽しみにしてまつ。

97 :名無し募集中。。。:03/11/05 22:55 ID:scCSWKTV
おじゃ魔女? ごった煮感覚で先が楽しみ。

98 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/06 15:53 ID:k7miko+O
>>96ありがとございます
>>97またもやバレた。正にソレです。
更新は明日の夜になります。


99 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:17 ID:a4rc1/Wx

――― 4話 魔女見習い ―――


「ありがとうございましたなのです」

ペコリと頭を下げる辻希美は顔を上げるとニッコリと笑って
市外からの観光と思われる家族連れの客を外まで見送る。
小さい女の子にバイバイと手を振って、振り返り見上げる看板には
ポップ調の字体で大きく「MAHO堂」と書かれていた。

魔界街に来る観光客が集まる、比較的安全なこの朝娘市商店街の
一角に陣取るこの店は願いが叶う魔法グッズを売る小物屋だ。

白とピンクを基調とした魔女服を着る辻希美と加護亜衣は
学校が終った放課後と土日を彩るMAHO堂の看板娘なのだ。

「今日はこんなもんちゃうか?」

「もう、飽きてきたのです」

時計を見ると午後3時を過ぎる頃だ。

「おやつの時間なのです」

「よっしゃ、ほな向いのケーキ屋で何か買ってくるわ」


100 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:17 ID:a4rc1/Wx

加護がレジを開けて千円札を取り出そうとすると、
後ろから樫の杖がニュッと出て悪戯な手をピシャリと叩いた。

「イタッ!何すんねん!…って…裕子ばあちゃん!」

「阿保か!お前等、店の金に手を出すとは不届きな!」
皺くちゃな顔の齢200歳を越える老婆は魔界街に舞い戻っていた。

「ちょっとくらいええやんけ、ウチ等タダ働きしてんねんから」

「ばかもん!お前等はワシの弟子じゃぞ!見習いの癖に
生意気言うんじゃないわい!」

「ののはケーキが食べたいのです!」

「うちもケーキ!」

「お、お前等…!」

手足をバタつかせてケーキケーキと叫ぶ2人は
こうなってしまったら手が着けられない。

「わ…分ったわい…ただし、一番安い…」

中沢が言う終る前に加護は万札を握って店を跳び出していた…





101 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:18 ID:a4rc1/Wx
「一番高いの買いおって…」

恨めし気に睨む中沢を無視して口いっぱいにケーキを
頬ばる2人の魔女見習いは幸せの笑みだ。

「食い終わったらまた店番じゃぞ」

「え〜っ!今日はもう休みにせえへん?」

「ののも疲れたのです」

「お…お前等…」

ワナワナと震える中沢をフンと鼻で笑う加護。

「何言うてん、この店の魔法グッズだってウチ等が半分ぐらい造ってんねんでぇ」

「あいぼん の言う通りなのです」

「ばっかもん!魔法グッズを造るのも修行の一つじゃ!
毎回毎回効き目の無い物ばかり造りおって!
生意気言うんじゃないわい!」

「それがお年を召したお婆ちゃんが孫に対して言う事ですかねぇ…呆れるわ」

「そうなのです、お婆ちゃんは孫にお小遣いを上げるものなのです」

「バ、バ、バ、バ、バッカモーン!お前達は弟子じゃ!
孫でもなんでもないんじゃ!」

ハァハァと息を切らしながら怒鳴る中沢は
何故こんな事になってしまったのかと自分を嘆いた。

102 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:20 ID:a4rc1/Wx


魔界街を創り出し、そのパワーで若さを取り戻し
復活した魔力で空を飛び、この魔界街を抜けたのはいいが
魔震で出来た地割れを飛び越えると急激に魔力が落ちた。

飛ぶ事さえままならなくなった中沢は着地して
自分の手を見ると干乾びたようになっている事に気付き愕然とした。

恐る恐る鏡を見て卒倒した。

人生の全てを賭けた魔法は約一時間の夢で終ったのだ。

魔界街に戻ればと思ったが、飛ぶ事も出来ない老魔女は
朝娘橋が出来るまで待つ事になる…

しかし、橋が出来て喜び勇んで戻った街はマジョユーコこと中沢裕子に
対して何も齎(もたら)さなかった…

若さを取り戻したい中沢は魔界街に留まる事を決意し、
新たな「MAHO堂」を開店したのだ。


103 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:20 ID:a4rc1/Wx

若い弟子をとり、魔女に仕立て上げて、その魔力によって
若さを取り戻す計画は不出来な魔女見習い達と
中沢自身が抱える「ある迷い」によって遅々として進まない。

今まで数名の弟子を取ったが皆すぐ飽きて辞めてしまい、
残ってるのが、この辻と加護…

そして…

「裕子婆ちゃ〜〜ん!新人連れて来たぞ!」

勢い良くドアを開けて入ってきた矢口真里と
何も分らずキョトンとしてる安倍なつみだった…






104 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:22 ID:a4rc1/Wx

「ちょ、ちょっと待ってよ…もう」

矢口に背中を押されて店の裏庭に連れて行かれた。

「こ、これは…」

そこは裏庭と言うには広すぎる空間が有った。

中央に魔法陣が描かれた綺麗に刈り揃えた芝生が心地良い。

「おぬし、魔女になる気が有るのかえ?」

腰の曲がった老婆に唐突に聞かれ、答えに窮する安倍に代わって
矢口が安倍を魔法陣の中央に立たせた。

すると、安倍の体がボウと僅かだが光りだした。

「ほう…オーラの量が違うな…」
目を細める中沢。

「ねっ、裕子婆ちゃん、見込み有るでしょ?」
ニッと歯を見せて笑う矢口と、目を丸くする辻と加護。


105 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:24 ID:a4rc1/Wx

「なに?なに?なんなの?この光りは!…矢口ぃ、私まだ決めてないって」
光る自分の両手を見ながらオロオロする安倍。

「いいから、いいから…さ、婆ちゃん、やってやって」
矢口は安倍の困惑を無視して中沢を促す。

「ふむ…決まりじゃな」
老婆は自分の杖を安倍に持たせると何やら呪文を唱えた。

ボウと杖が光りだす…安倍の体と同じ淡いレモン色だ。

「な、なに?なに?なんなのよ〜?」

光が一箇所に凝縮するとソレは六角形の形になる。

「わぁ!」

瞬間、その光は安倍の額に吸い込まれた。

「へ?なに?なに?何が起こったのよ〜?」

その場にペタンと座り込んだ安倍は未だに何が何だか分らないようだ。


106 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:24 ID:a4rc1/Wx

「儀式じゃよ…」

「儀式?」

「そうじゃ、ワシの弟子に…魔女になる為の『契約の儀式』をしたんじゃ」

「け、契約!?」

泣きそうな顔の安倍に向かって矢口と辻と加護が
「わぁー」と歓声を上げて、パチパチと拍手で歓迎した。

ヘナヘナと腰が抜けてる安倍に
矢口がMAHO堂のメンバーを紹介する。
「なっち、コイツ等が辻と加護で中学3年生、オイラと同じ魔女見習い、
そして、このお婆ちゃんが魔女の中沢裕子ことマジョユーコ、
みんな裕子婆ちゃんって呼んでるんだよ」

「よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる2人に安倍も半笑いのままペコリと返した。

「さてと、ワシャこれからの事を説明するのは面倒じゃ、
矢口、後は任せたわい」

そう言うと中沢は裏庭に有る変わった形のベンチに腰を下ろした。

「なんと邪推の無い顔なんじゃ…」
安倍のキョトンとした顔を見ながら自然にその言葉が出た。


107 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:25 ID:a4rc1/Wx

「…ふ」
目を白黒させる安倍を中心に、車座になって楽しそうに
これからの修行について話す魔女見習い達を見る
中沢の顔からは、自然と笑みが漏れる…

その笑みに自ら気付き、今度は苦笑だ。



この朝娘市をこんなにしたのは自分だ…

何も知らない娘達を魔女に成長させて、その魔力を全て吸収して
若さと魔力を取り戻そうと画策してるのも自分だ…

魔力を全て奪われた娘達が、どうなるのかは中沢は知らない…

知らないが…多分…普通ではいられないだろう…

中沢は溜息をついた。

辻と加護が屈託無くケラケラ笑う姿を見ながら
自分にこの娘達の未来を奪う事が出来るのかと自問した。


答えは、とっくに分かっているのに…


中沢は何時の間にか丸くなった自分に驚きながら、
自分を慕って毎日やってくるこの娘達を好きになっていたのだ。

また一つ、深い溜息をつき、中沢はそっと自分の部屋に消えた。

108 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:27 ID:a4rc1/Wx



「安倍さん、見てて下さいなのです」
辻は自分のホウキに跨り精神を統一した。

フワリと浮いた体は5メートル程進んでペタンと着地した。
「今日はこんなもんなのです」

「おお、凄い凄い!」
安倍が手を叩いて喜ぶと、エッヘンと胸を張って得意満面だ。

「ハハ、何が『今日はこんなもんなのです』だよ、
毎日そんなもんじゃねえか」

「矢口さんだって10メートルぐらいしか飛べないのです」
鼻で笑う矢口に向かって辻はプゥと口を尖らせた。

「まぁ、こん中じゃ、ウチが一番 飛ぶんやけどな」
ニカッと笑う加護と への字の辻の頭にはハムスターが乗っている。
『ボンボン』と『マロン』と言う名前の2人の使い魔だ。

「ねぇ、その使い魔って、どうやって持てるようになるの?」
安倍も欲しくなったのだ。

「まぁ、少しでも飛べるようになれば、裕子婆ちゃんから貰えるよ」

「ふうん…どうやって飛ぶの?」

聞く安倍の足元にホウキがフワリと落ちた。



109 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:28 ID:a4rc1/Wx

「それはオマエのホウキじゃ」
いつの間にか戻って来た中沢が、拾い上げるよう 安倍に促した。

「…軽い」
手に取ったソレは羽のように軽かった。

「フン、浮力が付くよう魔力を注入してあるからのぅ…乗ってみぃ」

「…うん!」
安倍はホウキに跨った。

「えっと…集中、集中」
2度3度と深呼吸をし、心を静かにホウキに集中すると無意識に飛ぶイメージが浮かんだ。

「…飛べ…」

フワリと浮いた…

そのまま、スウと滑るように前に進み壁にぶつかりそうになって、
慌ててホウキから手を離した。

「うわぁ!」

バランスを崩し、ドサリとホウキから転げ落ちて、
イタタ…と腰を擦りながら皆を見ると、全員目を丸くして口をアングリと開けていた。



110 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:30 ID:a4rc1/Wx


「こやつ…背中に翼が生えておる…」
ポツリと中沢が呟いた。

「えっ?えっ?」
安倍は慌てて背中を見たが、そんな物が生えてる訳が無く、
慌てた自分が少し恥ずかしく、ヘヘ‥っと自嘲気味に笑った。


「す、凄え!凄えよ!なっち!やっぱりオイラが見込んだだけあるぜ!」

矢口が飛び掛らんばかりの勢いで抱きついてきた…




111 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:31 ID:a4rc1/Wx

「ふむ、合格じゃ…」
中沢は、安倍の好きな動物を聞いてきた。

「パンダ」
即答した安倍にバカモンと一喝して、猫でいいかと問い直す。

「…うん」

中沢は懐から紙と筆を取り出し、中央に五芒星を描き安倍にその中に名前を書くように言った。

「名前…?」

「お前の名前ではないぞ、猫に付けたい名前を書くんじゃ」

安倍は自分の名前の一文字を取って『メロン』と書いた。

中沢はその紙を裏庭の綺麗に刈り揃えてある芝に書かれてある
魔法陣の中央にそっと置いた。

何やら呪文を唱える中沢…
すると、紙はプシューと煙を上げ、その煙が形を成し、白い猫が現れた。

「ソレがお前の使い魔じゃ…名前を呼んでみぃ」

使い魔の正体が紙だと分かって唖然としつつも、安倍は名前を呼んでみた。

「…メロン」

ミャーと鳴いた『メロン』は安倍の足に自分の体を擦り付けて甘えた。


112 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:31 ID:a4rc1/Wx

「か、可愛い…」
トントンと安倍の体を駆け上り肩に乗った使い魔は
ヨロシクと言わんばかりに頬をペロペロと舐める。


「ハハ、良かったな、なっち!」
「これで、もうお友達なのです」
「なんか、めっちゃヤル気出てきたでぇ!」

最初は訳の分からなかった安倍は、いつの間にか追い込まれて出来た
今の状況が不幸なのかどうか考える事さえも忘れる程楽しくなり、
魔女見習いとして俄然ヤル気が出てきた。

「うん!ヨロシクね!みんな!」
ニコリと笑う安倍…の目がちょっぴり固まる…


(…アレ?…どうしてこんな事になったんだ?………ま、いっかぁ!)







113 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:33 ID:a4rc1/Wx

ホウキを肩に掛けて矢口と共に帰宅した。
夕日に映る豪華なマンションは安倍の父親の勤めるハロー製薬の社宅だ。

「ウワァオ!なっち、こんな所に住んでるんだ、流石ハロー製薬部長だね」

「ハハ…まぁね」

安倍の母親はホウキを担いだ安倍と矢口に少し驚いたようだが、
もう、新しい友達が出来たと喜び、矢口を歓迎して向かい入れた。

自室でカバンに隠れていた「メロン」を解放する。

「だけど、どうしよう…」
勿論、魔女見習いとメロンの事だ。

「まぁ、隠すか、本当の事を打ち明けるか、どっちかだけど…どうする?」

「う〜ん」と考え込む安倍は母親の驚く顔が目に浮かんだ。

「やっぱり…暫く隠しておくしかないね」
そっとメロンの頭を撫でる。

「まぁ、メロンは大丈夫だと思うよ…窓を少し開けておけば勝手に
外に出て適当にやってくるから」

「本当?」

「うん、オイラもそうしてるから、呼べば戻ってくるしね…
でも、今日は抱いて寝てあげたほうがいいね、スキンシップも大事だから」

「うん、そうする」

114 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:34 ID:a4rc1/Wx

「あと、魔法グッズだけど…」
矢口はMAHO堂で売る魔法グッズの説明をした。

店で売る小物の半分以上は何処かの問屋から仕入れた物に
中沢が魔力を注入した物だが、それ以外は弟子の矢口達が
作った品を置いている。
矢口が編み物とイラスト、辻と加護は粘土細工を作って売っていた。
物を作る時は使い魔を抱いて念を込めるように集中して作るのがコツとの事だった。
店の番は学校帰りと休みの日にするのだが、
普段は中沢の使い魔の木偶人形(MAHO堂が観光客の人気を呼ぶ
一つの要因である)が店番をしているのだ。
中沢は何枚もの使い魔の式紙を持っていて、必要に応じて使い分けている。

「ふーん…何を作ってもいいんだね」
安倍は矢口の説明を聞いて、作る物を決めた。

「おっ、もう決めたの?」

「うん…この部屋を見てみて」

「…?」

矢口は安倍の部屋を見回して、ある物に目が留まった。

「おお、コレなっちが作ったの?」

「うん」

本棚に飾られているテディベアのヌイグルミを取り出す
矢口の顔は感動のソレだ。


115 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:34 ID:a4rc1/Wx

「私はテディベアを作るよ、名付けてナッチベア」

「うん、いいねソレ…あとはホウキで飛ぶ練習だね」

2人で顔を見合わせて、フフフと含み笑いだ。


魔界街に来た当初の不安は、そのまま期待に変わり
ムクムクと膨らんでいく…


空を飛ぶ夢…

叶いそう…


「よっしゃ!みんなでガンバローぜ!!」

「おお!」

安倍の激動の一日は、こうして終わっていった…








116 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 21:40 ID:a4rc1/Wx
今日はココまで。
今回は、なんか抑揚が無い文章で申し訳ない。

117 :名無し募集中。。。:03/11/07 22:38 ID:MX8DIm+j
イイヨーイイヨー。

気になってたんだけど、
中澤と吉澤の漢字が沢になってるのは何か意味でもあるの?

118 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 23:14 ID:a4rc1/Wx
>>117
し、し、しまったぁぁあああ!!
もう、14話まで書き上げてて全部、中沢と吉沢だ!!
100箇所程直すのか…しんどそうだ…でも、サンクス     _| ̄|○

119 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/07 23:58 ID:a4rc1/Wx
30分掛けて直しました(`・ω・´)

120 :名無し募集中。。。:03/11/08 00:29 ID:V0FsgKxo
更新そして沢直し乙。
さらにあいののキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
これから出てくるであろう登場人物が楽しみワクワクドキドキ

121 :名無しさん:03/11/08 01:58 ID:ruwaWFME
更新乙!
ちと疑問
>安倍は自分の名前の一文字を取って『メロン』
ってあるけど、『安倍なつみ』のどこをとったの?

122 :名無し募集中。。。:03/11/08 02:59 ID:z7gyhEXG
いいか、皆。これをよく見てくれ。
『安倍なつみ』
この『なつみ』をローマ字にすると『natsumi』、つまり『安倍natsumi』となる。
ここから『安』と『倍』の一部を消すと『メ、ロ』、
そして『natsumi』のaから後ろを削ると『n』となる。
これを繋げると『メロn』。
そう、この『安倍なつみ』とは『メロン』を表しているんだ!!

123 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/08 03:05 ID:XNAR2gtj
>>120
ありがとうございます。そう言って貰えると励みになります。

>>121
うわぁぁぁああ!またやってしまった!混乱させて申し訳ないです。
最初は『ナナ』って名前だったんだけど、
インパクトが薄いなと思って『メロン』にしたんだが… _| ̄|○



↓↓↓↓こちらに訂正します。申し訳ない…アカンな、今度からUPする前に読み直そう…↓↓↓↓

中澤は懐から紙と筆を取り出し、中央に五芒星を描き安倍にその中に名前を書くように言った。

「名前…?」

「お前の名前ではないぞ、猫に付けたい名前を書くんじゃ」

「…うっ、どうしよう どうしよう どうしよう…」

安倍が焦って、書いた名前は『メロン』…

自分の好きな果物が とっさに頭に浮かんだのだ。





まぁ、実際になっちの好きな果物がメロンなのかは分からないけど…
さて、寝ます。次の更新は月曜日の夜になる予定です。

124 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/08 03:07 ID:XNAR2gtj
>>122
m9(`Д´)ソレダ!!
ソレにしようw・・・・・・・・          _| ̄|○

125 :名無し募集中。。。:03/11/08 03:14 ID:z7gyhEXG
「な、なんだってーー!?」のAAが欲しかった… _| ̄|○

楽しく読ませてもらってます。
ハナゲさんがんがって下さい。

126 :名無し募集中。。。 :03/11/08 06:50 ID:IrA8uFmg
ハナゲさんワードとか使うと文字の置換とか一発でできますよ。

127 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:16 ID:rf7kY75v

――― 5話 キャラメル ―――



夕日の赤に溶けるように消えて行く、小鳥の群れ…

自分もあのように飛べたら、どんなに幸せなんだろう…

そうしたら、今、ここから羽ばたいて、
あの小鳥達と一緒に逃げれるのに…

逃げる…?

どこから…?

逃げられる事など出来ない事はとっくに分かっている…

でも…

飛んでみたい…

空を思いっきり飛んで、何もかも忘れたい…

そうしたら…

きっと…

きっと…




128 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:16 ID:rf7kY75v

MAHO堂の帰り道、辻は加護と別れて一人で歩いて帰路についた。

街の中心地のハロー製薬の超高層ビルを見上げるのが好きで
たまに遠回りをして、この道を歩く。

「いつか飛び越えるのです…そして展望台にいる人達をビックリさせるのです」

ホウキを握る手にも力が入る。

「うん…?」

ハロー製薬本社ビルの巨大な出入り口から続く扇状に広がる
大きな階段の中腹でチョコンと座り、夕日の空を ただ見詰める
眼鏡と掛けた一人の少女が気になった。

木陰に隠れて、その少女の様子を伺う…

2分…5分…10分…

同じ姿勢のまま身動(みじろ)ぎもせず、ボウと空を見続ける眼鏡少女…

「…う〜〜!」
辻の我慢も限界になった。

「…何をしているのです?」
トコトコと近寄り、堪らず声を掛けた。



129 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:18 ID:rf7kY75v

「…?」
夕日を遮って自分の前に立つ、ホウキを持ったセーラー服の少女に
声を掛けられて、紺野あさ美は フとその顔を見上げた。

ニコリと微笑む辻に紺野も少し はにかみながらも微笑み返す。

「小鳥…」

「…え?」

「夕日に消える小鳥を見てたの…」

「小鳥…?」

「あのように飛べたらいいなぁって…」

飛ぶと言う言葉を聞いて、辻の耳がピンと立った。

「本当に飛べたらいいのです」

辻は紺野の隣にペタンと座って一緒に空を見上げた。

「…あの?」

「うん?…ののですか?ののは辻希美っていいますです」

別に名前を聞くつもりでは無かったが、名乗られては答えない訳にはいかない。

「あ、私は紺野あさ美っていいます」


130 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:18 ID:rf7kY75v

「ふうん、じゃあ、あさ美ちゃんだね」

慣れ慣れしい人だなぁと思いつつも紺野は「うん」と頷いた。

「あさ美ちゃんは何年生なのです?」

「はい?」

「ののは中三なのです、市立朝娘中学の三年生なのです」

「あ…私、学校行ってないから…でも、行ってたら私も中三です」

「おお、同い年なのです…でも、なんで学校行かないのです?」

ズカズカと人の心に入り込んで来る
この少女の質問攻めに紺野は少し辟易してきた。

「…病気なのかなぁ」

何故か答えてしまう。

「え?」

「だから、たまにこうして空を見るの…」

半分嘘とも言えない自分の答えに窮して、
辻が早く消えてくれたらと思った。


131 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:19 ID:rf7kY75v

ふと見ると、辻はポケットに手を突っ込んでゴソゴソと何かを探している。

「…あ、有ったのです」

「…?」

「はい」

差し出されたのは銀紙に包まれたキャラメルだった。

「ののは、このヨーグルト味のキャラメルが大好きなのです」

頬に手を当ててモグモグする、辻は満面の笑みだ。

「甘酸っぱいのが広がると幸せな気持ちになるのです」

辻に促されるように、紺野もそのキャラメルを頬張る。

「ね?美味しいでしょう?」

「…うん」

不思議な味だった…

普通のキャラメルなのに、何故かちょっぴり切なくなった…


132 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:20 ID:rf7kY75v

「のの の、魔法が掛かっているのです」

「…魔法?」

「そうなのです、ののは魔女なのです」

「…ハハ」

何を言い出すのかと、今度は少し可笑しくなった。

「可笑しいですか?」

「…だって、魔女なんて」

「魔女は居るのです」

ニーッとする辻の手にはホウキが握られている。

「…ハハ、それで飛ぶの?」

「う…まだ…飛べないのです」

「…」


133 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:21 ID:rf7kY75v

今度は紺野が やっぱりね とニーッと笑った。

「でもでもでもでも、絶対飛べる…」

ソコまで言って辻は気付いた。

「あさ美ちゃん、笑顔は可愛いのです」

「…?」

「ののはあさ美ちゃんが寂しそうに見えたのです」

「……」

ああ、それで声を掛けてきたのか と、紺野は思った。

「…変わってるね、辻さんって」

「え〜?ののは変わり者じゃないのです」

不満そうな辻に、紺野の溜息が一つ…

「じゃあ、不思議少女」

「うん、ののは不思議少女なのです」

こっちの表現は気に入ったらしい。



134 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:22 ID:rf7kY75v


それから、暫く取り留めの無い話しをした…
話すのは辻だけで、紺野はもっぱら聞き役だったが
辻の話す非日常とも思えるエピソードは とても面白く、
物語のような…おとぎ話のようにも聞こえた。

「ですから、その続きが……」
ケラケラと笑いながら話しをする辻の目が、手持ちぶたさからなのか、
紺野のクルクルと指に丸める銀色のキャラメルの包み紙に気付いた。

「その、銀紙を貸して下さいなのです」

「…あ、ごめんなさい」

紺野はキャラメルの包み紙の小さな銀紙を申し訳なさそうに手渡した。
辻の長話しに紺野が飽きてきたと思われた と、思ったのだ。
だが、違うようだ…

「ヘヘヘ、こうして…こうして…」

辻が一生懸命に何かを折り始めたからだ。

「…うん?」

辻の胸ポケットから小さなハムスターが顔だけ出して覗いていた。

「つ、辻さん…それ?」

眼鏡を外して凝視する紺野の視線に気付いた辻は、可愛いでしょと微笑む。


135 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:26 ID:rf7kY75v

「この子は、のの の使い魔の『マロン』なのです」

「マロン…?」

「だから、ののは魔女だって、さっきから言ってるのです」

そう言いながら出来上がった小さな折り紙を紺野に手渡す。

「…紙飛行機?」

「一緒に飛ばすのです」

辻の手にも同じ物が有った。

「…飛ぶんですか?コレ?」

「へへへ〜」

辻は立ち上がり、笑いながら「行くよ」と紙飛行機を飛ばす。

紺野も吊られて一緒に飛ばした。

「あ…」

キラキラと光りながらフワフワと飛ぶ小さな紙飛行機は
落ちそうになりながらも、自分の意思が有るように持ち直す。


136 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:29 ID:rf7kY75v
「頑張るのです!」

「…飛んでる」

「へへへ」

「…本当に飛んでる…」

縺(もつ)れる様に飛ぶ2つの紙飛行機…

「もっと飛ぶのです!」

辻が手を広げてピョンピョンと跳ねながら紙飛行機を応援する。

座っていた紺野も立ち上がり、こぶしを握って見守る。

「…頑張れ」

思わず声が出た…

「あぁぁ」

風に煽られて落ちそうになる…

「頑張れぇ!」

「飛べ…飛べ…」

紺野は祈るような気持ちで紙飛行機を応援した。

フラフラと頼り無さ気に飛ぶ
紙飛行機が、自分の分身のように思えたのだ…

137 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:30 ID:rf7kY75v



飛んで…

小鳥に成れない私の変わりに…

飛んで…

飛んで…

お願い…




「飛べー!」

「飛んでぇ!」

紺野の声が聞こえたかのように持ち直し上昇する…

「わぁぁあ!飛んだー!」

「やった…やったー!」

「……」

「…」




138 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:32 ID:rf7kY75v

夕日に消える…キラキラと光る銀紙の紙飛行機を見送る紺野はハタと辻を見た。

「あの包み紙には、のの の想いを込めたのです」

微笑む辻の顔は何かを見透かしているように見える。

「想い…?」

「そうなのです」

「なに…?」


「紺野さぁん!時間ですよ〜!」
辻が答えようと唇を動かすと、背後から紺野を呼ぶ声が聞こえた。

ハロー製薬の社員証を胸に付けた、
20代半ばの眼鏡を掛けた綺麗な女性は腕時計に目をやりながら
休憩時間は終わりましたと紺野に告げた。

「あ…うん、今行きます…」
答える紺野は寂しそうだった。



139 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:34 ID:rf7kY75v

「じゃあ、辻さん…」

肩を抱かれてハロー製薬ビルに消えようとする紺野の背中に
辻の声が届いた。

「あの銀紙は色々な想いを包み込めるのです!」

「…!」

「ののはあさ美ちゃんとお友達になりたいと思ったのです!」

「…!!」

「そう想いながら紙飛行機を折ったのです!」


「どうして…?」
そっと振り向いた紺野は、そう言うのが精一杯だった…



…さっき出会ったばかりなのに…

…どうして、そんな事言えるの?

…私が寂しそうに見えたから?

…私が病気だと言ったから?

…それで、同情したの?


140 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:35 ID:rf7kY75v

そう聞きたかったが、言える筈が無かった…

言葉に出してソレを言ったら、本当に嫌われると思ったからだ。

辻に嫌われるのが怖かった…

紺野も、さっき出会ったばかりの辻希美という名の少女と友達になりたかったのだ。


「お友達になるのに理由なんか無いのです!」

「…!…」

ギュッと瞑(つぶ)る、紺野の瞳からポロポロと大粒の涙が零れた…

「…うん」
紺野は項垂れながらも静かに頷いた。

「約束なのです」
辻は右手を伸ばして小指を立てた。

ハッとする紺野のハートに結ばれる、指切りの約束…


「明日もキャラメル持って来るのです!そして、また遊ぶのです!」


女性に連れられハロー製薬ビルに消えていく紺野に、辻の声が届いたのか、
紺野はもう一度振り返り、微かに微笑んだ…ように見えた…



141 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/10 20:37 ID:rf7kY75v
今日はココまでです。続きは明日になります。

>>125
>>126
ありがとうです。頑張りますです。

142 :名無し募集中。。。:03/11/11 00:25 ID:VXHPajAp
更新乙。
こんこん……
っていうか、なんかいいぞいいぞ。雰囲気が好きだな。

143 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:34 ID:BCa/9SCM

――― 6話 救出 ―――



翌日、辻はMAHO堂に寄らずに、そのままハロー製薬ビルに入った。
一般人にも解放しているこのビルは朝娘市の観光拠点にもなっているのだ。
ただし、入り口で一般用と社員専用とに分かれていて
社員用の入り口には武装した警備員が立ちはだかっている。

辻は迷いもせずに社員専用ドアをくぐり抜けた。

「待ちなさい、ここは一般人は入れないんだよ」
社員証の無い辻は案の定、警備員に呼び止められた。

「のの の、お友達がここに居るから、会いに来たのです」
胸を張って答える辻に警備員達は、しょうがない子供だなぁと顔を見合わせ、
じゃあ着いて来なさい、と 受付に案内した。
社員の子供が親に会いに来たと思ったのだ。


受付の女性はニッコリと微笑んで辻に用件を聞いた。

「お友達の紺野あさ美ちゃんに会いに来たのです」
辻も負けずにニッコリと微笑んだ。

「フフ、可愛いお嬢さんね、ちょっと待ってて、紺野あさ美さんね…」

パソコンで名簿を操作する受付嬢は、少し溜息を付いて答えた。
「う〜ん、紺野あさ美という者は、ここには居ませんね…
何かの間違いじゃないの?」


144 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:35 ID:BCa/9SCM

「そんな事は絶対ないのです!ののと同じ15歳なのです!
メガネを掛けた女の子なのです!」

「…15歳って、そんな年齢の社員…」
そこまで言って受付嬢はハッと何かに気付いたように言葉を飲んだ。

「…知り合いなの?」

ウンと頷いて辻はドカリと座った。
「呼ぶまで ののはココを動かないのです」

「……そう…」
受付の微笑みは消えていた…

だが、何を思ったのか、その辻の様子を見ながら
受付嬢は無言で何処かに電話を掛けた。
「…はい…ええ、そうです…お知り合いだそうです…はい…でも…」

辻に絆(ほだ)されたのか受付嬢は粘ったが…

「…あら?切れた」
切れた受話器を辻に見せて、諦めなさいと首を竦める。

「あさ美ちゃんが来るまで、ののは待つのです」
居なかったら諦めて帰るつもりだった辻も、何故か必死になっていた。

「もう…」
ため息を付いて、警備員に連れ出すように目配せをした受付嬢は、
エレベーターが開いたのを見て、近寄る警備員を今度は止めた。



145 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:36 ID:BCa/9SCM
「…あっ」

コツコツとヒールの音を響かせて辻に近付くのは
昨日 紺野を連れて行ったメガネの女性だった。

「あら?貴女は昨日の…」
辻を見た女性は、腕を組んで辻を見下ろす。

立ち上がり、辻はペコリと頭を下げた。
「ののは辻希美と言いますです、あさ美ちゃんに会いに来たのです」

「そう…でも残念ね」
そう言う女性は冷ややかだ。
「紺野さんは貴女とは会いたくないそうよ」

「え?」

「紺野さんは貴女と会いたくないと言ったの…
私はそれを伝えに来ただけ…帰りなさい」

改めて警備員に連れ出すように命じた女性は
腕を取られて引きずり出される辻を見届けて踵(きびす)を返した。

「嘘なのです!あさ美ちゃんが そんな事言う筈無いのです!
あさ美ちゃんは ののと お友達になったのです!」

「…嘘じゃなくてよ」
エレベーターに消える女性の口元が微かに歪む。

「嘘なのです!絶対嘘なのです!!」

足をバタつかせて叫ぶ辻の声がホールに空しく響いた…

146 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:36 ID:BCa/9SCM









MAHO堂に来た辻は見るからに落ち込んでいた。

「どないしたん?」
心配した加護が顔を覗き込んで聞く。

「あのね…あのね…ヒック‥ヒック…」

言葉にならない辻を皆で宥(なだ)める。

ミルクを温めて辻に「飲んで、楽になるから」
と与える安倍と矢口は辻が落ち着くまで待つ事にした。

「どうせ、詰らん事じゃろ、ほっとけ」
言い捨てる中澤に、ギロリと睨み付ける3人の目…
「…うっ!…わ、分ったわい」

ブツブツ言いながら中澤は2階の自室に消えた。


少し落ち着いた辻の途切れがちで言葉足らずな説明に
聞き耳を立てながら、大体の事が分った。



147 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:39 ID:BCa/9SCM


「許せへんな、その女」
「みんなで乗り込もうぜ!」
加護と矢口は、もうその気になっている。

「でも…」
渋る安倍は浮かない表情だ。

「あっ…そうか」
安倍の父親がハロー製薬の部長だと気付いた矢口は、
そっと安倍の肩に手を置いた。

「なっちはいいよ…」

「…うん…ごめんね……あっ!」
俯(うつむ)く安倍は何かを思い出したように、顔を上げた。

「そう言えば、私のお父さんが変な事言ってた」

「変な事…?」

「うん!」





148 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:40 ID:BCa/9SCM



安倍は以前父親が会社から帰って来た時に語った事を聞かせた。

父親自身も まだハッキリと確かめてはいないが、ハロー製薬では公然の秘密らしい。

すこし興奮しながら話す父親は話していく内に落ち込んだ…

落ち込む理由は、自分達の娘と照らし合わせたのかもしれない…


それは、会社で囲う少女の話だった。

どんな病気が感染しても、死なない体質の少女…

症状は出るが、ある程度まで進行すると それ以上の悪化は無い…

父親が言う噂話しでは、少女も別に嫌がる素振りも無いらしい。

だから…

その娘は…

新薬の試薬実験に適したモルモット…

次々とウィルスに感染させて、治験する生態実験…

魔界街が生んだ異生体の少女はハロー製薬の急成長を影で支えたのだ。




149 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:41 ID:BCa/9SCM

「……」

言葉の無い魔女見習い達は、辻の言う少女と
安倍が語る少女の姿が重なった。

「行くのです!ののは我慢出来ないのです!」
立ち上がる辻達を安倍は止めた。

「待って…今日、お父さんが帰ってきたら、私話してみる…
お父さんじゃ、その子を助けられないかも知れないけど、
せめて、会ってお話しを出来るようにはさせてみせる…
だから、助けるのは その後にしましょ」

辻、加護、矢口は顔を見合わせる。
確かに、今行っても どうする事も出来ないだろう。
追い返されるのは目に見えていた。

「うん、分った…そうしよう」

「安倍さん、お願いしますです」

辻も今日行くのを諦めたのか、ペコリと安倍に頭を下げた。

「うん、まかせて!」

そうは言ったものの、安倍にも自信は無かった…

中間管理職の父親の立場を理解している親思いの娘は
そんな重大な事を父親に言えるのかさえ自信が無かったのだ。



150 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:42 ID:BCa/9SCM





「ふん、魔女見習いの分際では、どうする事も出来んじゃろ」
自室で見習い達の映る水晶球を見る中澤は
気だるそうにフカしていたタバコを揉み消した。

「やれやれ…やっかい事ばかり運んで来る連中じゃわい」

水晶に映る見習い達は言葉も無く店を勝手に閉めて
其々帰路についた…
「挨拶もせんと帰るしのぅ…」

水晶に布を掛けた中澤の耳に2階に駆け上がってくる足音が聞こえた。

「裕子婆ちゃん、今日はヤル気が無くなったから帰るね」
ドアをカチャリと開けた見習い達が顔をチョコンと出して
バイバイと手を小さく振って、また階段を下りていく…

無言の中澤は、今日何度か目の溜め息をついた。

「…全く持って…やれやれ…じゃわい」

アーチィングチェアーに座る中澤の年老いた瞳には
窓から遠くに見える、ハロー製薬ビルの塔影が揺らいで写った…






151 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:43 ID:BCa/9SCM




夜9時を回ったた頃、ハロー製薬本社ビルの社員用出入り口に
一人の黒尽くめ老婆が立っていた。

警備員を無視して入ろうとする老婆に突き付けられる自動小銃。
「止まりなさい」

怪しすぎる その成りに不審を持つのも道理。

---カツン---

老婆の握る樫の杖が地面に響く…

入り口ドアを何事も無く入る老婆は棒立ちになっている警備員の
横を無言で通り抜けた。

---カツン---

もう一度響くのは広いロビーだ。

呆けた顔の受付に、つんくは御滞在かね と聞く老婆は中澤裕子だった。




152 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:45 ID:BCa/9SCM

つんく専用のエレベーターで会長室に直行した中澤は
約10年ぶりの対面を果たした。

重厚な椅子にドカリと座る つんくは最初目を見張って驚いたが、
数秒後にはゲラゲラと笑い出した。

「ハハハ!なんだ?元の婆に戻ったのか!」

「ふん、お陰様でのぅ」

「で?何の用だ…お前が俺に会いに来るという事は、
よっぽどの理由が有るんだろう?」

「大した事では無いわい」

「いくら俺でも、若返らせる事は出来んぞ」
嫌味な笑いを投げるつんく。

「娘っ子を一人、解放して貰いたい」
その笑いを無視して用件を告げる。

「…娘?」

「紺野あさ美と言う名前の子供じゃ」

「…ほう」
急に つんくの目が据わる。


153 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:46 ID:BCa/9SCM

「用は、それだけじゃ…」

「理由は?」

「教えん」

「…あの娘の親には相当な金額を支払っている、見返りは有るんだろうな」
組んでいた腕を解いて葉巻ケースから葉巻を取り出し咥えた。

「ふん、有る訳ないじゃろ…」

「……嫌だと言ったら?」
ピッと高級ライターで火を点ける つんく…
だが、紫煙を吐き出す事は出来なかった。

懐から五芒星の書かれた紙の束を取り出す中澤が
ソレを放ると、紙は妖物達に変化したのだ。

---カツン---

蠢きだそうする妖物達は中澤の杖の音で、その動きを止めた。

「…解かっとらんのぉ、おぬしに選択の自由は無い、
それに、もう解放してもいいぐらいは儲けておるじゃろう?」
齢200歳を超える魔女は つんくに新たな恐怖を植えつける。

「……分かった」
葉巻を吸わずに揉み消した つんくは従うしかなかった。


154 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:48 ID:BCa/9SCM

「明日、ワシの子供達が迎えに来る、黙って渡してやってくれ」

「…子供?ハハ‥孫の間違いじゃないのか?」

「ふん、どうとでも言え」

「……」

「頼んだぞい」

つんくは黙って頷いた。

踵を返して部屋を出ようとする中澤は立ち止まり、そっと振り返った。

「のぅ?未だにワシの事を恨んでおるのか?」
ふと聞いてみたくなった。

「…いいや」
ゆっくりと首を振る つんく。

「…」

「…まぁ、最初は恨んだがな…だが、今となっては感謝さえしてるよ、
お前の言う通り、俺は絶対的な権力を手に入れたからな…
フッ‥それに、今のお前の姿を見たら同情さえするぜ…
辛かったんじゃないのか?その姿で俺の前に現れるのは?」

溜め息混じりに語る つんくは、今の成功は自分の努力も然る事ながら、
魔界街を創り出した中澤の魔術による所が大きい事を充分に理解していた。

恨んでいない との言葉は つんくの本心だった。

155 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:51 ID:BCa/9SCM

「…ぬかせ」
フンと鼻で笑う中澤は再び踵を返してエレベーターに乗り込む。

その中澤に つんくの御世辞…
「若返った時のお前は最高に綺麗だったぜ!」

「……」

胡麻を擦るのには理由があった。
「この化け物達をどうにかして行ってくれ」

大仰に腕を広げて見せる つんくは部屋に残った妖物達が
どうなるのか、少し不安だったのだ。

「…只の紙じゃ、燃やすなり なんなり好きにせい」

エレベーターが閉まると同時に蠢く妖物達は元の紙切れに戻った…










156 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:54 ID:BCa/9SCM


やけに明るい部屋だ…
壁一面が白く染まり、天井には何年か前にリクエストした空と雲が描かれている。




窓も無い、この部屋のベッドの上で蹲(うずくま)り、
時計を眺めて時間を数えるのは何の為…?

注射の時間が近付くのを数える為…?

それとも、週一回の散歩の時間を早める為…?

ハハ…散歩は一昨日終ったばかりだよ…




白い患者服を着た紺野あさ美は
膝に顔を埋めて震えた。



…たすけて…辻さん…


…飛べないけど、貴女…魔女なんでしょ…?




157 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:56 ID:BCa/9SCM


紺野がこの施設に来たのは物心が付く前だ。
両親の顔さえ知らないこの少女は
病気治療の為だと何年も何年も頑張った。
自分の特異体質に気付いたのは、学年にして小6当たりか…
それからは、時計の時間を数えるのと
週一回の散歩の時間に見る空が人生の全てになった。

それでも、精神が崩壊しなかったのは、散歩の時間に見る空を飛ぶ鳥達と…
街を楽しそうに歩く同年代の子供達を眺めていたからだ。

自分も何時かは、あの中に入って街を歩きたい…
友達と一緒にオシャレをしたい…
出来れば恋愛話しもしてみたい…

それも、半分以上 諦めかけていた…


出会うまでは…



158 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 20:58 ID:BCa/9SCM


…辻さん…


一昨日、約束したよね…


お友達になるって…


私、待ってるから…


何時までも待ってるから…



来週も、あの場所で会いましょう…






159 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 21:00 ID:BCa/9SCM



ベッドの上で蹲(うずくま)る紺野が顔を上げた…
何時もの様にギィと音を立てて、重いドアが開いたからだ。

「紺野さん、お友達が迎えに来てますよ」

「…え?」

ドアを開けた女性の笑顔は、何処と無く ぎこちなかった…



ハロー製薬本社ビルを出た紺野は眩しい太陽と
ソレと同じ位輝く笑顔に出迎えられた…

「あさ美ちゃん!キャラメル食べますか?…………‥‥-








160 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 21:01 ID:BCa/9SCM
「裕子婆ちゃ〜〜ん!来たよ〜〜!」

何時ものように魔女見習い達がMAHO堂にバタバタと出勤してきた。

「いいから、いいから」
そう言われながら、辻に背中を押されてオズオズと
入って来たのは見た事もない少女だった。

「へへへ〜、新しいお友達なのです」

「あ、あの紺野あさ美といいます」

「ふん…」
深々と頭を下げる紺野を一瞥すると、中澤は自分の部屋に引っ込んだ。

二階へ上る階段の手摺りに手を掛けながら
「ちゃんと、仕事は出来るんじゃろうな?」
紺野の顔も見ずに聞く。

「は、はい!よろしくお願いします!」

「ふん、それと、2階に空いてる部屋が有るから、勝手に使って良いぞ」
そう言いながら中澤は自分の部屋に消えた。

「いやったー!あさ美ちゃん、ココに住んでいいって!」
手を取り喜ぶ辻と、不思議そうな顔の紺野。

「どうして、私の事を分かったんでしょう?」

MAHO堂で住み込みで働きながら学校に行くと言うのが
この店に来るまでの道中で、皆で考えた答えだ。
それを、何故か中澤は知っていた。

161 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 21:03 ID:BCa/9SCM

「裕子婆ちゃんは大魔女やからなぁ」
関心する加護と
「やっぱり裕子婆ちゃんは何でもお見通しだな」
腕を組んで頷く矢口。

「魔女って…本当なの?」

「あー?疑っているのです!」

証拠を見せる と言って紺野の手を取って裏庭に連れ出す
辻と加護を「やれやれ‥またか?」と追い掛ける矢口。

「どうした?なっち?」
矢口はさっきから微笑むだけで喋らない安倍が気になった。

「う、ううん、何でもない…矢口、私ちょっと裕子婆ちゃんに話しがあるから」
安倍はそう言って、二階へ続く階段を上って行った。

「お、おう…じゃあ、裏庭で待ってるよ」
何か有るとは思ったが、矢口はソレ以上突っ込むのは止めた…
大事な話しが有るのならば、安倍の方から話してくれると思ったからだ。







162 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 21:04 ID:BCa/9SCM
昨日、安倍は父親に紺野あさ美の事を 聞く事は出来なかった。
父親の会社での立場…
自分が今住んでる、この社宅…
新しく出来た親友達…
父親に話したら、全て失ってしまうような気がして、
悩み、色々と考えていたら話す事が出来なくなったのだ。


そして今日…

「安倍さん、言ってくれましたか?」
辻に聞かれ「う、うん」と曖昧に答えた。

「よっしゃー!救出に行くでぇ!」
加護の気合いに辻と矢口は「おお!」と答える。

安倍は不安で胸を押し潰されそうに成るのを押さえて、
皆でハロー製薬に出向いた。

ドキドキと心臓が鳴るのが分かった…

言ってない事がバレたらどうしよう…

胸が張り裂けそうになった…

しかし…

結果は呆気ない物だった…

ハロー製薬で追い返されそうになったら、
絶対父親を呼んでもらおう と、腹を決めて臨んだが、
あっさりと紺野は解放されて、自由の身になったのだ。

163 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 21:06 ID:BCa/9SCM

「安倍さん、ありがとうなのです」
「流石、安倍さんやな」
「なっち、偉い!」
皆は安倍が父親に言ってくれた お陰で、
紺野が解放されたと思ったらしく、手放しで喜んだ。

「ハハ…良かったね」
安倍は、そう言うのが やっとだった。





謎が解けたのはMAHO堂で中澤を見た時だった。

全てを知っているかのような中澤の態度で気付いた。

どうやったのかは判らないが、中澤は紺野を解放するように
ハロー製薬に掛け合って、そして巨大企業が折れた…

安倍には そうとしか思えなかった。



164 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 21:08 ID:BCa/9SCM

ノックをして中澤の部屋に入ると
中澤は椅子に座り、転寝(うたたね)をしていた。

「あの…」

「何も言うでない」
中澤は その姿勢のままで静かに呟くように言った。

「お前が どうにか出来る事態じゃないのは分かっておったからのぅ…」

「……」
やっぱり、この人が手を打ってくれたんだ と、泣きそうになった…

「この事は お前の心の中に そっと仕舞っておくんじゃ」

「…でも」

「アホ…言い触らされると、ワシが恥ずかしいんじゃよ」

「……うん…ありがと」
この人は私の立場とかを想いやって 言ってくれてる…
安倍はそう思い、中澤に感謝した。

「それと、学校云々は面倒じゃから、ワシは何もせぬぞぃ」
もう部屋を出ろ と言わんばかりに、手でシッシッと犬を追い払うような仕草。


165 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 21:09 ID:BCa/9SCM

「うん!うん!それは、まかせて!」
安倍はトンと胸を叩いて、ドアを開けて部屋を出た。

「…裕子婆ちゃんって本当は優しいんだね」
ヒョコリと顔を出してニコリと笑う安倍はパタンとドアを閉めた。



「…ふん」

トントンと安倍が階段を下りる足音を聞きながら
手元に水晶球を引き寄せて裏庭の様子を見る。

辻がホウキに跨り、フワフワと浮いてるのを 紺野が目を見開いて驚いていた。

だが、その顔はキラキラと輝き、新しい生活への希望に溢れている様に見えた。

「…また、厄介者を背負い込んでしまったかのぅ…やれやれ じゃわい…」

そう言う中澤の口元は、微笑んでいるように見えた…








166 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/11 21:32 ID:BCa/9SCM
今日の更新はここまでです。
次回は金曜の予定です。


…やっと書き込めた

167 :名無し募集中。。。:03/11/11 23:12 ID:h+eDe2qw
大量更新乙です。
うん。面白い面白い。いい感じですよ。
次の更新楽しみに待ってます。

168 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/12 02:11 ID:t1OrMYSp
>>167
そう言って貰えると励みになります。ありがとう。
じゃあ寝ます。

169 :名無し募集中。。。:03/11/13 10:27 ID:t1ltQIUQ
おもろい
配役にセンスを感じる

170 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/14 22:18 ID:CUpup7pV
今日UPするつもりだったんですけど時間が無いので明後日になります。スマソ
>>169ありがとうございます。

171 :名無し募集中。。。:03/11/15 22:45 ID:sWO7uX8T
( ^▽^)<マターリでいいですよ

172 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 21:58 ID:efxLVsrM

――― 7話 石川と藤本 ―――


ホウキを担いだ2人の女子高生、安倍と矢口は
紺野の学校の問題もなんとか片付いて
爽やかな笑顔で学校の門をくぐった。
(紺野は辻と加護が通う同じ中学に転校生という形で入る事が決まったのだ)

それは、何時もの何気ない登校風景だった。

「…うん?」

その生徒が現れるまでは…

校門の辺りがザワつくので振り返って見ると、
黒塗りの大型リムジンが横付けになり、中から一人の生徒が優雅に現れた。

「何?あの人!」
驚く安倍に
「帰って来やがった…」
呆然とする矢口。

「ホ〜〜〜ホッホッホッホ!」
高らかに笑う生徒のセーラー服は安倍達のソレとは何処か違う…
素材と仕立てが違うのも然る事ながら、金の刺繍が施されている。

「アイツは生徒会長の藤本美貴だよ、しかも、ウチのクラスだ」

「げっ、あの人が?」

などと話していると、藤本が矢口を目敏く見つけ、近寄ってきた。

173 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:00 ID:efxLVsrM

「たった今、極上ヨーロッパ旅行から帰って来ましたわ!
でも、矢口さん、貴女に お土産は無くてよ」

「いらんわ!」
嫌味な藤本に即答する矢口。

「ホ〜〜〜ホッホッホッホ、本当は欲しかったくせに…
うん?貴女は誰ですの?」
矢口の隣で縮こまっている安倍に気付いた藤本が見下ろす。

「あ、あの…転校してきた安倍なつみ です、よろしく」
ペコリと頭を下げた。

「ホ〜〜ホッホッホッホ、私(わたくし)は生徒会長の藤本美貴ですわ、
何か困った事がありましたら、何でも相談にのってよ」

「は、はぁ‥どうも」

「でも、小汚いホウキを持ってる所を見ると、貴女も魔女ゴッコをやってるの?
余り感心しませんわね、そろそろ、そんな お子チャマの遊びは
卒業した方がよろしくてよ」

「は、はぁ‥」

「矢口さん、私は校長先生に帰国の挨拶をしなくてはいけませんので
これにて失礼致しますわ、ホ〜〜〜ホッホッホッホ」

声も無く呆然とする2人を尻目に、藤本は高笑いを上げて、
優雅に職員玄関に消えていった。


174 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:03 ID:efxLVsrM


「な、なんなの?」
余りの高飛車ぶりに目を丸くする安倍。

「アイツはハロー製薬の専務の一人娘だ…
この学校じゃ誰も逆らえないよ、特に教師達はね」

矢口は呆れた様に吐き捨てた。








175 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:04 ID:efxLVsrM

昼休みなって藤本は ようやく教室にやって来た。

「ホ〜〜〜ホッホッホッホ、皆さんお久しぶりですわ」
その藤本を囲む、ハロー製薬おべんちゃら社員の子供達…

「ウザいのが来ちゃったよ…」

ウンザリしたように石川は藤本を一瞥して
吉澤に自分の弁当のオカズのタコウィンナーを
食べさせようと箸を持っていく。

「ハイ、あ〜〜ん」
「いや、俺は お前の方がウザ…モグモグ」

「どう?」
「ウィンナーに感想なんかあるかよ」

そう言う吉澤は満更でもなさそうだ。

「もう、愛情が込もってるんだから!」

「…ハハ」

何時もの昼休みの2人の光景が気に入らない人間が一人…

「そこっ!ここは神聖なる女子高なんですのよ!
特に石川さん!貴女 露骨すぎますわ!」

指を差しながらカツカツと歩み寄るのは藤本だ。


176 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:08 ID:efxLVsrM

「私の目の前で ふしだらな関係は許しませんわ!」

腰に手を当てて見下す藤本の瞳は、ある感情に染まっている。

「ふしだらって何よ!私と よっすぃ は清い関係なのよ!」

「まぁ!貴女のお父様も私の所の社員なんですのよ!」

「…何よ!親は関係無いでしょ!」

目の前で いがみ合う2人にウンザリの吉澤は席を立った。
黙って廊下に出る吉澤を石川と藤本が追い掛ける。

「ちょっと、吉澤さん!何処に行くつもりですの!」

「…俺が居ない方がいいかと思ってね」

「貴方が出て行く必要は有りませんわ!」

「そうよ!よっすぃは悪くないもん!」
そう言いながら石川が吉澤の腕に自分の腕を回してしがみ付く。

「まぁ!」
それを見る藤本の顔は、明らかに嫉妬によって真っ赤になっていた。

「お前、離せよ」
石川を引き剥がした吉澤は、どうした物かと天を仰いだ。


177 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:10 ID:efxLVsrM

「取り合えず一つ」
吉澤は指を一本立てた。

「藤本、親は関係無いだろ?自分の親を使って脅すのは止めろ」

「…わ、私はそんなつもりで…」

「じゃあ、どんなつもりだ?」

「…分かりましたわ」
吉澤に言われ、少しシュンとなる藤本。

「それと、もう一つ」
二本目の指を立てる。

「俺の前で言い争いは止めてくれ」
ペコリと頭を下げる吉澤は、コレは言っても無駄だろうな と思った。

それを聞いた石川と藤本は、顔を見合わせるとフンとソッポを向く。

案の定、予想通りの反応に吉澤は、やっぱりな と肩を落とした…



178 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:12 ID:efxLVsrM

肩を落としながら三本目の指。

「まだ、何か有りますの?」

「よっすぃ、注文多過ぎ!」

その指は2人の下半身を指差した。

「まぁ!」

「きゃっ!」

どうやったのかは解らない…
解らないが、吉澤が犯人なのは確かだ。

2人のスカートはホックとジッパーが外され、足元に落ちていたのだ。

しゃがみ込む2人に向かって白い歯を見せて、
脱兎のごとく逃げる吉澤は廊下の角を曲がるとき
アッカンベーと舌を出してゲラゲラ笑って消えた。


「たまに少年のように無邪気になるよのねぇ」

「そこがまた、堪りませんわ」

スカートを穿き直しながら、2人はソコまで言ってハッとなり、
また顔を見合わせて フン とソッポを向いた…




179 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:15 ID:efxLVsrM



学校の屋上の給水塔の上からプカプカ浮かぶ煙が見えた。

「見つけた…」
カンカンカンと音を立てて鉄梯子を上ってきた石川がヒョコッと顔を出して
ペタペタと這って、頭の後ろで手を組んで寝転びながら
咥えタバコでボウと青空を眺めている吉澤の隣に座る。

吉澤の吸っていたタバコを取り上げてフカした石川は
「うげ〜、よくこんな不味いの吸えるわね」
と、放り捨てた。

「あれ?」
吉澤を見ると、何時の間にか タバコを咥えて紫煙を吐き出している。

「ねぇ、どうやったの?」
吉澤が咥えてるのは、今 石川が捨てた
(石川が口紅代わりに使っているピンクのリップクリームが
フィルター部分に付いている)
吉澤から奪った吸いかけのタバコだった。

こういう不可思議な事は今回だけではない…
しかし、吉澤はニヤリと笑うだけで、何時も答えない。

「…まぁ、いいわ、それより気を付けてね」

「…なにを?」

「藤本よ、アイツ よっすぃを狙ってるわよ」


180 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:16 ID:efxLVsrM

前から、何となく気付いていたが、今日の態度でハッキリした。
新たな恋敵の出現に、拳をパンパンと鳴らして「どうしてくれようか」
とブツブツ呟く石川を見て、「狙ってるのは、お前もだろ」と吉澤。

「もぅ、私のは純愛よ」
そう言いながら吉澤の胸に、身を委(ゆだ)ねる様に寝そべる。

「……?」
何時もなら嫌がる吉澤が黙って胸を貸している。

吉澤の瞳は紫煙が揺れて溶ける、遠い空を見ていた…


こんなに好きになってしまった…


石川は吉澤の瞳に吸い込まれそうになりながら
あの日の出来事を想い出した…











181 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/16 22:20 ID:efxLVsrM
今日はここまでです。続きは明日か明後日になります。
>>171では、お言葉に甘えてマタ〜リと行きます。それでは。


182 :名無し募集中。。。:03/11/17 01:50 ID:H6jaCtOL
オモロイ!
イッキニヨンダヨー!
ツヅキキタイ!

183 :名無し募集中。。。:03/11/17 22:19 ID:HrjsoG/8
( ^▽^)<ドキドキ

184 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:27 ID:1/b+0dRg

----2年前----



---朝靄のテニスコートで、ラケットを胸に抱いた少女がポツンと佇んでいた---


---夕焼けのテニスコートで、ベンチに座り 折れたラケットを
                        寂しそうに見詰めていた少女を見た---


---夜更けのテニスコートで、その少女は うつむきながら涙を零していた---



風が鳴くテニスコートで 項垂れる少女を見詰め、
サラサラとした髪を掻き上げる Tシャツとジーンズの美少年の足元に
ひっそりと咲き乱れる白い薔薇の花弁が震えて舞った…


その少年はそっとラケットを取り上げて少女に渡す。


そのラケットにはR・Iのイニシャル…



185 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:27 ID:1/b+0dRg

「お前、朝から居ただろ…」

黙ってラケットを受け取った石川はハッと少年の顔を見た。

薄く微笑む少年は中学からのクラスメート…吉澤だった。

「ずうっと見ていたの?」

「……」
吉澤は答えなかった。

朝は登校の時…
夕方は下校の時…
そして、今は夜の散歩…

偶然、目に付いただけだ。

だが、説明するのが面倒な吉澤は黙って頷いた。


「お前、テニスが好きなのか?」

「…うん…でも、今日で諦める」

「…?」

「才能が無いって解かったから…」

寂しそうに答える石川は、励ましの言葉が返ってくると思った。


186 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:28 ID:1/b+0dRg

「そうか…分かった」

「えっ?」

「諦めたんだろ?」

「…うん」

「…じゃあな」

そっけなく帰ろうとする吉澤…

「ちょ、ちょっと…」

「…うん?」

「…何しに…来たの?」

「…お前が寂しそうにしてたから」

「…えっ…?」

吉澤の顔を見た石川のハートがドクンと脈打つ…

ひっそりと微笑む吉澤の瞳は吸い込まれそうに透明だった。


187 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:28 ID:1/b+0dRg

「でも、俺は 人を励ますってガラでも無いし…」

「…ハハ…」

「それに、テニスの事なんか、全然分からないしな」

「…うん…」

「それだけだ…」

吉澤はコートのアスファルトにマッチを擦ってタバコに火を点け、
そのままコートを出た。

「よっすぃ、タバコ吸うの?」

白い薔薇の花弁が舞う中、振り返る吉澤は薄く笑って夜霧に消えた。


ドキドキと心臓が鳴っていた…

破裂するかと思った石川は慌てて胸を押さえた。

中学からの同級生…

今まで只のクラスメートとしか思っていなかった吉澤が
こんなに格好良いとは気付きもしなかった。






188 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:32 ID:1/b+0dRg




胸に顔を埋めていた石川は、頭の後ろで腕を組み 青い空をボウと眺める
吉澤のタバコを取り上げて、そっと唇を重ねた…

「…好き」

「失敗したな…」

「…なにが?」

「あの時、声を掛けなきゃ良かった…」
出会った時の事を想う 石川の心を見透かしたかのように、吉澤は呟いた。

「もぅ、照れちゃって、可愛い」

今では、猛烈な石川のアタックに辟易する吉澤…

「あの時は、学校の行き帰りに偶然目に留まったから 声を掛けただけだ」
と説明する吉澤だが、石川は全く信用してない。

石川の脳内では、薄幸の美少女の自分を影で見守っていた
王子様の設定に出来上がっているのだ。




189 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:33 ID:1/b+0dRg


「貴女達!何をやってますの!もう、授業は始まってますのよ!」

給水塔の下から藤本の甲高い声が聞こえた。


「チッ、邪魔者が来た…」


いがみ合いながら屋上を出る石川と藤本を見送る吉澤は
もう一度、給水塔に上ろうと鉄梯子に手を掛ける。

「吉澤さん!貴方もです!」
「よっすぃ!早く!」

「……」
2人に怒鳴られ、吉澤は長い溜め息を付いた……










190 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:35 ID:1/b+0dRg


吉澤さん…

貴方は憶えていないでしょうね…

あの日の事を…

リムジンの窓から流れる街並みを眺めながら
藤本は、そっと俯(うつむ)いた…




幼い頃から我がままに育った藤本は
高校に進級する頃、ある悩みに直面した。

このまま、この性格が治らなかったらどうしよう…

自分の我がままで他人を振り回して
後悔する事が多々有った。

その事で、夜ベッドに潜り込んで眠れなくなった事も
数え切れない…

皆、自分を恐れて本心を明かさない…

多感な少女は自分の環境を嫌々受け止め、
自分の顔色を伺う大人達や同級生を蔑んだ。

だからなのか、自分でも嫌な性格になったと
自己嫌悪に陥るのだ。

191 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:38 ID:1/b+0dRg

そして、日々の生活の中で性格は変わる事は無く、
より一層悪くなる一方だった。

我がままによって生じる自己嫌悪…

このままでは心が分裂してしまう…




「ホ〜〜ホッホッホッホ」
しかし学校に来れば、何時ものように高笑いをする藤本。

パコンと後ろから頭を叩かれた。

「な、何を…」

振り向くと吉澤が立っていた。

「謝れ…」

「え?」

「謝れって言ってんだ、バカ」

「……」

吉澤の後ろには一人の少女が怯えていた。

先程、些細な事で皆の前で罵倒し、謝らせたクラスメートだ。


192 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:40 ID:1/b+0dRg

勿論、悪いのは自分だ…

その事で家に帰ってから自己嫌悪に陥り、
今日も眠れない夜を過ごすのは解かっている。

誰かに注意して欲しかった…

「お前…それで、よく毎日ぐっすりと眠れるな」

「…な!」

「それとも、後悔して眠れないのか…?」
藤本を射抜く吉澤の視線は、そのまま心に突き刺さる。

「謝ればスッキリするぜ…お前自身が、よく解かってるだろ?」

この人は自分の心を見透かしてる…

藤本の心がチクリと痛む。



193 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:41 ID:1/b+0dRg

「…さ、さっきは私が悪かったわ」
これでも謝った方だ。

「それだけか?」
何故か吉澤の言葉は心に響く…

「……ゴ、ゴメンナサイ…」

「ふん、やれば出来るじゃん」
ニヤリと笑う吉澤が、藤本の尻をペンと叩いた。

「きゃっ!何するの!」

ハハハと笑う吉澤は、いたずらっ子の様に藤本の
スカートを捲って逃げた…






194 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:43 ID:1/b+0dRg


その日から、自分でも性格が変わったと思う。

そして、眠れぬ夜は少なくなった…

眠れない日は、大抵 吉澤と話した日だ。

吉澤を想うと眠れなくなる…

----好きになったと言うの?私が?あの特異体質の男を?----

「有り得ませんわ!」

声に出して言ってみても、後の祭りだった。

藤本の心は吉澤に占領されてしまったのだ。






窓から見える青空に浮かぶ雲が 吉澤の顔に見えて、
顔を染める藤本は、鞄からある物を取り出して ジッと見詰める。

それは、吉澤に渡すつもりだった お土産…

日々募る吉澤への想いに、藤本は 今日渡せなかった
ヨーロッパ旅行の お土産の、高価なペンダントをギュッと握り締めた……



195 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/18 19:45 ID:1/b+0dRg
今日はココまでです。
次回は土曜の夜の予定です。

>>182>>183
期待していただき、恐縮です。では。


196 :名無し募集中。。。:03/11/19 01:23 ID:vlafC262
乙。
いつも楽しく読ませてもらってます。

197 :名無し募集中。。。:03/11/19 16:13 ID:Cz5VE/iU
乙です。
今一番更新が楽しみな小説です。
最後まで書き上げてくださることを期待してます。

198 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 19:49 ID:AhZomxzu

――― 8話 魔界刑事 ―――


夜の帳(とばり)が落ちる頃、『スナックみちよ』の灯が ひっそりと燈った。

午前3時過ぎの明け方近くに開店する、繁華街の外れに有る
この店の本当の事業内容は勿論 飲食店のソレではない。

カウンターで水割りを作る店のママの平家みちよ が水割りと共に
一枚の写真を長い黒髪の美貌に差し出す。

「…コイツか」
水割りに口を付けながら写真を見る女性は、胸の開いた革ジャンの懐から
帯の付いた万札の束を2つ取り出し、カウンターに そっと置く。

「毎度、おおきに飯田さん…」

「…詳細を聞こうか」
取り出した手帳には朝娘市警察の紋章が飾ってある。

特殊捜査官に選任されてる、朝娘市警察の飯田圭織は
何処の部署にも属さない異端の はぐれ刑事(デカ)だ。

魔界街には銃火器が効かない犯罪者がいる…

魔人と呼ばれる犯罪者には、その者を超える超人で対抗する。

『魔人ハンター』

飯田圭織はそう呼ばれたいた。


199 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 19:49 ID:AhZomxzu



情報提供を生業とする『スナックみちよ』を出る飯田が ふと横を見ると、
壁にもたれて欠伸をする美少年が片手を上げて出迎えた。

「…お前、来てたのか?」

「うんにゃ…今、来たところ」
壁にマッチを擦りタバコに火を点ける美貌の男は
眠そうな目を飯田に向けて薄く笑った。

「今から行くが、来るか?」

飯田から写真を受け取り、一瞥すると
そのまま返して黙って頷く。

「よし、今日はお前の腕を見させて貰うぜ、吉澤」


吉澤と呼ばれた美少年は、勿論 吉澤ひとみの事だ。

藤本美貴は勿論、石川梨華でさえ知らない
吉澤ひとみ の、もう一つ顔がココに有る。







200 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 19:50 ID:AhZomxzu



約一年前…


吉澤は殺人現場に偶然遭遇し、初めて人を殺した。

鋏(はさみ)を持った男が一振りで被害女性の首を切断して
吹き上げる血飛沫を全裸の体に浴びて歓喜の身震いをする異常殺人を
目撃したのは、何時もの夜の散歩中だった。

全裸の狂人はそのまま射精した。

「ヒャハッ!」

吉澤の存在に気付いた狂人は
その日の2人目の生贄に吉澤を選んだ。

無表情の吉澤の唇はうっすらと笑っている様に見える。

「ウヒャヒャヒャヒャ!」

その微笑を殺人者は吉澤が恐怖で竦んで動けなくなっているから
と思い、両手に持った鋏を振り回し ゲラゲラ笑いながら、
一気に吉澤の懐に飛び込んで鋏を振った。

「……え?」

ドンと胸を蹴られて尻餅を付いた狂人はキョトンとしていた。


201 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 19:52 ID:AhZomxzu

「血が付くだろ…離れろ」
侮蔑の表情で男を見下ろす吉澤の右手の人差し指には
鋏が2本 クルクルと回っている。

「……」

踵を返し10メートル程離れた吉澤が、そっと振り向き呟くように聞いた。

「返して欲しいか…?」
吉澤の右手に絡まる2本の鋏…

「…うん」
頷いた瞬間、男の後頭部に2本の鋏が突き刺さった。

「…返したよ」

崩れ落ちる殺人者に一瞥も繰れず、そっと その場を離れる
吉澤の前に立ちはだかる一人の影…

「見たよ…」
長い黒髪を靡(なび)かせる女性は警察手帳を見せた。

「……何を?」

「殺人…」

「…」


202 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 19:57 ID:AhZomxzu

「…と、消える右手」
飯田圭織は警察手帳を胸の谷間に仕舞い、
ソコからタバコを取り出して火を点けて、一息吸った。

「…見えたのか?」
そう言う 吉澤の唇には たった今、飯田が火を点けたタバコが咥えられている。

無言でニーッと笑う飯田。

「…俺をどうするつもりだ?」

「殺人の現行犯で逮捕…かな」
不自然に自分の唇から消えたタバコを意に介さず、
飯田はもう一本タバコを取り出しジッポーで火を点ける。

「…なんてな」
フーと紫煙を吹く姿勢はモデルのように美しかった。

「……」

「お前が殺した屑は、どうせ私が殺すつもりだったからね」

「…じゃあ、お咎めは無しだね」
背中を向けて帰ろうとする吉澤を飯田が止める。


203 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 19:59 ID:AhZomxzu

「待ちな…見逃さなくも無いが、獲物を取られたって所が癪に触るな…」

「じゃあ、どうしろと?」

「私の体にパンチを入れる事が出来たら、見逃し…」

言い終わらない内に飯田の顔面に吉澤の右手が瞬時に飛んできた…
が、パンチは飯田の顔面数ミリの所で止まった。

飯田の左手が吉澤の右手の手首を掴んで止めたのだ。

しかし、飯田と吉澤との距離は5メートル強…
パンチが届く距離では無い。

「さて、どうなるのか…?」
飯田の掴んだ吉澤の右手は、手首の先から空間に溶ける様に消えていた。

「私が引き寄せられるのか?…それとも、お前の体が此方に飛ぶか?」


吉澤の秘密の能力…

それは、右手を瞬間移動させる能力…

男になる特異体質と共に授かった秘密の能力は
目認出来る範囲に右手をテレポートさせて戻す事が出来るのだ。

しかし、右手が離れられる時間は限られている。



204 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:01 ID:AhZomxzu

どちらが引き寄せられたのかは解からない…
解からないが、吉澤の右手は元に戻った。

右手首を掴んだままの飯田圭織を伴って…


「未成年はタバコを吸っては駄目だよ…」
吉澤の唇からタバコを取り上げ、ピッと捨てる。

「み、見えるのか…?」
吉澤は信じられない思いだ。

パンチを飛ばすと言っても、振りかぶる構えはしていない、
右手はダラリとズボンのポケットに突っ込んだままだ。

つまり飯田は、瞬間移動で目の前に突然現れた吉澤の右手を
刹那の速さで受け止めたのだ。

「さて、これで お前の殺人を見逃せなくなった訳だが…」
ニヤニヤ笑う飯田は、愕然としている吉澤のオデコを
人差し指でピンと弾いた。

「私の助手になるなら見逃すぜ」
そう言いながら飯田は右手を差し出した。

「…なに?」

「出せよ、IDカード…持ってるんだろ?」

「……」


205 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:03 ID:AhZomxzu

吉澤が渋々出したIDカードを 持っている端末に差し込んで
本人確認した飯田は少し驚いた。

「お前…男の癖にハロー女子高に通ってるのか?
どういう事だ?あそこはお嬢様学校だぞ…」

首を竦めるだけの吉澤。

「ふん、中々ふてぶてしい奴だな…
お前が殺した屑の死体は、私が処理する…
吉澤ひとみ か…お前は帰っていいぞ」

飯田は顎をしゃくって帰るように促し、
そして、何事も無かったように帰ろうとする吉澤。

「ちょっと待て…」

帰っていいぞ、と言ったのは飯田だ、
だが、一つ聞き忘れた事が残っていた。

動揺も無く 無慈悲にも、犯罪者とは言え あっさりと人を殺した
吉澤の殺人業には余裕が有り過ぎる。


206 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:04 ID:AhZomxzu

「お前、人を殺すのは初めてじゃないだろう?」

「…うんにゃ」
立ち止まり、首をゆっくりと振って否定する吉澤は、
殺人を追及する刑事としての飯田を恐れた訳ではない。

相手は人間の心など持ち合わせていない事は明らか、
ましてや、生きていたら害悪を撒き散らすのは確実な狂人だ。

人間はハエ蚊を殺して『可哀相な事をした』などと思う心を持ち合わせては いないのだ。

「ゴキブリの類を潰して悲観する奴はいないよ…」

犯罪者を虫と言い切る、吉澤の言葉を聞いてニーッと破顔する飯田。
魔人と呼ばれる『人間』を人と思わず殺せるパートナーが出来たのだ。

「今日から、お前も『魔人ハンター』だ…必要な時に連絡する」

振り向きもしない吉澤は軽く手を振っただけで、夜道に消えた…









207 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:06 ID:AhZomxzu

白々と夜が明け始める午前5時…
飯田と吉澤は一人の男を待っていた。

ギャーギャーと喚くように鳴くカラスの群れが煩わしい、
舗装もされていないボロアパートが立ち並ぶ、長屋然とした古い町並み。
復興が遅れた この通称泥水町は、犯罪者が隠れるのには絶好の場所…
警察も足を踏み入れたがらない、危険度Aの集落帯の一つだ。
そして、警察の肩書きなどはココでは通じない。

そんな町に一人、いや吉澤と二人で平然と足を踏み入れる美貌の女刑事は
そこの住人にとって格好の慰み者、つまり生贄だった。

だが、生贄の条件は「普通」の女刑事の場合だ。

灰色のアパートの壁にもたれる飯田の足元にはピクリとも動かない
人間が3人倒れている。
獲物が来たと飯田達を取り囲んだゴロツキ共の末路だ。

路地の至る所から此方を伺っていた粘る複数の視線は
瞬殺されたチンピラを見て気配を消した。

「…ふん、それでも気配を消したつもりかねぇ」
飯田は周りを気だるそうに見回すが、動くつもりは無い。
雑魚を相手にする気はサラサラ無いからだ。


案外治安がいいと言われる朝娘市…
それは、警察が掌握している街の約8割の表の顔…
しかし、真の魔界街の裏の顔がココに有った。



208 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:09 ID:AhZomxzu

『スナックみちよ』の平家からの情報だと、今日必ずこの道を通る筈…
写真の男は毒猿と呼ばれている殺人を生業とする暗殺者だ。

「ひでえ顔してるな…まさに毒猿だよ」
シゲシゲと写真を見る飯田は、初めて見る暗殺者の顔に表情を曇らせた。

この男に殺された人間は二十数名、全て毒殺だった。
どのように毒を盛ったのか解からないが、共通しているのは
被害者から検出される毒の成分…

優に20種類以上の毒を体内に入れられて殺される
被害者の姿形は毒によって腫れ上がり正視出来る物ではなかった。

正体も判らない毒猿に警察が掛けた懸賞金は200万円、
勿論、生死は問わない。

毒の痕跡しか残さない暗殺者は、その後も警察を嘲笑うかのように
自分の仕事を繰り返した。


209 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:10 ID:AhZomxzu

暗殺を依頼する人物さえ、見付け出せないジレンマが焦燥感を生む…

そして一人、独自の捜査を開始した飯田の元に待ちに待った平家からの返答。

数える程しか、その存在を知らない『スナックみちよ』は
どのようにして情報を得るのか解からないが、
その信憑性は他の情報屋の比ではない。

200万円という懸賞金と同額の情報料を支払った平家みちよ からの報告は
毒猿の正体を朧気(おぼろげ)ながら浮かび上がらせる。

「ふん、コイツ自身が毒の塊(かたまり)って訳か…」
飯田は皮の手袋を嵌めて皮ジャンのチャックを全て閉めた。

毒の体で相手を触って殺す…

暗殺者の手口が見えたからだ。




210 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:15 ID:AhZomxzu

果たして、毒猿は来た。

ヒョコヒョコと片足を引いて歩き、
スッポリと頭からフードを被った身長が150センチも無さそうな小男は
体を隠すように飯田と吉澤の前を通り過ぎるが、
妖気を漂わせる歪んだ空気は隠す事は出来ない。


「よう兄さん、人を殺して御帰宅かい?」

ピタリと立ち止まる毒猿。

「お前の住む糞みたいなアパートは突き止めたが…」

毒猿は肩を揺らしている…
笑っているのか、フードからはゲッゲッゲと篭もった声が漏れる。

「汚い毒が充満してるアパートで待つのが嫌なもんでね…」

毒猿は薄っぺらいフード付きのコートを脱ぎ捨てた。

「ここで待たせて貰ってた訳だが…」

「……」
横を向いたままの毒猿の皮膚は人の色を成していない…

「早速で悪いが…死んで貰うぜ…」

飯田に向かって振り向く毒猿の顔は正に毒に犯されたように浮腫(むく)み
肌は紫色に染まっていた。
ダラリと垂らした両手は異様に長く、手の甲が地面に付いている。

211 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:17 ID:AhZomxzu

「ふん、思った通り、その長い毒手が武器だったか…」

戦闘体勢の飯田は前屈姿勢で体重を前に掛けて、
今にも飛び出さんばかりにジリジリと詰め寄る…
対する毒猿は後ろに体重を乗せて受けの構え。

どちらも口には笑みが漏れている…


----ドン!----


大気を突き破る瞬速の早さで一気に間合いを詰めた
飯田の正拳突きが毒猿の胸に叩き込まれた。

吹き飛ぶ毒猿は向側の壁に激突してガラガラと崩れるブロックに埋もれる。

「馬鹿め!」
ズカズカと歩み寄る飯田の体は闘気に包まれて周りの空気が歪んでいた。

ボン!とブロックを蹴散らして回転しながら飛び出した毒猿は
そのまま両手を飯田の肩口に叩き込もうと毒の手刀を振り下げた。

その両手首をガッチリと掴む飯田の両手。

----ボキン!----

両手を掴まれた毒猿の手首は、超人の握力でアッサリと折れた。

しかし、飯田の顔は苦痛で歪む。


212 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:19 ID:AhZomxzu

毒猿の手首を掴んだ飯田の手の平はブスブスと煙を上げた…
皮の手袋をも腐食させる毒手は飯田の手の平を伝い体内に毒を塗りこんだのだ。

「ゲッゲッゲ‥オデの体に触れれば死ぬ…」
篭もるダミ声で笑う毒猿は折れた手首も気にしないようだ。

「成る程…」
それでも、ニヤリと笑う飯田は徐(おもむろ)に歩み寄り
万力の握力で毒猿の両肩を掴んだ。

ギリギリと肩に食い込む鋼の五指に今度は毒猿の顔が苦悶に歪む。

「吉澤!やれぇ!!」
振り向く飯田の先、20メートルの所に吉澤はポケットに手を突っ込み
気だるそうに立ち尽くしていた。

飯田に釣られて吉澤を向いた毒猿の胸に
ニュッとマグナムの銃口が突き刺さっていた。

そのマグナムを握る右手は手首より先が空気に溶けるように消えている。

----ドゴーン!----

飯田が吉澤に持たせていた、飯田専用の特製マグナムは
毒猿の胸にポッカリと風穴を開けた。

普通の人間が撃てば、その反動によって確実に腕と肩が砕けるビッグマグナムは
反動など関係無い吉澤の右手に託されていたのだ。



213 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:20 ID:AhZomxzu

ガクリと膝を付いた毒猿の顔面に飯田の正拳…
超人と呼ばれる飯田の鉛の様に重い一撃は
毒猿の頭をスイカのように粉砕した。



「…ふう‥」
毒が回ったのか、流石にフラつく飯田はベルトのバックルから
注射器を取り出し自分の首に中身の血清を打ち込む。

「…お前の毒の成分は分かってるんだ…解毒剤ぐらい用意しとくぜ」

胸に穴が開き、首が無い暗殺者の屍骸を見下ろし
飯田は呟くように吐き捨てた。

一仕事終わったとタバコを咥え、
毒猿の屍を冷ややかに見詰める吉澤も漂々(ひょうひょう)とした物だ。

「で…どうするの?」

「吉澤、賞金の200万は、お前が貰えよ…
刑事の私は貰えないからな…
ハハハ‥高校卒業後の就職先が確定した祝い金だよ」


携帯で本署に連絡しながら、飯田は肩を竦める吉澤にウィンクしてみせた…






214 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/21 20:25 ID:AhZomxzu
今日はココまでです。次回は月曜か火曜になる予定です。
>>196
>>197
ありがとん。
まだ、ラストがどうなるか考えてませんが、完結できるように頑張ります。では。

215 :名無し募集中。。。:03/11/22 04:44 ID:1yjcKIrD
ゆっくり頑張ってね〜

216 :名無し募集中。。。:03/11/22 19:11 ID:YBU37vx0
飯田さんとよしこカコイイ

217 :名無し募集中。。。:03/11/23 11:09 ID:Y17gPZ2u
( ^▽^)<ドキドキ


218 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 19:48 ID:Bo4EgBxw


――― 9話 挫折 ―――


何時もの様に朝娘市警察署に出勤した後藤真希は
自分の机で缶コーヒーを飲みながら新聞を広げた。

「…うん?」
社会面のトップ記事に特別指名手配犯の毒猿が殺され
被疑者死亡のまま起訴との記事が載っていた。

「……殺したのは‥一般の民間人…?!…民間人!!」

後藤の脳裏に、ある人物の面影が浮かんだ。

「やった!…やったね!市井ちゃん!!」

思わず声を出して喜ぶ後藤は、課長に毒猿を殺した民間人が誰かを聞いた。




219 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 19:48 ID:Bo4EgBxw


「高校生だな…まぁ実際は飯田が殺ったと、皆思ってるがな」

「…こ、高校生?…市井ちゃん…以前ココ(朝娘市警察)に居た
市井ちゃん じゃないんですか?」

「市井…?……あぁ、アイツかぁ‥」
課長は思い出したようにタバコを吸った。

「毒猿を殺ったのは吉澤とかいう名前の高校生だが…
お前 何で市井を知ってるんだ?…
確か、アイツが辞めたのは、お前が入る一年以上前だったと思ったが…」

そこまで話して課長は呆然とする後藤に気付いた。
「おい、聞いてるのか?」

「…あ、は、はい…そ、そうですか…いや、いいです‥何でも無いです」
肩を落とした後藤は自分の机に もたれて天井を見上げた。


----何やってんだよ…市井ちゃん----





220 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 19:50 ID:Bo4EgBxw


2年以上前、後藤の近所に市井沙耶香という朝娘市警察の巡査が住んでいた。

幼い頃からの近所付き合いの中で何時の間にか当たり前のように
仲良くなった市井は時が過ぎるにつれて後藤の姉のような存在になっていた。

その市井が、違法賭博組織の壊滅の為に特別チームに抜擢されたと
喜んで報告しに来た。
刑事になるのが夢と聞かされていた後藤も、自分の事のように喜んだ。

捜査は順調に進み、中でも市井の活躍は素晴らしく
黒幕を一人で逮捕したのが市井だった。


一人、署長賞を貰い、念願の刑事にも なれた市井は
有頂天になっていたのかもしれない…

刑事になってからの市井は変わった。

チームプレイを逸脱して、仲間が集めた情報を確認もしないで
身勝手に動き出す市井は、その後 仲間からの信頼を失った。

信頼を取り戻す為には、更なる成績が必要と考えた市井は
もう少しという所まで追い詰めた『毒猿』を単独行動で取り逃がした。



221 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 19:50 ID:Bo4EgBxw

しかも、同僚2人の死を伴って…


同僚の2人は市井を庇って毒猿の洗礼を受けて殉職した…


追い詰めたのは良いが、暗殺の手口さえ掴めず
殉職者さえ出した捜査は完全に振り出しに戻ったのだ。

3人チームで編成された、毒猿捜査班は市井の独り善がりの行動のお陰で
失敗に終わり、市井は当たり前のように捜査から外され交番勤務に戻された。



そして、左遷された市井は警察を辞めた。


理由は毒猿への復讐の為…


----沙耶香!お前は逃げろ!!----


同僚の声が耳に張り付いて離れない…


捜査一課の生え抜き刑事から一介の巡査に降格した市井の取る道は
賞金稼ぎに転身して毒猿を殺す事だった。




222 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 19:55 ID:Bo4EgBxw


「暫らく会えなくなるね…」

後藤の頭を撫でながら話す市井の瞳は
ある意思を持っているように見えた。

強烈な蒼い炎を湛える、強靭な魂の宿る瞳…

後藤はゾクゾクと背筋に走る市井の意思を感じて
自分の進む道を悟った。

「うん…私も警官になる!…そして、待ってるから…
市井ちゃんが帰ってくるのを…」

手を振って街に消える市井は
後藤の涙で滲んで見えた…

それから、連絡は無い…

連絡が来る時は毒猿を殺した時…


ずうっと、そう思っていた…






223 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 19:56 ID:Bo4EgBxw

市警のホストコンピュータから、現在の賞金稼ぎ達を調べた後藤は
市井の名前を探し当てた。

---200X年0X月廃業---

市井は賞金稼ぎになってから僅か3ヶ月で廃業していた。

「どういう事…?」

近所の市井の家族は
「娘は元気にしてるから心配いらないよ」
と、いい続けてきた。

後藤自身も連絡が無いのが元気な証拠と
市井の両親を信じていた。


「…市井ちゃん…………‥‥-









224 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 19:58 ID:Bo4EgBxw

その店を探し出すのに約一ヶ月程を要した…

市井の両親は後藤に心配を掛けまいと嘘を付いていたのだ。

その両親も一年以上連絡が無いと肩を落とした。

「真希ちゃん…沙耶香を捜して…お願いします」

涙を浮かべて後藤に頭を下げる母親…

「…分かりました…」

後藤は、そう答える事しか出来なかった…



---ギィ---

ドアを開けると、安っぽい音楽と淀んだヤニの臭いが鼻に付いた。

名前も知らない、いや、知りたくも無い場末のキャバレーだった。

女性だけのお客さんは‥と断るボーイを無視して
テーブルを一つ一つ回って見た。

キャップを深く被り、サングラスで目を隠した後藤を
最初は誰だか判らなかったようだ。

市井沙耶香は禿げたオヤジに胸を揉まれて
水割りのグラスを傾けていたのだ。


225 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 19:59 ID:Bo4EgBxw

「なんだい、アンタ?…ちょっと誰か!」
市井は訝しげに後藤を見ると、摘み出せと言わんばかりにボーイを呼んだ。

「おい、お前!…」
肩を掴んだボーイの鼻が潰れた。

裏拳でボーイを突き飛ばした その手で
警察手帳を取り出して市井に放る。

「……‥」
手帳を持つ市井の手が小刻みに震えた。

「…捜索願が出ている…アンタの両親からだ」

「…‥」
市井は顔を上げる事が出来ず、ジッと警察手帳を見詰める。



226 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 20:00 ID:Bo4EgBxw

「どいつだ!暴れてるって奴は!!」

用心棒らしき風体の男が店の奥から出てきて後藤を見つけた。

「テメエか!ゴルァ!!」

後藤は振り向きもせず、腕を振る。

「撃つよ…」

ピタリと額に当たった銃口に、用心棒は言葉を失った。



「この人は警官だよ…」

ポツリと呟く…

「…場所を変えよう…」

市井は顔を上げずに手帳を返した…






227 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 20:02 ID:Bo4EgBxw


「親には 廃業した時に、アンタにだけは話すなって言ったんだけどなぁ…」

近くに有る小さな公園のベンチに腰を下ろし
市井は星空を見上げた。

「で…何か用でも有るの?」
メンソールタバコに火を点けて、フーと紫煙を吐き出す
市井の唇は禍々しく真っ赤だった。


「毒猿は死んだよ…」

「そう…」
そう言って俯(うつむ)く市井は暫らく黙り込んだ。

「ハハ‥良かったじゃん」
誰が殺したかも聞かずに
メンソールタバコを吸い終わってから出た言葉がコレだった。


「……なんで辞めたんだ?」

賞金稼ぎを辞めた理由を問い質す後藤…
声が震えてるのが自分でも分かる。

「…なんでだろうねぇ?」

市井は、まるで人事だ…


228 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 20:04 ID:Bo4EgBxw

「…答えられないのか?」

胸にズシリと鉛が沈むような感覚に、出る言葉が重かった…

「……」

無言の市井の半笑いの横顔…


「…答えろよ…」


雲が月を覆い隠し、虫の声が辺りを包むように市井が呟く…

「…気付いたんだよ…自分の実力に」

市井から出る言葉も、同じ重さなのだろう…

「最初は出来ると思ったんだよ…」

「……‥」

「賞金稼ぎの仕事でも トップに成れると信じてたんだよ…」

「…‥」

「…でも、現実は違ってた」

「…」



229 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 20:05 ID:Bo4EgBxw

「ハハハ!私なんか足元にも及ばない連中がゴマンと居る世界だったんだよ!
ハハハハ、信じられるか?この市井沙耶香様がだよ?ハハハハ!」

市井は立ち上がり、大仰に手を広げて見せた。

「だから逃げたんだよ!ハハハハ!やってられねえってな!」

「……」

「お笑い種(ぐさ)だよな!ハハハハハ!ハハハハハハハ!!」

「……」

「ハハハ!どうした?答えてやったぜ!笑えよ!八八ハハハ!!ハ ハ ハ ハ…」


「…」


笑い疲れた市井がベンチに座るのと入れ替わるように
後藤は立ち上がり、そっと その場を離れた。



230 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 20:07 ID:Bo4EgBxw

少し離れてから振り返ると、市井はタバコに火を点けようと
百円ライターを回し続けている。

「…市井ちゃん?」

後藤の声が聞こえないかのように
火が点かないライターを回し続ける市井…

「一度も私の顔を見ないんだね…」

ピクリと市井が振るえて動きを止める…

「今日、会ってから一度も私の顔を見ていない」

サングラスを外して、市井の足元に放った。

「……」
目の片隅でサングラスを見る市井は怯えた小動物のようだ。

「こっちを向けよ!!」

「…」
市井は、またライターを回し始める…

「市井ちゃん!!」


231 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 20:10 ID:Bo4EgBxw

「見れると思ってるのかよ…」
市井の声は震えていた。

「……」

「ふざけんじゃないよ!バカヤロー!」

足元のサングラスをワナワナと震える足で踏み潰す…

「な、なんで、アンタの顔なんか見なきゃいけないんだ!
こっちは見たくないんだよ!…もういいだろ、帰れよ!私の前から消えてくれよ!!
…ちくしょう、点かねえ!このライター!!…ちくしょう!ちくしょう!!」


市井は最後まで後藤の顔を見なかった…


----ちくしょう、ちくちょう、ちくしょう、ちくしょう----


虚無感に包まれながら公園を後にする後藤の耳に
何時までも市井の声が響いた…









232 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/25 20:12 ID:Bo4EgBxw
今日はココまでです。次回は取り合えず未定です。
>>215>>216>>217マタリと行きますのでこれからもヨロスコです。では。


233 :名無し募集中。。。:03/11/25 21:14 ID:WuQK4iYW
いちーちゃん、つらいな

234 :名無し募集中。。。:03/11/26 09:54 ID:M5S+gfWO
市井紗耶香ね
間違えないであげてね゚・(ノД`)ノ・゚・。

235 :名無し募集中。。。:03/11/26 21:56 ID:1gsDJ2cI
( ^▽^)<ごっちん・・・ドキドキ

236 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/11/27 13:03 ID:vBA0Ct/h
ふふふ、また名前を間違えたようですな…  _| ̄|○

市井は また出てくるので直しました(`・ω・´)

237 : :03/11/28 15:52 ID:DsarlQ4Y


238 :名無し募集中。。。:03/11/28 22:08 ID:2bxC8uEE
狼も羊もカス

239 :名無し募集中。。。:03/11/28 22:34 ID:W/echoo/
ξ

240 :fan ◆0sd/2zFGKU :03/11/29 00:16 ID:Twd0nT66
川σ_σ||

241 :fan ◆ExDuDo8XHo :03/11/29 00:18 ID:Twd0nT66
TT

242 :名無し募集中。。。:03/11/29 01:36 ID:cIm9ZQz8
( `.∀´)<よく来たわね

243 :名無し募集中。。。:03/12/01 16:01 ID:BO8ef/CE


244 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:17 ID:8E+Ed7uq

――― 10話 転校生 ―――


魔界街に続く一本の橋が有る。
魔界と外界を繋ぐ其の橋を朝娘橋と言う。

真っ暗な橋の下から湧き上がる、魔界からの陽炎に揺らめきながら
朝娘橋を徒歩で渡る2人の影が有った。

黒いフードに黒いケープの女と
紫のマントと紫のトンガリ帽子の少女…

ケープの女のフードからは鷲鼻と鋭い眼光が覗き、
手にはゴツゴツした瘤の付いた樫の杖を持っている。

そして、マントの少女の手には体より高いホウキが握られていた。

「ねぇ、お師匠様、なんで車で渡らないの…?」

つぶらな瞳で聞く少女の言葉のイントネーションは、どこか訛っている。

「フ‥登場シーンってのは大事なんだよ」

「フーン…誰も見てないのに?」

「おだまり!」

キッと見据えられて少女は肩を竦ませる。


245 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:18 ID:8E+Ed7uq

「それより…」

師匠と呼ばれた女の口がニーッと広がった。

「今日から この街が私等の事務所の活動拠点だよ」

「今までの東京の事務所でも良かったのに…」

「阿呆、ココは国税の税務調査が入れないから、ガッポリと脱税出来るんだよ、
それに、『お前達』が芸能活動を続けるには、もっともっと今まで以上に
この街でミステリアスな部分を演出しないといけないからね」

格好良い登場シーンとか言っておきながら下世話な話しを
得意気に話す女は勿論 魔女だ。

「まぁ、私達 魔女には相応しい街だよ…
探してた私の師匠もココに住んでる事を突き止めたし、ヒッヒッヒ…」

不気味に笑いながら懐から一枚の紙を出した魔女は中心に描かれている五芒星に
吐息を吹きかける、すると紙はカラスに変化した。

「お行き!中澤は この街の何処かに居る…
探し出すまで帰ってくるんじゃないよ」

バサバサと音を立てて飛び立つカラスは
一度 魔女達の上空を旋回してから街に消えていった。


246 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:19 ID:8E+Ed7uq

「さて、私達も新しい事務所に急がなくてはね」

「…だから、車で…」

「おだまり!」

「…師匠」

「社長とお呼び!」

「…」


魔力を使って飛んで行ってもいいのだが、超売れっ子アイドル松浦亜弥を抱える
芸能プロ社長の石黒彩は、顔がバレて『忌まわしい魔女が社長だった』みたいな
スキャンダルに発展するのを恐れて徒歩で魔界街に入った…

もう一人の秘蔵っ子新人アイドル、高橋愛を伴って…









247 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:20 ID:8E+Ed7uq


ハロー女子高の昼休み、安倍なつみと矢口真里は
校庭の外れでホウキで飛ぶ練習をしていた。

「やっぱり駄目だべ…」
項垂れる安倍のホウキの先には、安倍が作った魔法グッズの
『ナッチベア』が3個 寂しそうにプラプラと揺れている。

「……ふう」
矢口も腰に手を当てて首を左右に振る…

中澤に「背中に翼が生えている」と言わしめた
安倍の潜在能力は、ある欠点によって開花出来無いでいる。

「もう、怖がってちゃ駄目だよ!」

「…だって、本当に怖いんだよ」

地面に膝を付きガックリとする、安倍の弱点は高所恐怖症…

自分の背より高い位置にホウキを浮かせるとパニックになって
落ちそうになるのだ。


---へっ、とんだワシの見込み違いじゃったのぅ---


馬鹿にした様な中澤の言葉にムカつき、特訓を決意したが
恐怖を克服する事は一朝一夕で出来る程甘いものではなかった。


248 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:26 ID:8E+Ed7uq

肩に乗る『メロン』が心配するなと安倍に頬擦りして慰める。

「…ハハ、ありがと」
使い魔に慰められると、余計に落ち込む…

「まぁ、特訓は始まったばかりだよ…
今日はこのぐらいにしとこうぜ」

「…うん」

矢口に肩をバンバン叩かれ元気を出すように言われても、
惨めに肩を落とす安倍は心底 落ち込んでる様に見えた。



「ニャ〜オ」
矢口の頭で丸まっていた『ヤグ』が何かに気付き矢口に知らせる。

「……うん?」
ヤグの視線の先、高校の校門に人だかりが出来ていた。

テレビカメラを持った人間が2人とマイクを持ったレポーターらしき女性が一人、
それにスタッフが数人…

「あっ!テレビの取材だよ…どうしよう」
落ち込んでいた安倍が急にソワソワしだした。

「…どうしよって…どゆ事?」
意味が全然分からない矢口。


249 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:28 ID:8E+Ed7uq

「だって、なっち が魔女ってバレるかも…」

「…はぁ?」

「だってだってだって、バレたら大変だよ!」

「バレないし、バレても大変じゃないし…
ってか アレは松浦の取材だろ?多分」

「うん?…松浦って?」

「ほら、出てきた」

矢口が指差した先にはアイドルの松浦亜弥…
カメラは笑顔で登校しているシーンを撮影している。

「うっそー!なんで あやや がココに居るの?」
手を口に当てて驚く安倍に
「松浦はココの生徒だよ」
と素っ気無い矢口。

「工 工 エ エ エ エ エ!!」

安倍は知らなかった…
人気絶頂のアイドルがハロー女子高の生徒だった事を…




250 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:28 ID:8E+Ed7uq

ハロー女子高2年の松浦亜弥は2年前東京に遊びに行った時に
石黒にスカウトされて現在に至る。

忙しいアイドルは市長兼国会議員兼ハロー女子高理事長の
つんく の特例措置を受けて魔界街と外界の行き来を
フリーパスで通り、高校の成績も単位も不問にして貰っていた。

魔界街出身の松浦亜弥は不思議な魅力を振り撒き国民を魅了する
スーパーアイドルとしてアイドル界の頂点にいるのだ。



「矢口、後でサイン貰おうよ」

「エ〜ッ、やだよ」

「なんでなんでなんで?あやや だよ!あやや」

「……」

ハシャギまくる安倍のミーハー振りに目が点になる矢口は
さっきまでの落ち込みようは何だったんだと
呆然と開いた口が塞がらなかった…







251 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:30 ID:8E+Ed7uq

3階の教室の窓から校庭を眺めていた吉澤が「おっ」と声を出した。

「なになに?」
すかさず隣に駆け寄る石川の表情が一変する。

「なぁんだ、松浦じゃん…ちぇ」

テレビクルーに囲まれる松浦を見る
石川の顔は女の嫉妬のソレだ。

「……可愛いなぁ…って、イテテテテテテ、止めろ、冗談だって」

ボソリと呟く吉澤の声を聞き逃すはずも無く
石川は吉澤の耳を引っ張った。

「ちょっと、よっすぃ!あんなB級アイドルの何処が良いのよ!
なにさ、少しばかり可愛いからって!フン!」

「…オマエよりは…」

石川の鬼の形相に気付いた吉澤は
そこまで言って慌てて立ち上がり踵を返し、逃げの体勢になる。

「石川さんの言う通りですわ!」

「わぁ!」

振り向いたら藤本が仁王立ちになっていて、
こちらの顔も恐ろしく怖かった。


252 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:32 ID:8E+Ed7uq

「皆からチヤホヤされて、さぞ性格が悪くなってるんでしょうね、
顔に性根の悪さが滲み出てますわ!」

「…ハハ」
どの面(つら)でそんな事が言える と、半笑いの吉澤。

「でも、可愛さやエレガントさなら私の方が上ですけど、
オ〜〜ホッホッホッホッホッホ」

「チャーミーさなら私も負けませんわよ、藤本さん、
ホ〜〜ホッホッホッホッホッホ」

「………‥」

おバカな高笑いをする2人を尻目に
コソコソとその場を離れる吉澤。

「ちょっと、何処に行くの?吉澤さん!」

「よっすぃ!なんで逃げるの!」

ギクリとする吉澤は天を仰いだ。

また、くだらない漫才に付き合わされるのかと思うと急に憂鬱になる。

それは、何時もの昼休みの出来事だった…





253 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/01 20:34 ID:8E+Ed7uq
今日はココまでです。続きは明日…です、多分…では。

254 :名無し募集中。。。:03/12/01 23:43 ID:g7sE0Ub7
更新お疲れでつ。
新しい展開の予感ですね。楽しみにしてまつ。

255 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/02 21:01 ID:OpwgNVwI

辻達が通う市立朝娘中学校に市外からの転校生が来た。

「オマエ等、驚くなよ〜」
ニヤリと笑う3年1組の担任の江頭先生が
転校生を教室に呼んだ。

ガラリとドアを開けて入ってきた愛くるしい美少女に
教室中がどよめく。

「おおお!愛ちゃんだ!アイドルの愛ちゃんだ!」
「本物かよ?」
「マジかよ!」

口々に歓声を上げる男子生徒達にニッコリと微笑んで、
松浦亜弥の妹分との触れ込みで今話題の、
期待の新人アイドル高橋愛はペロリと舌を出してエヘヘと笑った。

「うおおおお!可愛い!」
「愛ちゃ〜〜〜〜ん!!」

吠える男子達とは裏腹に女子は白けながら顔を見合わせる。

「なんやねん アレ、なぁ のの」

「でも、可愛いのです」

「有名人と同級生ですか…」

一番後ろの席3列の加護、辻、紺野も其々の感想を漏らす。


256 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/02 21:05 ID:OpwgNVwI

「オマエ等!うるさいよ!しーしー!」

何故か何時も上半身裸の学級担任 江頭が、騒ぐ男子を静かにさせて
改めて高橋に自己紹介させる。

黒板にサラサラと書くのは自分のサイン。

「おお、やっぱり本物だ〜」と、歓声を上げる教室。

「はじめまして、高橋愛です、お仕事で一緒にいられる時間は
少ないかもしれないけど、仲良くしてね♪」

「うおおおぉぉぉおおおおお!!」
余りの可愛さに男子達は、さっそく虜に成り下がる。

「なんや、訛ってるやん」
イントネーションの訛りに加護が毒づく。

「加護さんも…」
「ウチのは大阪弁!訛りちゃうわ」

クスッと笑う紺野に、すかさず突っ込む加護。




257 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/02 21:07 ID:OpwgNVwI

「さて、高橋の席だが…」

男子全員がハイハイと手を上げて自分の隣を差すが、
江頭先生はバカ生徒を無視して紺野の隣を指差した。

「高橋、紺野の隣の席が空いてるから、ソコにしなさい、
紺野も この間 転校してきたばっかりだ、
新人同士仲良くするんだぞ」

一斉に肩を落とす男子…

「アホばっかりやで、ウチ等のクラスの男子共は」
加護は長い溜め息をついた。



紺野の席の隣に座った高橋が、3人に向かって微笑んだ。

「……?…」
愛想笑いで微笑み返す3人…

「よ、よろしく、私 紺野あさ美です、私も転校してきたばかりなの」
「ののは辻希美と言いますです」

紺野と辻の挨拶にも、微笑みは崩さず…

「貴女達、魔女見習いでしょ」
挨拶の変わりに高橋から出た最初の言葉がコレだった。


258 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/02 21:08 ID:OpwgNVwI

「え?なんで知ってるのです」
キョトーンとする辻の顔が何かに気付き、
口に手を当てて驚きの声が出るのを抑えた。

高橋のセーラーのポケットから顔を出す真っ白なハムスター。

「フフフ、この事はクラスの皆には内緒ね」

「……」

声も出ない3人に向かってニーッと歯を見せて微笑む
高橋の笑顔は、どこか意地悪そうに見えた。




高橋は仕事が有るので午前中で早退した。
授業の合間の時間に話を聞こうとしたが
新人アイドルは男子に囲まれて話すどころではなかった。


結局、話しは出来ず、高橋が魔女の件は謎のまま放課後を迎えたのである…







259 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/02 21:10 ID:OpwgNVwI
今日はココまで、次回は土曜の夜の予定です。
>>254
楽しみにして頂き感謝です。では。

260 :◆CyAU1MoaS2 :03/12/03 01:02 ID:LBUP6H4z
地方からきますた

261 :名無し募集中。。。:03/12/05 06:23 ID:Bw4OfOAA
( ^▽^)<ドキドキ

262 :名無し募集中。。。 :03/12/06 00:22 ID:/DHYUb6R
あげ

263 :名無しちゃん:03/12/06 01:02 ID:6EfB6SMF


264 :名無し募集中。。。 :03/12/06 17:30 ID:m4R+elnJ
(〜^◇^) <ちぇっく


265 :おおお:03/12/06 17:35 ID:gThQ+bzu
537 :萌える名無し画像 :03/12/05 23:54 ID:JZ8K9pA3
コラ貼ってるくせにこのレス削除したり
アクセス規制したら法廷に引きずり出してやる
スレッドごと削除しろ
























正義の味方が現れたみたいですよ




266 :名無し募集中。。。 :03/12/07 01:40 ID:IYOyAHkR
おい ハナゲ


スレの題名が紛らわしくて
へんなレスがいくつかあるけど
小説はマジおもろいです

がんがって

267 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 13:58 ID:kHKIw6yH

バーンと勢い良くMAHO堂のドアが開いて魔女見習い達が帰ってきた。

「裕子婆ちゃん!!大変なのです!」

「なんじゃい?騒がしいのぅ」

学校が終って直ぐ、息を切らせながら走って来た魔女見習いの3人は
日本茶をススっていた中澤を囲んだ。

「魔女見習いがいるのです!」
「ウチ等以外 魔女って居ないのとちゃうの?」
「有名人とお話し出来ました」
「高橋愛ちゃんっていうアイドルなのです」
「なんか、感じ悪かったでぇ」
「お友達になってくれるんでしょうか?」
「あやや の妹分なのです」
「あやや もなんや感じ悪いんちゃう?」
「今度サイン貰いましょう」

「……‥」
自分を囲み、ギャーギャー騒ぎ立てる3人に
プルプルと体を震わせる中澤…

「でねでねでね、ハムスターを持ってるのです」
「まぁ、ウチ等の使い魔の方が優秀に決まってるけどな」
「私はまだホウキさえ貰ってませんよ」

「………‥」
中澤の額に血管が浮き出てピクピクと動く…


268 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 14:01 ID:kHKIw6yH

「でねでねでね…」
「そいでなぁ…」
「ですから…」

「……」
プツンと血管が切れる音が聞こえた…

「…バ、バババババッカモ〜〜〜〜ン!!
じゃかましいわ!きさま等!!!」

ガバッと立ち上がり、額の血管を浮き出させながら
噴火する中澤に、皆 腰を抜かして尻餅を付いた。

「あっ、腰が治ってるのです」
「ほんまや、ピンとなってるやん」
「良かったですね」

「おぉ、曲がってた腰が…って、アイタタタタタ…」
激情の余り腰を伸ばしてしまって、
つい やってしまった乗り突っ込みも腰の激痛には耐えられず、
腰を押さえて蹲る中澤を心配する3人。

「大丈夫ですか?」
紺野が支えて椅子に座らせた。

「…やれやれじゃわい、オマエ等、もうちょっと落ち着いて話せ」

「あのねあのね…」
言葉足らずの辻の代わりに加護と紺野が
今日の出来事を話した。


269 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 14:04 ID:kHKIw6yH


「ふむ、成る程のぅ…」
目を瞑りながら聞いていた中澤は
聞き終わると、お茶を一口飲んだ。

「結論から言うと、思い当たる節が無い訳ではない」


「…やっぱり」
顔を見合わせ、頷き合う3人。



そこに、タイミング良くドアを開けて入ってきた2つの影…


「…あっ!」
「なんや、その格好!」
「お仕事じゃなかったの?」

紫のマントとトンガリ帽子の魔法のホウキを持ち微笑む高橋と
カラスを肩にとめる黒尽くめの目付きの鋭い女性…

「お師匠様、久しぶりね」
顔半分を隠していたフードを颯爽(さっそう)と外し、
石黒彩のドギツイ口紅に彩られた唇の端がキューッと吊りあがる。

「やはり、おぬし じゃったか…彩よ」

「フフフ…」
不適な微笑を湛える石黒…

270 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 14:09 ID:kHKIw6yH

その石黒を辻達が指を差してクスクス笑った。

「…魔女なのです、本物なのです」
「あの鼻は、ほんまもんやろ」
「鉤のように鋭く曲がってますよ」


「じゃかましいわ!魔女見習い共!」

言われたくない所を突かれて、顔を高潮させた石黒に一喝されて、
ピンと固まる3人だが、笑いを堪(こら)えている表情が見え見えだ。

「…コイツ等…」
今度は石黒の額の血管がピクピクと動く。

「でも、裕子婆ちゃんを師匠と呼ぶって事は…」
「弟子だったんやろ?」
「でも、随分若いですね」

また、ヒソヒソと始める3人に、訳知り顔の中澤がニヤケながらボソリと呟く。
「…彩は、もう80歳を越えとるわ」

「…ゲッ!」
「ババアやん!」
「詐欺みたいな物ですね…」

「キー!うるさい!!…って、なんだ?お前まで!」
ムカつく事を言い放つ小娘共に、本気で腹を立てながら横を向くと、
一歩引いて 信じられない という表情の高橋がアングリと口を開けていた。


271 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 14:19 ID:kHKIw6yH

「…師匠、この娘達を少し黙らせてくれ」
小娘達との言い合いは空しいだけだと思った石黒は
中澤に助けを求めた。

「そんな事より、何の用じゃ?」
石黒の要求を無視して、用件だけ聞く。

「……用という用は無いけど」
笑いを堪える3人と高橋を苦々しく睨み付けながら
石黒は店内を見回した。

「師匠が今、何をしてるのか気になってね…
おっと、私は今 こういう事をしてますの」

そう言って差し出した名刺には
『石黒音楽事務所社長』の肩書きが印刷されていた。

「…じゃから、なんじゃ?」

「今度、魔界街に事務所を開く事になりましてね、
その挨拶にと、こうして寄ったんですけど…」

石黒の顔が本来の余裕を取り戻し、不適な含み笑いを漏らす。

「随分と小汚い店ですね…売り上げは どの位有りますの?
まぁ、私共の年商はざっと50億は有りますのよ!
ホ〜〜ホッホッホッホッホ!」

石黒の目的は中澤を前にしての、この高笑いをする事だった。


272 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 14:24 ID:kHKIw6yH

「…嫌味を言いに来たのか?」
ウンザリしたように聞く中澤。

「違いますわよ、現実を解からせる為に来ましたの」

「……」

「もう、全てにおいて完全に師匠を超えたという現実をね」


その昔、最悪の性格だった中澤の元で修行した石黒は
いつか中澤を超える事を胸に秘めて修行に明け暮れた。
そして、イジメにも近い修行の中で、中澤の性格までもを受け継いだ石黒は
金の亡者に成り果て、人心をも操る魔法を駆使して今の地位を築いた。
中澤越えを果たしたと確信した石黒は、中澤の居場所を探り出し、
自分との差をハッキリさせる為に、この魔界街に来たのだ。
弟子の高橋を私立のハロー女子中学に通わせず、
辻達が居る公立の朝娘市中学に転校させたのも
弟子の格の違いを解からせる為の嫌味な行為だったのだ。


「…ふん、なんじゃい、わざわざ そんな事を言いに来たのか?…」
ブスッと横を向いて茶をすする中澤は、それでも まだ余裕が有るようだ。

「さて、ワシには、どうでもいい事なんじゃが…
オマエの肩に乗ってるカラスのぅ」

チラリと石黒の使い魔のカラスを見て
ニヤリと不適な笑みを漏らす中澤。

「ワシの事を探りに来た時、ちょこっと細工をした…」

273 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 14:27 ID:kHKIw6yH

「…何を?」
怪訝そうにカラスを見る石黒の表情が固まった。

「…く…」
首に違和感が有った…

触ってみると首に括(くび)れが出来ている。

「間抜けな使い魔にワシの髪の毛を一本付けておいたんじゃ」

「……」

「今、オマエの首を絞めているのは、ワシの髪じゃよ…」

ヒッヒッヒと笑う中澤が、杖を床に打ち付けると
首に食い込んでいる白髪はハラリと解けて床に落ちた。

「まだまだじゃのぅ、ワシを越える事は…」

ゲホゲホと咽(むせ)て、首を擦る石黒は
それでも余裕の表情だ。


274 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 14:38 ID:kHKIw6yH

「流石は私の師匠、器用さだけは今でも健在って所ね、
でも…知ってるよ、もう、飛ぶ事さえも出来ないって事を…
因る年波には勝てないねぇ…
私は老いさらばえていく師匠を この目でジックリと見させてもらうよ」

ハッハッハッハーと勝ち誇る笑いを残して店を出る石黒と高橋…

ちょっぴり深刻な場面に遭遇して、
言葉も無く顔を見合わせる辻、加護、紺野…

中澤の米噛みがピクピクと震えた。

「塩 撒かんかい!塩!」


中澤に言われて外に出た魔女見習い達が見たもの…

それは、アイマスクで顔を隠した石黒と高橋が
杖とホウキに跨り、空高く飛んでいく姿だった。


「と、飛んだのです…」

「なんでやねん!なんでアイツが!」

「…すごい‥本当にいるんだ‥魔女って」

歴然とした自分達との差を見せつけられた3人は
只々、呆然と見送るしかなかった…



275 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/08 14:40 ID:kHKIw6yH
今日はココまでです。続きは明日の予定です。
>>266へい、頑張るでぇ。では。


276 :名無し募集中。。。:03/12/09 20:54 ID:0Hsfdkew
更新乙です。
愛ちゃんがこれだとあややは凄いことに……
続き楽しみにしてます。

277 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/09 21:30 ID:mB6BFxy1

――― 11話 ステーキとアイスクリーム ―――


魔界街には一般市民が近付けない場所がる。
俗にB地区と呼ばれる警察も足を踏み込むのを躊躇する、重犯罪者が住み付き、
魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)する正に異界の地域だ。
(以前、飯田と吉澤が毒猿と死闘を演じた泥水町も、このB地区に属する)

ちなみに、一般人が住むA地区は朝娘市の8割を占め、
(その中でも安倍が住む最も治安が良い地区をS地区と言う)
残りの2割がB地区なのだが、B地区の住人でも
近寄らないのが、B地区の中心に有る僅かな面積の『C地点』
と呼ばれる、瘴気が漂う魔界と繋がる暗黒面である。

街外れに位置するB地区には警察により鉄条網のフェンスが
張り巡らせてあり、犯罪者達を隔離してある。


鈍く光る その鉄条網を道路を隔てた向い側に建つ
貧乏長屋の窓からボウと見る辻希美は、
MAHO堂での高橋愛との出来事にショックを受けて
物思いに耽っている様でいて、実はそうでは無い。

「お腹が空いたのです」

腹ペコなだけである…

両親は共働きで帰宅が遅く、いつも一人で夕食を作って食べる辻だが
今日 帰ってきて冷蔵庫を開けたら中には何も入っていなかったのだ。



278 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/09 21:30 ID:mB6BFxy1

ハロー製薬の下請けの更に下請け会社のライン工場で働く両親の
給料は甚だしく低く、B地区に隣接する 家賃が低い平屋建ての長屋横丁に
住居を構えるが、この家族はそんな境遇にも笑って過ごし、アッケラカンとしたものだ。
そして、辻が魔女見習いになると宣言しても、頑張れと励ましてくれる優しい両親だった。

「うん?」

隣の長屋の建付けの悪いドアがガラガラと音を立てて開けるのが聞こえた。

「久しぶりに帰ってきたのです」

週に一回ぐらいの割合で帰ってくる隣の住人が辻は好きだった。



「飯田さん、飯田さん、のの なのです」

勝手に玄関に入って呼ぶと、飯田圭織がヒョコリと顔を出して
ニーッと笑って手招きした。

「おいで のんちゃん、ご飯食べてないんだろ?」

「なんで分かるのです」

「ふふ、顔に書いてあるよ」

「マジでですか?」

手の甲で顔をゴシゴシと擦る辻を見てケラケラと笑う飯田。



279 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/09 21:31 ID:mB6BFxy1

週に一度しか帰らない飯田の冷蔵庫の冷蔵室には飲料水のペットボトルと
何に使うか分からない薬品類と注射器、湿布の類しか入っておらず、
日持ちのしない食品等は置いてなかった…
が、冷凍室には牛肉の塊とアイスクリームが入っている。

「よし、ステーキとアイスにするか」
腕まくりをする飯田は10キロ以上は有るステーキ肉の塊を
取り出してドンと まな板に乗せた。

「わぁ!ステーキなのです!のの は昨日 タマゴ掛けご飯だけだったのです」

パァッと顔を綻(ほころ)ばせる辻に向かってニッコリと微笑み
飯田は包丁を凍った肉塊に当てるとスッと違和感も無く切り落とした。

「凄いのです、飯田さんは何の仕事してるんですか?」

「ふふふ、秘密だよ」
ウィンクしてみせる飯田は自分の仕事を明かさない。
「それより のんちゃんはご飯を炊いてね」

「あーい」

米櫃(こめびつ)から五合の米を取って炊飯ジャーで炊くと
米の炊ける香りとステーキが焼ける匂いが
台所に漂い、辻のお腹をゴロゴロ鳴らした。



280 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/09 21:32 ID:mB6BFxy1

「はやく、はやく♪」

茶碗を箸でチンチン鳴らして待ちきれない辻の口からは
ヨダレの糸が引いている。

「ヨダレ、垂れてるよ」

食卓にステーキを運んだ飯田がご飯をよそいながら
半笑いで指摘した。

「もう、夜の9時なのです、お腹がペコペコ過ぎなのです」

「ハハ‥じゃあ召し上がれ」

「あーい、頂きますなのです!」

パクリとステーキ肉を一口頬張る辻は満面の笑みを浮かべながら
涙目になっている。

「う、美味過ぎるのです!」

「ハハハ、泣くほど美味しいのかい?良かったねぇ」

「うん!」

辻は一キロ、飯田は2キロものステーキを平らげ、
インスタントの味噌汁を飲んで、お腹を擦りながら一息付いた。




281 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/09 21:37 ID:mB6BFxy1



「あのねあのね…」

ソファーに腰掛け、アイスを食べながら辻の話しを聞く…
前に飯田に会ってから今日までの出来事を
楽しそうに喋る辻の笑顔を見るのが飯田は好きだった。

「そうかい、良かったねぇ」

相槌を打ちながら笑い合う 今の、この時間が飯田には
貴重な癒しのひと時だ…

話し疲れてウトウトとしてきた辻に毛布を掛けて
そっと頭を撫でながら寝かしつけると
「むにゃ、もう食べれないのです…」
と何の夢を見てるのか想像がつく寝言に飯田は苦笑した。

それでも、幸せそうな辻の寝顔を見る飯田の瞳は優しさに溢れている。

「不思議な少女だね…」

辻といると何故か心が和んだ…

それは、毎日の殺伐とした闘いの中でのオアシス…

飯田は辻と話す事で荒(すさ)みつつある心の均等を量っている気がした。




282 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/09 21:37 ID:mB6BFxy1



「ごめんください、希美 おじゃましてませんか?」

迎えに来た母親に手を引かれ、
眠そうに目を擦りながら飯田に手を振る辻を見送る…

こうして、飯田の英気は養われる。

「ハハ、明日も頑張るか…」

もう、何年も続いている ささやかな幸せに、飯田は励まされ続けているのだった…







283 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/09 21:40 ID:mB6BFxy1
今日はココまでです。続きは来週の予定。
>>276
どうもです。ぁゃゃは当分出てきませんが、実力は相当なモンになる予定です。では。


284 :名無し募集中。。。:03/12/10 22:01 ID:Ze78u0eC
おぉ!なんか凄くいい雰囲気。好きですこーいうの。
徐々に接点を見せ始めた娘。たち。続き楽しみにしてまつ。

285 :名無し募集中。。。:03/12/14 11:57 ID:J0iv+8eA
保全

286 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/15 20:57 ID:8lvws+C2

――― 12話 死人返り ―――


「ゲホッ、ゲホッ…」
咳の中に血が混じり、意識が朦朧とする市井紗耶香は、
「死ぬ事だけが生の証」と自分に言い聞かせていた。

裸足に真っ赤なカクテルドレスを着た市井が
見上げる空には月も星も無く、濁った瞳には あの日のように淀んで見える。

後藤と再会した日から、殆ど寝ていない…

眠れなかった…

後藤と再会した日から「死」だけを考えている…

生きる気力は無に帰した…

だから、クスリに手を出した。

違法ドラッグから魔界街特製の魔薬にまで手を出したツケは、
左腕の関節が無残なまでに紫色に腫れ上がった注射痕の傷跡だ。

左手にウィスキーのボトルを持ち、フラフラと歩く先には
朝娘市が事故(自殺)防止の為に建てた高さ5メートル程の壁が
ベルリンの壁の如く永延と続いている。


287 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/15 20:57 ID:8lvws+C2

この壁の向こうには朝娘市を囲む地割れが魔界の口を開けているのだ。

呆然と見上げた後、市井はおもむろにコンクリートの壁に指を食い込ませる。
薬物によって痛みも感じない体は、肉体の限界を超える力を発揮し、
爪が割れ抜けるのも無視して90度の角度の壁を這い上らせた。

ビューッと吹き上げる魔界からの風に髪を靡(なび)かせ
市井は だらしなく視線を落とした。

「私に相応しいドス黒さだな…」
目の前に迫る暗黒色に彩られた地割れの底は勿論見えない。

「…おお!」
強風に煽られ、バランスを崩した市井は地割れに落ちそうになり、
慌てて腰を下ろして苦笑いをした。

「…ハハ、これから死ぬってのにな」

最後にタバコを吸いたくなり、ポケットに手を突っ込むが
取り出したタバコの箱にはタバコが切れて入ってなかった。


288 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/15 20:57 ID:8lvws+C2

「…チッ、最後まで使えねぇ人生だったなぁ」
タバコを吸う代わりに鼻歌を歌った。

歌詞を思い出そうとしても思い出せない、悲しいラブソング…


その鼻歌に共鳴するかのように地割れの底から唄が聞こえた…


「…ハハハ、呼んでるよ‥地獄が私を…」

ふと見上げる空は地獄と同じ漆黒の闇だった…


もう、どうでも良かった…












289 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/15 21:02 ID:8lvws+C2

魔界街B地区に数箇所有る、C地点と呼ばれる僅かな面積の
誰一人として足を踏み込む事の出来ない場所が有る。

魔界と通じると言われる、その中心点から湧き出る瘴気は全てを腐食し、
空気に触れて薄まったソレはB地区を漂う。

犯罪者の巣窟のB地区を警察が隔離する理由がソコに有った。


そのC地点の中心点から瘴気と共に一人の影が湧き出た。


ズルズルと足を引きずりながら歩くソレは体中から瘴気が湧き出る歩く死人…

魔界街で俗に言う『死人返り(しびとがえり)』だった。


地割れに転落したと思われた人間が、ある日瘴気を携えて
ゾンビの如く街を徘徊する…
人々は死人になった理由を探し、噂し、そして忘れる…
この街では死ぬ理由など掃いて捨てる程有るのだから。

ただ一つ判っているのは『死人返り』は死人になった原因に向かい歩く…
自分が死んだ理由を求めさすらう様に目指すのだ。

だが、死人が その場所に辿り着いた事は一度も無い。
A地区に出た途端に警察の火力によって無に帰すからだ。

しかし、今回の『死人返り』は只の死人では無かった。


290 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/15 21:03 ID:8lvws+C2


頭頂から爪先までをも黒い煙のように蟠(わだかま)る瘴気に包まれ、
顔さえも見えない死人は何故か真紅のカクテルドレスを着ていた。

スローモーションのように歩く跡には空気にさえも溶けない真の瘴気が
揺らめく綿毛のように続く。

A地区に侵入してから当たり前の様に武装警察に囲まれ、
放たれた銃火器にも平然と歩みを止めない死人に愕然とする指揮官。

「…幽体だ、銃が効く筈が無い」
射撃隊の一人がボソリと呟いた。

マグナムは勿論、火炎放射器の圧倒的な炎さえも通り抜ける
歩く死人の体は、物理攻撃が効かない 目に見える幽体だったのだ。


街を汚染する瘴気の足跡を残しながら向かう先は朝娘市警察。
其処に続く朝娘市中央通りは警察によって封鎖された。

「この道路は半年は使えなくなるな…」
「おい、目抜き通りだぞ」
「仕方ないだろ…」
別の射撃隊員達がゴクリと唾を飲み込む。
瘴気の毒に汚染された箇所は浄化するのに半年は掛かるのだ。

「専門家はまだか!」
苛立つ警官隊長は空を仰いだ…




291 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/15 21:04 ID:8lvws+C2


「幽霊相手じゃ、私の出る幕は無いよ」

出動命令が出た飯田圭織は現場の隊長に
お手上げだと言わんばかりに肩を竦めて見せる。

「そんな…頼むよ、飯田」

「ハハ‥無理々々」

隊長に縋(すが)り付かれても、腕組みをして苦笑するだけの飯田は
黙って見ているしかなかった。

そこに…

「お主等、どきなしゃれ!」

警官隊と飯田を押し退けて死人の前に立ったのは署長に要請されて出てきた
魔人専門の賞金稼ぎの一人、退魔師の通称『陰陽婆』だ。

「おお、貴女は退魔師の!」

「世辞はよい、それより謝礼はタンマリと頂くぞい」

自分を見限り陰陽婆に擦り寄る隊長を鼻で笑う飯田は
退魔師の技に興味津々の顔付きだ。

「なんじゃ、おぬし‥」
その筋では有名な『魔人ハンター』飯田圭織に一瞥をくれる陰陽婆は
「黙って見てなしゃい」と馬鹿にしたように言い捨てた。


292 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/15 21:05 ID:8lvws+C2

「ほう、見せてもらうよ」
ニヤける飯田の唇の端がピクリと引きつる。

「…ふん」
陰陽婆は両手を広げて気を溜め、パンッと目の前で指印を結んだ。

「臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・行」
背骨の曲がった巫女姿の陰陽婆は九字を切り、
密教の呪法『死人送り』を唱えながら破邪の護符を死人の額に貼り付けた。

「キエーー!悪霊退散!!」

ドサリと崩れ落ちる…

「…なっ!!」
愕然と見守るギャラリー。

護符を貼り付けた瞬間、言葉も無く骨と皮だけを残して朽ち果て、
冥府に送られたのは陰陽婆の方だった。

骨の屍と化した陰陽婆を瘴気が包み込み、死人が歩き出すと
その骨は砂の様に崩れた。

「こりゃ、ヤバイかも…」
流石の飯田も深刻に為らざるを得なかった。

「な、なんて事だ…誰かアレを止める事は出来ないのか!」
警官隊長は歩みを止めない『死人返り』を、只 呆然と見守るしかなかった。




293 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/15 21:09 ID:8lvws+C2
今日はココまでです。次回は未定です。
>>284
おまたせしてスマソ、ぼちぼちとやっていきますので、ヨロスコ。では。


294 :名無し募集中。。。:03/12/16 21:13 ID:5LaEdqL1
( ^▽^)<ドキドキ

295 :名無し募集中。。。:03/12/20 20:01 ID:9z+8cenu
(;^▽^)<ハナゲタン・・・ハァハァ

296 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:16 ID:X+rgpDm/

――― 13話 魔女の条件 ―――


「なんで愛ちゃんが飛べて、のの達が飛べないのです」
「素質が違うんじゃないべか?」
「ああ、あっちは売り出し中のアイドルだしな」
「納得できへんわ!」
「私はホウキさえ貰ってませんよ」

MAHO堂で議論を交わす魔女見習い達は
テレビで生中継されてる『死人返り』の事件には無関心のようだ。
自分達が何故 飛べないのかを一生懸命解明しようと必死に話し合っている。

中澤は我関せずと、椅子に深々と腰掛けタバコをふかしてテレビを見ていた。

「もう、その娘に直接聞くしかないべ?」
「安倍さんは怖がりを治せば飛べるから余裕なのです」
「そやで、安倍さんは余裕持ち過ぎやで」
「お前等、なんで なっちを攻めるんだよ」
「私はホウキさえ貰ってません!」

「…ハ、ハハ‥」
溜め息を付く安倍は中澤に助けを求めて視線を送った。

「ふん、お前等 仕事もせんでウルサイのぅ」

「お客さん、いないのです」
「そやで…って、そう言えば 誰もおらんな」
「そうだな、何時もは忙しい時間なのに…」
「私はホウキさえ…」


297 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:18 ID:X+rgpDm/
「ねぇ、裕子婆ちゃん、教えて…愛ちゃんって娘が飛べる理由」
安倍の訴えるような潤んだ瞳に中澤は…

「…分かったわい」
安倍に懇願されて中澤は溜め息混じりに話し出した。

「お前達の目標は何じゃ?」

「…それは、飛ぶ事かな」
矢口の答えに皆頷く。

「それをクリアしたら、どうするんじゃ?」
小馬鹿にしたように聞く中澤。

「それは…」
全員、お互いの顔を見合わせて答えに窮した。

フンと鼻で笑う中澤はタバコを深く吸い込んで紫煙を吐き出す。

「それでは質問を変えるぞい、お前達は目標の為に
他人が不幸になっても構わんか?」

「…え?」
皆ポカンと口を開けた。

「自分の為に人が死んでも構わんかと聞いておる」

「…‥」
全員無言でブンブンと首を振った。

「出来んじゃろ?じゃが、あの娘には それが出来る、
そこがお前達が魔女に為れない理由じゃ」

298 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:19 ID:X+rgpDm/

「どういう事なのです?」

辻の質問に「やれやれ‥」とタバコを揉み消しつつ、
自分の私見じゃがと断りを入れて中澤は続けた。

「自分の目的の為には人が死んでも構わないと言う心構えが魔を呼び込む…
それが魔術じゃ、あの娘はお前達とは違って飛ぶ事が目標なのでは無い、
どんな目的が有るのかは知らんが、あの娘が飛ぶ事が出来たのは極めんとする魔道の
道程に有る通過点にすぎないんじゃ」

「よく分からないのです」
「…う〜ん、難しいわ」
それでもキョトンとする辻と唸る加護。

「つまり、悪い子じゃないと魔女になれないと言う事だよ」
「ああ、成る程なのです」
邪心も無い自分達が飛ぶという道程には、時間が掛かると理解して
声を落とす矢口の解説に、成る程と頷く2人。

「そういう事じゃ…じゃがな」
ニヤリと笑う中澤はテレビに視線を移して、皆に見るように促した。

テレビの生中継は陰陽婆の『死人送り』が失敗して
砂のように崩れ落ちる姿がビデオで繰り返し映し出されていた。

「げげっ!死んだのです!」
「大変な事になってるやん!」
「なに?この幽霊みたいなのは!?」

テレビに釘付けになる魔女見習い達に向かって
中澤は話しを続けた。

299 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:19 ID:X+rgpDm/

「石黒やワシ、ましてや あの娘には絶対出来ない…
いや、魔界街でもお前達だけにしか出来ない魔法がある」

そう言いながら席を立つ中澤。

「…え?」

「ホウキを持って、着いて来るんじゃ」

疑問を顔に表しながらも、中澤を追って店を出る魔女見習い達…

「私、ホウキ持ってませんよ」
「構わんわい」

紺野はMAHO堂に鍵を掛けて、CRUISEの看板を立てた…















300 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:25 ID:X+rgpDm/

ズルズルと足を引きずりながらスローモーションのように歩く
瘴気を身にまとった『死人返り』は、目指す目標であろう
朝娘市警察本署までの距離200メートルの所まで迫っていた。
辿り着いたらどんな事象が起こるかも分からない今回の事件に
現場の隊長は頭を抱えている。

「俺はどうすればいいんだ!」
署長も逃げの算段を図っていて、全ての責任を警官隊長に押し付けていた。

「どうしようも無いんじゃない?」
諦めたのか、飯田もタバコをふかして傍観の構えだ。

そこに…

「ああ!飯田さんなのです!」
「うん?」
後ろから声が聞こえて振り返ると、辻とその仲間達がホウキを持って立っていた。

「のんちゃん、どうしたの?」
チョコチョコと駆け寄る辻の頭を撫でながら聞いた。

「さぁ?よく分からないのです、それより飯田さんは刑事なのですか?」
「ハハ…バレたか」
別に隠していた訳ではない、
只、話すタイミングを逃して今までズルズルになっていただけだ。

「危なくなったら逃げるんだよ」
「アーイ」
辻の出現に少し驚いたが、見物にでも来たのだろうと思っていると
その後ろから杖を持つ腰の曲がった黒尽くめの老婆が
「どかんかい役立たず共」と、警官隊を押し退けて辻達の前に出てきた。

301 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:26 ID:X+rgpDm/

「だ、誰だ?アンタは?」
警官隊長は中澤に対して不審の目を向ける。

「ホッホッホ、おぬしの首、繋がりそうじゃな」
「え?」
中澤の言葉に、まさか、と思い口元が緩む隊長。

「あの妖物を退治すると言っておるんじゃ」
「えー!」
やっぱり、と驚き、口が笑いの形になる隊長。

「退治するのは、その子供達じゃがな」
「工エエェェェ、、」
嘘だろう? と口をへの字にして落胆する隊長。

「謝礼は師匠のワシがタンマリと貰うがのぅ、ホッホッホ」
「…ほ、本当に出来るのか?」
それでも、縋(すが)るしかなかった。

金にガメツイのは、どの世の婆も一緒だ。
中澤は子供達と聞いて唖然とする警官隊長を無視して、
ホウキを持つ手が震えてビビる弟子達を死人を囲むように立たせた。


302 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:27 ID:X+rgpDm/

「のんちゃん!」
緊張の面持ちでホウキを持つ辻に飯田が心配して声を掛ける。

それでも辻は、飯田の心配を他所に手を振って笑う。

「…のんちゃん…危険だって分かってるのか?」

「おぬし、辻の知り合いか?」
胸に手を当ててハラハラしながら頷く飯田に、
黙って見ておれ、と余裕の中澤は紺野にチラリと視線を移した。

「私は…?」
「お前には最後にやってもらう事が有る、この紙に念を込めながら魔法陣を描くのじゃ」
中澤の横に立つ紺野に白い紙と筆を渡す。

「え…?」
「ふん…お前には本当の意味での魔道士になって貰うつもりじゃ、
じゃから、ホウキなどという玩具(おもちゃ)はやらん、覚悟せい」
中澤は紺野にホウキを渡さない理由を告げた。

「…魔道士って、突然すぎます」

「ワシは前から考えておった、それより今は目の前の事が先決じゃ!」
眼前に広がる光景に、中澤は顎をしゃくって見せた。



303 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:27 ID:X+rgpDm/

「裕子婆ちゃん!どうすんだよ!?」
『死人返り』を囲んだのはいいが、どうすれば良いのか解からず、
矢口が堪らず声を出す。

「お前達の持ってる、そのホウキで妖物を扇ぐんじゃ!やれっ!」

中澤の声に反応したように、其々の使い魔が4人の頭にチョコンと乗った。

「わ、分かったのです!」
「おっしゃあ!」
「やったるでぇ!」
「や、やるべさ!」

訳も分からず連れて来られたが、その訳がようやく解かり、
覚悟を決めた4人は魔法のホウキを死人に向かって振った。

---ブオォォオオ!---

吹いた風は瘴気を霧散して浄化する…

4本のホウキが起こした風は瘴気を纏(まと)った顔さえも見えない死人に吹きすさび、
黒い煙のような瘴気を払い、真っ赤なカクテルドレスに身を包んだ死人の素顔を晒した。

「げげげ!」
「うぎゃー!」
「わぁぁあ!」
「ひぃぃいい!」

生前の面影を僅かに残している、ゾンビのような無残に爛れた死人の顔に恐怖し、
ペタリと腰が抜ける魔女見習い達…
だが、死人の歩みは止まっていた。

304 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:36 ID:X+rgpDm/

「何やっとるんじゃ!バカモン!風を送り続けるんじゃ!」

中澤の怒声にヨタヨタと立ち上がり、それでもホウキを振る4人。

「怖いのです!」
「バケモンだよ!」
「あかん、これは あかんでぇ!」
「夢に出るべさ!」

怖さからか、バタバタと振るホウキの風は勢いを増し
死人の動きを完全に止めた。

「これが、お前達にしか出来ない魔法じゃ!
邪念の無いお前達のホウキは魔を払う破邪の風を起こせるのじゃ!
高橋とか言う、あの魔女見習いには到底出来ない芸当よ!
分かったら張り切ってやるんじゃ!」

中澤の言葉にホウキを振る全員が顔を見合わせて頷く。

「よっしゃー!やったるでぇ!!」
ほんの少し、魔女見習い達の顔付きが精悍になった。

魔女として、ちょっぴり希望が沸いたのだ。

「さて、紺野よ、次はお前の出番じゃ…その紙を杭状に丸めるんじゃ」
「…はい」
紺野は自分が描いた魔法陣の紙を言われた通りに丸めると
中澤が自分の杖で、その紙をチョコンと突いた。


305 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:37 ID:X+rgpDm/
「…こ、これは」

「それで、あの妖物の額を突くんじゃ」

紺野が手に持つソレは、白い杭に変化していた…






魔女見習い達を固唾を呑んで見守る警官隊員達の中に
愕然と膝を突いて震える巡査がいた。

「…い‥市井ちゃん…」

乾いた声を振り絞るように出したのは後藤真希だった。

見る影も無い、魔物と化した死人の目には、
この世に対する恨みの闇の光が宿っている。

「…何でだよぉ」

後藤の挙動に気付いた隊員が震える後藤を見た。

「…何でなんだよう!!」

立ち上がった後藤の噛み締める歯はガチガチと鳴っていた。

「ふざけるなぁぁあ!!さやかぁぁああ!!!」

雄叫びを上げる後藤の勢いに驚いた、周りにいた隊員達は尻餅を付いた。

306 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:42 ID:X+rgpDm/







「よし、行くんじゃ」

「は…はい」

中澤に促され、白い杭をギュッと握り締めた紺野が決意を固めて
踏み出そうとするのを誰かが腕を取って止めた。

「なんじゃ?お前は?」

「あの化け物の知り合いだ…」

中澤を見ずに死人を凝視する後藤の瞳からは涙が流れている。

「…い、痛い、離して!」
腕を渾身の力で腕を握られていた紺野が身を捻って振りほどく。

「どうするつもりじゃ?」

「貴女達がやろうとしている事を私にやらせてくれ…」

「無理じゃ」
「何故!」
即答する中澤と納得しない後藤。


307 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:43 ID:X+rgpDm/

「このワシの弟子は瘴気では死なん体質じゃ、
それでも浴びれば暫らくは毒によって苦しむ…」

瘴気の事を初めて聞いて「エッ?」と引く紺野の顔からサーッと血の気が失せる。

「じゃが、お前は死ぬ」

「…構わない」

「……」

「やらせてくれ…」

頭を下げる後藤の手に、紺野は そっと白い杭を握らせた。

「それを貴女のお知り合いの額に突き刺すんです」

「…ありがとう」

杭をギュッと握る後藤は無言で死人と化した市井に近付く…



308 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:46 ID:X+rgpDm/

「紺野…お前、あ奴は死ぬぞ」
何をしたのか分かっているのか、と中澤の言葉は攻めていた。

「……」

「紺野!」

「あの人は死にません…」
後藤を見詰める紺野はポツリと呟いた。

「…?」

「想いが伝わりました…」
後藤に掴まれた腕をそっと擦る紺野の額には珠のような汗が浮いている。

後藤を見詰める紺野は、瘴気の毒に怖気付いた訳ではなかった…

「中澤さん…私、賭けてみます…私が魔道士になれるかを」

「……そうか」

その言葉に何を感じたのか、中澤はそれ以上何も言わなかった…







309 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:47 ID:X+rgpDm/

4人の魔女見習い達が「??」とする中、
後藤は死人市井に徐(おもむろ)に近付いた。

「…市井ちゃん」

呼んでも答えるはずの無い死人の濁った目と
視線が合った瞬間、市井が何かの感情を持ったように後藤には見えた。

「苦しかったのかい…?」

後藤は魔法の杭を震える両手で握って大きく振り上げた。

「ぅ、、ぅぅうう、、、」

どちらが発したのかも分からない、嗚咽とも取れない声が漏れる…

「う、うわあぁぁあぁああ!!!」

叫びと同時に振り下ろした白い杭が市井の額に吸い込まれた。
いや、市井が杭に吸い込まれたのか…

瞬間的に死人は呆気なく消えたのだ。

前のめりに倒れる後藤を残して…

紙に戻った杭は風に舞い、ヒラヒラと紺野の手に戻った。





310 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:49 ID:X+rgpDm/
「やったー!やったよ!飯田!俺の首は繋がったよ!」
警官隊長は嬉しさの余り飯田に抱きつき、
怒った飯田の顔面パンチを食らう羽目になり、
大任を終えた辻達も、目の前で倒れている後藤の事も忘れ、
バンザーイと手を上げて喜んだ。

ギャラリーの歓声に包まれる中、
中澤は倒れている後藤に近付き、そっと手を置いた。

「…ふむ」

後藤の体を触った中澤は紺野を手招きして呼び寄せた。

「瘴気に汚染されとる…じゃが、死んではいない」

「…そうですか」
ホッとした様子の紺野は胸に手を当てて安堵の溜め息を付く。

「で?…魔道士はどうするんじゃ?」
勿論なるんじゃろう、と当たり前の様に聞いた中澤だが…

「…考えさせて下さい」
眼鏡をキラリと光らせた紺野は手に戻った魔法陣の紙を中澤に返した。

「な…!」

紺野はペロリと舌を出してニッコリと笑う。

「だって、私もホウキに乗って空を飛びたいですから」

夕日の赤が空を染め始めた魔界街メインストリートを覆う歓声の中、
意識の無い後藤を運ぶ、救急隊のサイレンの音だけが空しく響いた…

311 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:50 ID:X+rgpDm/






その日の夕方には魔女見習い達はすっかり有名人になっていた。
『死人返り』の残したメインストリートに残る、黒い煙のような瘴気の塊を
魔法のホウキで全て浄化掃除をしたのだ。
ホウキで掃くと瘴気は霧散して毒性さえも跡形も無く消えた。

ずうっと飛ぶ事を夢見て、無心で念じ通した彼女達のホウキは、
何時の間にか邪悪な魔を浄化する魔力を持つ魔法のホウキになっていたのだ。

「わぁぁ!凄いのです!」
「綺麗サッパリと無くなるなぁ」
「これで、有名人になれるやんか」
「掃除って、気持ち良いべさ!」

驚く報道メディアは掃除作業をテレビで中継し、得意気にカメラに納まった安倍は、
魔女見習いの事を家族に内緒にしてたのを思い出して青くなったが、後の祭りだった。

一人で帰宅して怒られるのが怖くなった安倍は矢口と一緒に帰ったが
訝しがる父親に一生懸命(魔女になって良い事ばかり)説明した甲斐が有って
怒られる事も無く、矢口も一緒に夕食を貰い一安心だ。


312 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:53 ID:X+rgpDm/

「なに〜?その猫、かわいい!!」
「へへへ、いいでしょ、何でも言う事聞くんだよ」

使い魔の『ヤグ』と『まろん』を見た麻美は自分も魔女になると
駄々をこねたが、これ以上家族に魔女が出来るのを恐れた
父親が絶対駄目だと反対して、麻美の唇を尖らせた。

慌てふためく父親を見て、顔を見合わせ吹き出す安倍と矢口に
釣られて笑い出す母親と妹…
ばつが悪そうに顔を赤くして照れ笑いする父親も、何時しか大声で笑った。

今日は良い事をしたんだ、と実感した安倍は
今まで家族に黙っていた胸のつっかえが取れて心から笑った…








313 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:54 ID:X+rgpDm/

一方、辻と加護と紺野は飯田刑事のオゴリで街一番の高級レストランで
ディナーをご馳走になり、初めて見る豪華な料理に目を輝かせていた。

「高そうな料理なのです」
ゴクリと唾を飲み込む辻は初めてのレストランにソワソワしている。

「ん〜、4人で50万ぐらいかな…」
あっさりと金額を言う飯田は腕捲りをして食べる態勢に入った。

「げっ!ご‥50万円!!えっらい御馳走やんか!」
値段で料理の価値を決める加護は、まだまだ お子ちゃまの域を出ていない。

「でも、いいんでしょうか?…そんな高い料理…」
チラリと飯田を見る紺野の目は、大丈夫なの?と聞いているようだ。

「ハハハ、私の金じゃないから大丈夫!」
支払いは勿論 朝娘市警察だから、財布の痛まない飯田は豪快だった。

「さぁ!食べようぜ!足らなかったらジャンジャン注文していいからな!」

「わぁ!すごいのです!いただきますなのです!」
「よっしゃあ!食ったるでぇ!」
「…いただきます」

億単位の損害が出る所をチャラにした魔女見習い達の働きを考えると
50万円の出費は安過ぎる位なのだが、嬉しそうに食べる辻達には丁度良いのかもしれない。

無邪気な3人を見詰める飯田の瞳が、そう語っているようだった…




314 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:55 ID:X+rgpDm/
今日はココまでです。次回も未定ってことです。
>>295いますよ。がんばってますよ。では。ばいなら。


315 :名無し募集中。。。:03/12/20 22:42 ID:Vv9IBP2z
>>314
更新ご苦労様です
>>299のはCRUISEじゃなくてCIOSEじゃ…

316 :名無し募集中。。。:03/12/20 23:55 ID:0d/XPDXg
>>315 CLOSE

317 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/21 02:08 ID:klJ5NMNV
ありゃ?クローズをクルーズって変換しちゃった。
全然気付きませんでした。許してね。

318 :名無し:03/12/21 13:31 ID:Dptu5HEB
安倍の使い魔は確かメロンじゃ・・・・

319 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/21 17:20 ID:klJ5NMNV
>>318
しまった!これまた許してください。
でも、指摘してくれる方が複数居るって事は、呼んでくれる人が案外多いんだなぁ思い、
ちょっぴり一安心です。感謝、感謝っす。

320 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/21 17:21 ID:klJ5NMNV
呼んでくれる×
読んでくれる○
…俺って…_| ̄|○

321 :名無し募集中。。。 :03/12/21 20:53 ID:LSTUnXAk
ハナゲ・・・・気にするな


例え英語ができなくても

あと、『まろん』と『メロン』は自分も気になりますた・・・・

でもガンガレ


更新楽しみにしてます


322 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:37 ID:21V4q+Ap

――― 14話 魔人KEI ―――



魔界街に『人造舎』という人材派遣会社が有る。
どのような人材を派遣するかは、派遣を要請した人物の
住所や仕事は勿論、守秘義務を守れるか、何故要請するのか等
背後関係を徹底的に調べられる事からも解かる様に、
普通の人材を派遣する訳では勿論無い。

警察さえも中々近付かない、B地区に所在地が有る『人造舎』は
B地区内の住所をも転々と変えるので警察の力が及ぶのが不可能に近く、
そして、苦々しくも派遣会社の体裁を取っている この会社は、
魔界の住人を高額な金額で貸し出す、知る人ぞ知る魔界街の負の異産物だった。


その暗黒社会の雄、『人造舎』から派遣された、
刃物のような闘気に身を包んだ、文字通りの暗黒色の女が
『石黒音楽事務所』の社長室の重厚な革張りのソファに腰掛けていた。

用件は二つ、一つはドル箱スターの松浦亜弥の秘密を必要に狙う
一人のパパラッチの殺害。
もう一つは、石黒の商法を真似て魔界街進出を狙う
ライバル芸能事務所の社長の暗殺だった。

「…何故、自分で殺らないんだ?」
体にピッタリと張り付くラバー製の上下の黒いボディスーツに身を包んだ妖艶な魔人は、
石黒と対峙して直ぐに、魔女の正体を見破り疑問を口にした。

「殺しが本業では無いからね…それに血は見るのも嫌なのよ」
そう言いながら石黒は2枚の写真を差し出した。

323 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:38 ID:21V4q+Ap

「写真の裏にソイツ等の住所が書いて有るわ、
今はこの魔界街に住所を移して住んでいる…殺るのは簡単でしょ?」

石黒には、パパラッチを使って松浦を追い落す、
ライバル芸能事務所社長の歪んだ笑いが見えていた。


---パパラッチと芸能事務所社長の2人は組んでいる---


そう結論付けた石黒の出した決断は、邪魔者をこの世から消す事だった。

「殺しの確認はどうする?証拠は残さないよ」
写真を胸元に入れて立ち上がりながら聞く魔人。

「信用してるわ…でも、パパラッチの方は路上にでも捨てて置いて、
新聞を読んで溜飲を下げたいから」
散々追い掛け回され、腸(はらわた)が煮えくり返っている石黒は
変態写真屋を憎んでいた。

「…分かった」
そう言い残して、妖艶な女魔人は静かにドアを閉めて石黒音楽事務所を後にした。










324 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:39 ID:21V4q+Ap






「証拠を残さない殺し屋が、どう言う事だ?」

異様な死体発見の報に呼び出された飯田圭織は
その殺害方法に見覚えが有った。

未明に路上で発見された死体には血の跡も無い…
ただ左胸には綺麗な穴がポッカリと開いていた。

---心臓だけを抜き取る暗殺者…確か名前は…KEI---

「…害者は?」
死体の胸に開いた穴を無表情に見ながら、捜査官に聞く。

「はい、田代まさしと言う名前のフリーのカメラマンです、
最近、朝娘市に住所を移してます」

「住所を移した理由は?」

「志村と言う芸能事務所の社長からの誘いのようです」

「仕事が早いな…詳しく聞こうか」
フッと笑った飯田はタバコを取り出し火を点けた…




325 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:40 ID:21V4q+Ap
殺された田代の背後関係は数時間で調べ上げられ、
暗殺者を使う動機と資金を持つ人物は特定されている。

「松浦亜弥の事務所か…難しいな」

短時間でココまで解かったのには理由が有る。
日本の法律では非合法とされる捜査方法が許される
この街の法律によって、朝娘市警察の調査効率は日本の警察の比では無い。

そして、捜査が これ以上 進展しない事も事実のようだ。
魔界街最高実力者の つんく のお気に入り、つまり御墨付きを貰った事務所は
警察の権力を行使できる範囲を超えていた。

「だが、尻尾は掴んだ…」

「ち、ちょっと、飯田刑事、相手は松浦の事務所ですよ」
不適に言う飯田に 少し慌てた捜査官が、相手が悪いと宥(なだ)めに掛かった。

「勘違いしないで…松浦の事務所なんて興味は無いよ」

飯田圭織は『魔人ハンター』の異名を持つ孤高の刑事(デカ)…

目的の対象は石黒音楽時事務所などでは勿論無い。

「私の仕事は魔人を殺す、それだけだよ」

ニヤリと笑う飯田は、そのまま踵を返し現場を後にした…






326 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:48 ID:21V4q+Ap

朝娘市警察病院…

司法解剖を待つ田代まさしの遺体が横たわる手術室に
一人の女性がドアを開けて、堂々と忍び込んだ。

『スナックみちよ』のママ、平家みちよ は解剖前の
死体の胸に開いた穴に無造作に手を入れて10秒程瞑想する。
その短い数秒の内に額からドッと汗が吹き出た。

田代の体に残された暗殺者の殺意と思考…

命を持たぬ対象物(死体も含まれる)に対しては、
命を削る程の精神力の集中を必要とする、
平家のサイコメトラーとしての能力の秘密は飯田でさえ知る所ではない。

そして、極(ごく)限られた特定の対象物
(今回の場合、死亡した人物に残された殺人者の思考の痕跡)
を探る事によって確実に平家の寿命は縮まる。


※ただし、生きている人間だったら寿命を削る程ではない。
  対象とする人物に触って精神集中するだけで、
  その人間の情報が読み取れるのだ。


「…やっぱり、死体を探るのはキツいわ」
フウと溜め息を一つ付いて 手の甲で額の汗を拭うと、
何事も無かったかのように手術室を出た。


327 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:48 ID:21V4q+Ap

「…早かったね」
命懸けの能力を駆使した事を知らない飯田は ニコやかに
ドアの前で腕を組み、壁に寄り掛かって平家を待っていた。

「次のターゲットの名前と殺る日が分かったわよ」
命の灯火の代償の答えは、それとは似つかわしく無い曖昧な物だ。
しかし、死体から得られる情報は限られている。
それが限界だった。

「サンキュ、で、犯人はやっぱり?」
それでも、飯田には充分な情報だ。

「ええ、貴女の予想通り『KEI』の名前の暗殺者よ」

白い歯を見せてニーッと笑う飯田。

「でも、その前に…」
ニッコリと笑って右手を差し出す平家みちよ。

「へいへい…出張費込みだったね」

飯田が投げた、命の代償の分厚い封筒が
放物線を描いて平家の右手の平に吸い込まれた…









328 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:53 ID:21V4q+Ap

「お昼休みは終わりましたわよ…」

授業をサボって屋上の手摺りに寄り掛かりながらタバコを咥える吉澤は
呆とコバルト色の空を見上げていた。

「それと、タバコはイケませんわ」

「…ほっとけ」

隣に来て 同じ様に手摺りに もたれる藤本の顔を見る訳でもなく、
空に溶ける紫煙を見詰める吉澤は、本当にツレない男だ。

「本当に空が好きなのですね…」
チラリと見た、吉澤の横顔に自分の鼓動が高鳴るのを感じた。

「…お前も 見上げてみろよ、吸い込まれそうになるぜ」
タバコを手摺りに擦り付けて消す、不精な態度もサマになる。

「う、うん‥」

藤本は風がそよぐ、清々しい青空を見上げた。

フワリと浮かぶ白い雲が時の遅流を物語っているようで
いつも尖(とん)がっている藤本の心をゆっくりと癒すような気がした。

爽やかな風に柔らかな髪を靡(なび)かせて、
空を見上げる藤本の顔は、とても涼し気だ。


329 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:54 ID:21V4q+Ap

フと気付くと、吉澤が空を見詰める藤本の顔を横目で見詰めている。

「…な、何ですの?」

ドキリとする藤本を見る吉澤は薄く微笑む。

「お前も そんな顔をするんだな…」

「…え?」

「ちょっと、ドキリとしたぜ」

「…」

藤本はカーッと血が上り、顔が真っ赤になるのが自分でも分かり…

吉澤は それ以上 何も言わず、また空を見上げ、タバコを咥えた。


キューッと胸が締め付けられる感覚に、よろめきそうになるのを隠して、
吉澤と同じ様に空を見詰めた藤本の膝は小刻みに笑っている。

涙が出そうになって、必死に我慢した。

何故、我慢するのか解からない…

解からないが、抱き付きたくなる衝動を抑えるのが精一杯だった…





330 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:55 ID:21V4q+Ap





明かりを消した自室に、窓から差し込む月明かりが
手に持つ細い鎖に反射してキラキラと光らせる。

藤本は今まで渡しそびれていた、極上欧州旅行の時に買った
お土産のペンダントを見詰めていた。

家に帰ってからも胸の鼓動は収まっていない。


どうしても今日渡したい…


視線の先には、今まで一度も その番号に掛けた事が無い
携帯電話がベッドの上に転がっていた。


その携帯電話を見詰めていたのは、どのくらいの時間だろう…
気付いたら夜の0時を回りそうだった。


藤本は携帯を握り締めて、生まれて初めて一等地に有る豪邸を一人で抜け出した。
セーラー服の首には高価なペンダントが揺れている。

自分で外して吉澤にの首に掛けるつもりだった。




331 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 18:59 ID:21V4q+Ap


走って辿り着いたのは高校の外れに有る小さな喫茶店。

吉澤の自宅の場所を知らない藤本は、
その店に吉澤を呼び出そうと携帯を取り出した。


「携帯は外で掛けてね…」

深夜でも開店してる、コーヒーの香りが立ち込める小さな店の
優しそうな女性店主は、癒しのBGMと静かな空気をこよなく愛している。


「わかりましたわ」

肩を竦めながら外に出て、登録している番号を初めて押した。

ドクドクと心臓が高鳴っているのが自分でも分かったが
何故か冷静になれた気がする。

ヒンヤリとした深夜の外の空気と、決心した勇気が自分を取り戻させた。


332 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 19:00 ID:21V4q+Ap

プルルルル、、、

なかなか出ない相手は、寝ているのかもしれない…


10秒…20秒…
諦めかけて切ろうとした時、ピッと繋がる音がした。


「…あ、あの」
怯えた子猫のように、出た声はか細い声だ。
藤本の『冷静になった気がした』のは文字通り『気がした』だけだった。
ドクンドクンと聞こえる心臓の鼓動は止みそうも無い…
だが、頭に血が上ってボウとなりそうな意識の中で聞こえてきた
吉澤の声は、寝惚けた 不機嫌そうなソレだ。


『ンァ…誰だ?オマエ?』

「ま、まぁ!誰だ?って、誰に言ってるんですの!」
自分が必死な思いで電話してるのに その態度はなんだ、
と癇癪(かんしゃく)を起こした藤本は何時もの調子に戻った。

『……な、なんの用だ?』
それに気付いた吉澤の声も動揺しているように聞こえた。


333 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 19:01 ID:21V4q+Ap

「え?…あ、あの…」
用事…それを伝えるのが今一番必要な勇気だ。

『…用が無いなら、切るぜ』

「あ、有りますわ…」

『……』

「…あ、貴方に‥会いたいの…」

『…』

「…今すぐ…」

最後の言葉は消え入りそうに小さな声だった…





「おいおい、随分と おしとやか…」

言い掛けた吉澤が言葉を止めた。

「…おい!」

受話器の向こうから聞こえたのは明らかに藤本の悲鳴だった…




334 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/22 19:04 ID:21V4q+Ap
今日はココまでです。次回は来週になる予定です。
>>321
気にしてねえっちゅうの!w
でもガンガル
             では。

335 :名無し募集中。。。:03/12/26 21:06 ID:dKytrg6e
( ^▽^)<ドキドキ ホゼホゼ


336 :名無し募集中。。。:03/12/27 01:15 ID:4UYkEEpr
続き気になるっす

337 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:22 ID:IrdKMuVm

高級クラブから一人で出て来た、千鳥足でふらつく志村けん社長を
遠くから双眼鏡で見張る飯田圭織は、今日この時間に
『KEI』の名を持つ魔人が志村を襲う事を確信している。

平家の情報は信頼に足りるのだ。

飯田の仕事は志村の護衛ではない。
志村を殺害する暗殺者を殺す…
だから、志村を泳がせているのだ。

人通りの無い路地に入った、ほろ良い気分の志村は
電柱に向かってチャックを下ろした。

路地の奥からスーッと湧き出る黒い影…

ジョボジョボと長い用足しに ホッとした顔の志村に近付く、
体にフィットした黒ラバー製のボディスーツの女性のシルエット。

音も無く近付く、その女を確認した飯田は 双眼鏡を投げ捨て
道路を横切り、ダッシュしながら志村に向かって叫んだ。

「志村ぁああ!後ろぉぉぉおお!!」

キョトンとトボケた顔の志村は、後ろを向く間も無く崩れ落ちた。

自身の血の海に崩れた志村の後ろに立っているのは、
飯田が探していた『KEI』の名前の暗殺者…

妖艶な魔人の右手には、志村の心臓が握られている。


338 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:22 ID:IrdKMuVm

---ザン!---

路面の砂を巻き上げ、走り寄った飯田が
止まった場所はKEIの正面3メートル…

「…見つけたよ」

飯田の唇の両端がキューッと吊り上がる。

吊り上がったのは飯田の唇だけではない、
ブシュッと右手の心臓を握り潰したKEIの笑みも同じだ。

その右手がビキビキと音を立てて禍々しく鉤状に曲がる…

「それで心臓を抜くのかい?」
飯田の体から揺らめくオーラが立ち込め、
2人の間の空間が歪む。

「一応聞くが、アンタ…誰?」
右手から鋭角な闘気を発しながら素性を聞くKEIは、
飯田が胸元から取り出した警察手帳を見て辺りの気配を探った。

「安心しな、私一人だ」

「…じゃあ、アンタを殺しても誰にも知られない?」

「そう言う事だ」

飯田が言い終わると同時にKEIの右手が、滑るように飯田の左胸に吸い込まれた。
虚を付かれて、一瞬 前のめりになる飯田。


339 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:23 ID:IrdKMuVm

しかし、愕然としたのはKEIの方だ。

そのまま飯田の心臓を抜き取る筈のKEIの右手は止まっている。

「…甘いな」
唇の端からツーッと一筋の血を垂らしながら、飯田が歯を見せてニヤリと笑う。

超人の大胸筋は鋼の力でKEIの魔指を締め付け
あと数ミリで心臓に達する指をピタリと止めたのだ。

「ぬ、抜け…」

万力のような筋肉で締め付けられ、指が抜けないKEIは
腰を低く溜める飯田の拳が消えるのを見た。

---パンッ!---

刹那の正拳はKEIの左胸に綺麗に叩き込まれ、何かを破裂させる音を響かせた。

それは、ゲフッと鮮血を撒き散らす魔人の心臓が破裂した快音…

「…ぁぁああ…」
崩れ落ちるKEIの顔面に新たに叩き込まれた剛拳は妖艶な顔の形を破壊し、
十数メートルも体を回転させながら吹き飛ばして、路上にゴロゴロと横転させた。



340 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:24 ID:IrdKMuVm

「…うん?」
ズカズカと大股で歩み寄る飯田が歩を止める。

KEIの震える指が腰のポケットから注射器を取り出し、
それを自身の胸に注すのが見えたからだ。

そのまま大の字になって横たわるKEIは息をしていない、
だが、飯田は腕を組み様子を伺う。

KEIが最後に打った注射によって起こるであろう出来事に興味が沸いたのだ。

「…ほう」

ドクンとKEIの胸が波打った…
瞬間KEIは立ち上がり脱兎の如く逃げ出した。



KEIの打った注射の中身は即効性の魔薬だ。
破裂した筈の心臓は急激に鼓動し、全身の血が流れ出るまで心停止はしない。

吐血を繰り返しながら走るKEIは、持って後30分ぐらいだと思った。

それまでに…

風を切り裂く音に振り返ると、飯田が猛烈な勢いで迫って来る。

---やばい!---

思うと同時に、目の端に人間の姿が映った…


341 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:34 ID:IrdKMuVm






「貴様ぁあ!!」
飯田は止(とど)めを差さなかった事を後悔した。


「動けば潰す…」
KEIが右手に持っているのはドクンドクンと脈打つ心臓…
先程の志村とは明らかに違う方法で抜き取ったと分かったのは
持っている心臓が動いているのと、KEIの足元に倒れている
セーラー服の女子高生の胸から、うっすらとしか血が流れていない事で明らかだった。

魔界の暗殺者は、通りすがりの女子高生の心臓を瞬時に抜き取り
それを質にして逃亡を企てる。

「この娘は、まだ助かる可能性はある…
だが、私を追えば確実に死ぬ」

KEIは胸を膨らませてブオッと自身の血を噴出すと
その血は霧のように広がり、飯田の視界を血色に染めた。

「…オマエの事は忘れない!必ず御礼はさせて貰う!」

響き渡る言葉を残し、血色の視界が晴れた時には、KEIの姿は消えていた。





342 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:34 ID:IrdKMuVm

「こ…これを渡して…」

自分の胸に揺れている、薔薇の形をした宝石が付いているペンダントに
力無く手を当てて、心臓の無い女子高生は、抱きかかえる飯田に
最後の言葉を伝えるとグッタリと力が抜けた。

「…まだ、助かるかもしれない、待ってろ…」
携帯で救急車を呼ぶ飯田は、ピクリとも動かない女子高生の小さな鞄から
IDカードを取り出して、腰のポーチに付いている携帯端末に差し込んだ。

「ハロー女子高…吉澤の学校の生徒か…うん?」
端末に出たデータは最重要人物の星が点滅している。

「まずい事になったかも…」

ハロー製薬ナンバー2の藤本専務の一人娘の息は止まっていた。


「……?」

藤本の傍らに転がる携帯から声が聞こえる。


拾い上げて耳を当てると聞き覚えのある声…


藤本を呼び続ける、その声の持ち主は吉澤ひとみ だった…





343 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:35 ID:IrdKMuVm


ドアを開けた瞬間、KEIは大量の鮮血を吐きながらソファに突っ伏した。

「ち、ちょっと、どうしたの?人に見られなかったでしょうね!?」

仕事を終えて事務所の明かりを消そうとしていた石黒音楽事務所社長の
石黒彩は、慌てて窓から外を見回してカーテンを閉めた。

「た、助けてくれ…心臓を潰された」

体内に流れる殆どの血液を流したKEIの崩れた顔は青ざめ、
ヒューヒューと漏れる呼吸音は、死が目前に迫っている事を示している。

「あんた…魔女なんだろ…頼む…」

「潰れた心臓は元には戻らないわ、それに血を見るのは
嫌いだって言ったでしょ、諦めなさい」
まるで虫けら でも見るかの様な、醒めた眼差しの
鈍い光を放つ石黒の瞳は、KEIの右手に吸い寄せられた。

「代わりなら有る…」

KEIの血塗られた右手には、未だに脈打つ藤本の心臓が握られている。

「ほう…生ける心臓か、面白いわね」
抜き取った心臓に、死んだ事さえ気付かせないKEIの妙技に
何を思うのか、石黒の目が線のように細まった。

「一応聞くけど…志村は殺したのかい?」

無言で頷くKEI。

344 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:35 ID:IrdKMuVm

「そう…それは良かったわ」

KEIの持つ心臓を受け取りながら微笑む石黒は、
豪華な造りの棚から真っ赤な葡萄酒の瓶を取り出し
何やら呪文を唱えながら心臓に注ぎ掛ける。

「カオスと契約する事になるけど、覚悟はいい?」

自分の人差し指を噛んで血を滴らせた石黒は
飯田のパンチによって潰されたKEIの顔面と
左胸の心臓の辺りに血の五芒星を描いた。

頷く力も無くなりつつあるKEIは、縋る様に石黒を見た。

「本来の心臓の持ち主が貴女を殺すかもしれないわよ?」

胸の五芒星が捲(めく)れる様に開き、中から潰れた心臓が浮かび上がった。

「…た、頼む」

その言葉を最後に、KEIの潰れた顔は人の色を失う…

「OK、分かったわ…」

葡萄酒の詰まった心臓を、そっとKEIの胸に沈め、
唇の両端をキューッと吊り上がらせた石黒の笑みは、
魔女本来の微笑みに見えた…





345 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/30 17:49 ID:IrdKMuVm
今年はココまでです。
次回は来年ってことで、皆様良いお年を〜〜。
てか、書き溜めてたストックが無くなってきた…
何とかせねば…

346 : ◆ONEWXrhHxI :03/12/30 20:41 ID:BYmH6Bvv
羊って面白いね

347 :名無し募集中。。。:03/12/30 22:20 ID:Q+/5OUTc
揚げ

348 :名無し募集中。。。:03/12/31 17:45 ID:1dsFXyQi
お疲れ様
来年も楽しみにマテルヨー

349 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/01 11:47 ID:qi31u7Ig
>>348
あけましておめでとうございます


350 :ロリエッタム〜ン:04/01/01 17:47 ID:6aywkHxr
あけおめ〜

今年もがんばって

楽しみにしています

351 :ロリエッタム〜ン:04/01/01 17:48 ID:6aywkHxr
ごめんあげちゃった

352 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/02 13:04 ID:GZaCiWSQ
>>350
あけましておめでとうございます。
頑張る所存で御座います。

353 :名無し募集中。。。:04/01/03 06:11 ID:TrRpObxB
美貴帝があ…

354 : :04/01/04 00:37 ID:B1JEp/kd
DASH!!村から来ました。

355 :名無し:04/01/05 23:09 ID:VEBAy03m


356 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:11 ID:2arF8abw

――― 15話 俺達の翼 ―――



俺は知っている

この時間が永延に終わらない事を…

俺は信じている

ちっぽけな背中だけど、そこには見えない翼が生える事を…

だから、俺は忘れない

信じていれば、いつか空を飛べるという事を…


ずっとずっと…


輝いていた時……







357 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:13 ID:2arF8abw

「加護さん 紺野さん、今日の生放送は新曲を披露するから
必ず見てちょうだいね♪ じゃあねぇ」

アイドルらしい可愛さで2人に手を振って、迎えに来たワゴンに乗り込む
高橋愛を「はは‥」と半笑いで見送る、加護と紺野は「うん?」と顔を見合わせた。

「そういえば、ののは?」

「さっきまで居たのに…」

学校の帰りは必ず3人で帰るのに、昨日から辻の姿が見えない。

「昨日も授業が終わったら、何時の間にか消えてたやん」

「MAHO堂にも来ませんでしたし…」

「ののめ…何か隠しちょるな」

今朝、「昨日は何してたん?」と聞いても辻は「へへへ」と笑って誤魔化したのだ。

「何処に行ったんでしょう?」

考え込む紺野の肩を加護の手がチョンチョンと突ついた。

「あさ美ちゃん、あれ見てみぃ」

「…うん?…優君?」

同級生の浜口優が、何か鉄パイプみたいな物を大量に抱えて
キョロキョロと辺りを見回して、学校の裏口の外れに有る、
ロープが張ってある林道に隠れるように消えて行く所だった。

358 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:15 ID:2arF8abw

「何やってん?あの道は工事か何かで出入り禁止の筈やで」

「あからさまに挙動が不審でしたね」

「…あっ!」

2人同時に小さく叫ぶと 慌てて口を手で押さえて、木の陰に隠れた。

浜口に続いて、キョロキョロと同じ挙動で林道に逃げるように入っていくのは
同じく同級生の矢部浩之と有野晋哉だ。

「なんや、怪しいちゃうん?」

「皆さん手に何か荷物 持ってますね」


そして、クラスのツッパリ、加藤浩次と武田真治が偉そうに
大股で入って行く所を見て、2人の決心がついた。

「後着けるでぇ」

「はい」




359 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:15 ID:2arF8abw
林道を出た所には『第二グラウンド建設予定地』と書かれた小さな立て看板と
古臭い小さな廃屋とボロボロのガレージがポツンと建っていて、
そこから見下ろすような形で広がる、校庭程も有る雑草だらけの開けた敷地は
緩い斜面がスキー場のように広がっている。

「なんやココは?こんな風になってるなんて全然知らへんかったわ」

「でも、工事をするような感じが全くしませんね」

廃屋と化した工事小屋からは連中の笑い声が聞こえてくる。

そして、その談笑の中に混じってケタケタと聞こえる笑い声は…

「のの!」
「辻さん!」

窓から顔を覗かせた2人がビックリして声を張り上げたと同時に
中に居た辻達も「わぁ!」と大声を出して驚いた。


そこは、クラスの自称『ハンサム軍団』の秘密基地だったのだ。


「わぁぁ、、何ですかココは?」
小屋の中は一応綺麗に片付いていて、学校から拝借してきた
椅子とテーブルが並べてあるのを見た紺野は感嘆の声を上げた。

「どうせ、秘密基地とか言うんやろ?うち等の男子は子供臭くてあかんわ」
そう言って悪態を突く加護も、興味津々で室内を見回す。

「うん?どないしたん?」
気付くと、俯(うつむ)き頭を抱える男子達…

360 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:18 ID:2arF8abw

「辻の次はオマエ等か…」
溜め息を付きつつ、矢部がボソリと呟いた。

「矢部君達はエロ本が読めなくなって困っているのです」
ケラケラと笑い ポテチをポリポリ食べながら、辻が机の棚に隠してある
エロ本を数冊取り出して「ほらっ」と加護と紺野に手渡した。

「ゲッ」
ドぎつい表紙を見た加護は目を丸くしたが、
キョトンとした紺野は「?」と小首を傾(かし)げるだけ…

「わぁぁあ!辻ぃ、オマエ何見せてんねん!」
有野が慌てて加護からエロ本を奪い取る。

「阿呆、見るか!そんなモン!ねぇ、あさ美ちゃん?…って…あさみ…ちゃん?」
紺野に話を振った加護がポカンとするのも無理は無い…
紺野はシゲシゲとエロ本を捲って見ていたのだ。

「……減るもんでも無いですし」
そう言う紺野の眼鏡が、キラリと光る。

「ハ、ハハ‥そ、そやな…」

唖然とする男子と、加護の乾いた笑いが辺りを包んだ…




361 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:18 ID:2arF8abw

「オマエ等、帰れよ!」
加藤が両手で頭をムシャムシャと掻き毟りながら叫んだ。

「辻だけでイッパイイッパイなのに、もう嫌だ!」
昨日、辻に秘密基地が見付かってから散々な目(想像にお任せする)に有ってる
ハンサム軍団は、後2人も増える事に辟易し、呆れ果てた。


「ふーん、ええんかぁ?帰っても…」
そんなハンサム軍団を知ってか知らずか、加護の顔は目だけが笑っている。

「な、なんだよ」
何となく嫌な予感…

「うち等の口は軽いねん…何処でポロッと滑るか分からへんでぇ」

予感的中…

「……わ…分かったよ」

「分かれば、ええねん」

加護の勝ち誇った顔と、対照的な加藤の表情。

あっさりと、ハンサム軍団は完敗した…


「ちくしょう!」
負けた腹いせに加藤が取った行動は、
パーーーンと快音を響かせる武田に放ったビンタだった。


362 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:24 ID:2arF8abw


「あいぼん、あさ美ちゃん、こっちに来るのです!」

辻が2人の手を取って小屋の隣に建ててあるボロボロのガレージに連れ出す。

「おお、ココは俺達の夢のガレージやでぇ!」
ヘヘンと笑いながら3人に着いて来た、
普段は『おバカ』な浜口の目が輝いている。

「ジャーン!」

辻と浜口がガラガラと音を立てて開けたガレージの奥には
組み立て途中のグライダーが鎮座してあった。

「な、なんや!?」
「すごーーい!」

「どや、俺達が組み立てたんやで!」
胸を張る浜口と辻。

「オマエは造っとらへんやんけ…」
浜口が半笑いで辻に突っ込む。

「えへへへ…」
辻はペロリ舌を出した。



363 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:26 ID:2arF8abw


それは、自転車にパイプを取り付けて組み立てたグライダーだ。

ペダルを漕ぐと、自転車の前に取り付けられたプロペラが回る仕組み…

ブサイクにベニヤ板を骨組みに張り付けた翼…

何時出来上がるかも分からない彼等の夢…



学校が予算不足を理由に、放置したままの『第二グランド予定地』。

この なだらかで広い斜面を見て浜口が言い出した突飛な計画は、
只々毎日をグータラに過ごすハンサム軍団に活気を与えた。





364 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:28 ID:2arF8abw

「……」

ハンサム軍団と辻、加護が はしゃいでるのを遠く聞きながら、
太陽が傾くグランド予定地に佇む紺野は、
もう何分もの間 言葉も無く、グライダーを見ている。

「なんや?そんなに格好ええか?」
それに気付いた浜口が駆け寄り、紺野の隣に並んでグライダーを見上げた。

「凄い‥これ、優君が造ったんですか?」
紺野の感嘆の声に浜口は、恥ずかしそうにポリポリと頭を掻きながら頷く。

「まぁ、勿論 俺だけやないけどな…」

チラリと振り向く先には、矢部達と辻 加護が楽しそうに怒鳴りあっている。

「私も空を飛ぶのが夢なんですよ」

浜口に隣に座るように促しながら 草地の地面に腰を下ろし、
夕日が差し迫る空を眺める紺野は、浜口に振り向きニッコリと微笑んだ。

「…そう言えばオマエ等、魔女見習いだったっけ?
テレビで見たでぇ、格好良かったな、風がゴーッと吹いて」

「飛べませんけどね」

「ハハ‥そうか…俺も飛ぶのが夢やねん、
格好ええでぇ、俺が操縦して、あのグライダーで飛ぶねん」


365 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:30 ID:2arF8abw

微笑む紺野は、胸ポケットからキャラメルを取り出す。

「はい」
「…うん?」

少し興奮気味に話す浜口の目の前に、紺野の手の平に乗った
銀色の小さな包み紙が差し出された。

「サ、サンキュ」

甘酸っぱいキャラメルを頬張りながら何気なく紺野を見ると、
紺野は自分のキャラメルの包み紙で器用に銀色の紙飛行機を折っている。

「なんやソレ?」

「優君も折ってみて」

「…お、おぅ」

紺野が器用に折り込む紙飛行機を見ながら、同じ様に指を動かす。

「ハハハ、出来たで、ブッサイクやけど」

不器用な浜口が作った紙飛行機は形が歪(いびつ)だ。


「飛ばしましょ、一緒に…」

「あ、あぁ‥でも、ほんまに飛ぶんか?」



366 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:32 ID:2arF8abw

「想いを込めれば必ず飛びます…辻さんの受け売りですけど」
そう言いながら紺野は立ち上がりパンパンとスカートの裾を払う。

「そ、そやな…じゃあ俺は あのグライダーが飛ぶ事を祈って飛ばすわ」

「じゃあ、私も…」

此方を見てニコリと笑う紺野の顔が とても眩しく、
浜口の心臓がドキンと鳴った。

顔から火が出そうになる程 真っ赤になっている事が自分でも分かり、
まともに紺野の顔が見れない。

「いきますよ、それっ!」
「お、おぉ!」

ヒラヒラと頼りなく飛ぶ2つの紙飛行機は、
風に煽られビューッと空高く舞い上がった。

「やったー!」
「すげー!」

しかし、高く舞い上がったソレは直ぐにクルクルと回転しながら
ポトリと地面に落ちる。

「あ…」
「ハハハ、まぁこんなモンやろ」

そう言いながら、落ちた紙飛行機を拾い上げて紺野に手渡す時も
浜口は彼女の顔が眩しくて まともに見れなかったが、
紺野が少し寂しそうな顔をしてるのが分かり、何故か動揺した。

367 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:34 ID:2arF8abw

「な、なんやねん…そんな 落ち込むなや」

「…だって」

「ハハハ、俺なら全然平気やで」

「本当?」

「あ、当たり前やんけ」

その言葉に慰められた紺野はクルリと浜口に向き直る。

「ねぇ、優君」

「な、なんや?」

ドギマギする浜口。

「この紙飛行機、優君が造った飛行機に飾りましょ」

「おお、それは良い考えや!早速飾ろうや!」

「うん」

浜口と紺野がガレージの方に振り返ると、辻 加護、ハンサム軍団が
ニヤニヤしながら2人を遠巻きに見ていた。



368 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:36 ID:2arF8abw

「オマエ等、何イチャついてんねん」
腕を組んで半笑いの矢部。

「なんや、エエ感じちゃうの?」
ニヤつく加護。

「グッチョンは顔が真っ赤なのです、あさ美ちゃんの事が好きなのです」
辻の投げる言葉の直球は、ド真ん中のストライクだ。


「ア、ア、ア、アホ言え!んな訳ないやんけ!…な、なぁ」

動揺しまくる浜口が同意を求めて紺野に振ると、
紺野の顔も浜口同様、耳まで真っ赤になっていた。


ヒューヒューと囃(はや)し立てるハンサム軍団と辻 加護。

呆然と立ち尽くす浜口と紺野。



揺らめく夕日が眩しく射し込む、市立朝娘市中学校第二グランド予定地は
浜口と紺野の頬のように赤く染まっていた…






369 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/06 19:39 ID:2arF8abw
今日はココまで。続きは明日。
KEI編の続きは、この話が終わった後になります。 では。

370 :名無し募集中。。。:04/01/07 14:25 ID:AwulEQZw
ほんまに話の幅が広いなぁ。面白いです頑張ってください。

371 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 19:46 ID:1tmHME2v


翌日、早朝から図書室に篭もる紺野は、飛行機の専門書を借り、
授業中も隠れて本を読み漁った。

「あ、あさ美ちゃん…?」
「……」
「あさ美ちゃんて…」
「…もう!忙しいので話しかけないでください」
「…いや‥だから」
「…?」

加護が目配せする視線の先には、何時もの様に上半身裸の担任江頭が
仁王立ちで紺野の後ろに立って睨んでいる。

「…あっ」

「紺野ぉぉお!廊下に立ってろ!!」

「…はい」

クスクス笑われながら廊下に出る、紺野の右手には専門書が握られている。

反省しているようで、実はしていない…
廊下に立つ間も本を手放さない、紺野の瞳は燃えていたのだ。






372 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 19:52 ID:1tmHME2v

「今日は沢山勉強して来ました!」

放課後、例のガレージでグライダーの前に立つ紺野は
運転席の自転車のサドルをパンと叩いて皆にハッパを掛ける。

「私が絶対 飛ばしてみせます!」

すっかりハンサム軍団の一員になったつもりの紺野に
辻と浜口の目が「おお!」と輝き、
他の軍団員と加護の目は「エェ、、」と引いた。



そして…

「…だから、なるべく軽くしないと駄目なの!余計な物は取り外しますからね」
「マジかよ!せっかく頑丈に組み立てたのに」
「組み立て直しです!」
「…はい」
不良の加藤にも物怖じせず、腰に手を当て、参考書と睨めっこする紺野。

「さすが紺野や!」
「…浜口…オマエ…」
「なんや?」
「…いや、なんでも」
「……?」
紺野に感心しきりの浜口に、突っ込みきれない矢部。

やがて…
仕方なしに紺野の指示に従っていた軍団員達も、
紺野と浜口の熱意に感化されだし、何時しか作業にも熱がこもって来る。

373 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 19:57 ID:1tmHME2v

「なんか飛べそうな気がしてきたで」
「最初は冗談半分だったのにな…」
有野と武田は顔を見合わせて、半分照れ笑いだ。


「うん?オマエ等何しとん?」
矢部が不思議そうに聞くのも無理はない、
辻と加護が翼に手をかざして、何やらブツブツ唱えているのだ。

「飛べるように魔法を掛けているのです」
「これで飛べたら、うち等のお陰やでぇ」

「…ハハハ、あっそぅ」

突っ込み役の矢部が「頑張りやぁ」と笑顔を見せた…



アルミのパイプを出来るだけ少なくし、ベニヤだった羽もビニールシートを使い、
ブレーキを尾翼の調整に改造して、プロペラも薄く削る…

それを見守る、機体の中央にチョコンと飾られた2つの紙飛行機…


顔中、油だらけに染め、笑い合いながら
3日掛けた作業は、完成まで もう少しという所まで来ていた。






374 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:06 ID:1tmHME2v

「もう少しで完成なのです!!後は飛ばすだけなのです!!」

昼休み、大声ではしゃぐ辻の口を紺野と加護が慌てて塞ぐ。

「阿呆、誰かに聞かれたら どないすんねん」
「そうですよ、秘密基地は文字通りヒミツなんですから」

「大丈夫なのです♪」
何が大丈夫なのか、根拠も無くアッケラカンとした辻。

「先生とかに知られたら全てがパーになります」
「そうやで、今までの苦労が水の泡や」

「…う〜…分かったのです」
ブーッとホッペタを膨らませながら答える辻も、水の泡になるのは、やはり嫌なのだ。

そんな3人の会話を、弁当を広げながら
何食わぬ顔で聞く、高橋愛の口元は薄く微笑んでいた…




放課後、何時ものように作業するハンサム軍団と辻達。

「ふーん、面白い事になりそう…」

陰からコッソリと覗いた高橋は、独り言をポツリと呟く…

その微笑みは、まさに小悪魔そのものだった。



375 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:14 ID:1tmHME2v


そして翌日、辻の顔は蒼ざめる事になった。

(のの のせいなのです‥ののが昨日大声で喋ったから…)

朝のホームルームで担任の江頭の口から秘密基地の話題が出たからだ。

「立ち入り禁止の場所でタバコを吸ったりエロ本を読んだり、
不良行為をしている連中がこのクラスに居るな」

ざわめく教室…

「チッ」
加藤と武田は舌打ちをして、ふて腐れている。

矢部 有野、そして加護も俯(うつむ)き、首を振っていた。

「特に、飛行機みたいなのを作って飛ばそうと計画しているらしいな、
これは危険だから絶対に許さん!」

血の気が引いた辻が、チラリと紺野と浜口を見ると
2人とも下を向いて体が震えていた。

「心当たりの有る者は後で先生の所に来るように、
罰として飛行機を解体させるからな!…以上!!」

ニヤニヤしているのはクラスの中で高橋ただ一人、
だが、その悪魔の微笑みに気付くクラスメートは誰一人いなかった。



376 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:17 ID:1tmHME2v

ホームルームが終わり江頭が教室を出ると、
辻が机に突っ伏してワッと泣き出した。

「ごめんなしゃい!ののが悪いのです…全部のの のせいなのです」

泣きじゃくる辻に集まるハンサム軍団は、一様にシラケ顔だ…
だが、怒ってる様子では無かった。

「まぁ、しゃあないだろ」
「俺達も本気で飛べるとは思ってなかったしな…」

お互い顔を見合わせて頷き合うハンサム軍団は、
一瞬でも楽しい一時を過ごせた事に感謝していたのだ。

「でも、でも…」

「そんなに泣くなって、オマエ達のお陰で結構良い夢が見れたでぇ」

矢部にポンと肩を叩かれた紺野は
唇を震わせながらポロポロと涙を流している。

「……」

紺野の涙に皆が一瞬声を詰まらせた。

慰めの言葉は何にもならない…だが…

「オマエと浜口が一番一生懸命だったな…」

声を掛けずには居られない。


377 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:18 ID:1tmHME2v

「うん?浜口は?」
加藤が浜口が居ない事に気付く。

「…居ないでぇ」
加護が教室を見回したが、浜口は消えていた。


ハッと辻と紺野が顔を上げる…

「基地に行ったのです!グッチョンは基地に行ったのです!」

立ち上がった辻が紺野の手を取った。

「あさ美ちゃん!のの達も基地に行くのです!」
「…うん!」

脱兎の如く教室を出る辻と紺野。

「おい、俺達も行くぞ!」
続く矢部に
「授業はどないすんねん」
と有野。

「阿呆!そんな事言ってる場合ちゃうで!」
加護は有野の尻を蹴って追い立てた。



「ちぇ、つまんない…」
出て行くハンサム軍団を見送る高橋愛は少し考えるとニコリと笑い
教室を出ると、連中と反対の方向…職員室に向かった。

378 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:22 ID:1tmHME2v




辻達が駆け付けると、ガレージのドアが開いていて
浜口が一人でグライダーを押し出そうとしている最中だった。

「優君…」
「グッチョン、飛ばすつもりですか?」

黙って頷く浜口。

「まだ未完成やで、それ」
心配顔の加護の肩に手を置いた矢部は首を振って見せた。

「それでも、かまへん…」
グライダーを押しながら呻くように呟く浜口。

「壊されるぐらいなら今飛ばす…
これは俺の夢や…俺達の夢なんや!!」

機体を押す浜口の手に、そっと紺野の手が乗った。

「紺野…」

反対側の翼にはニカッと笑う辻と加護。

「辻…加護…」

黙って見ていたハンサム軍団も後に続いた。

「オマエ等…」

379 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:23 ID:1tmHME2v

「浜口!何 涙声になってんねん!これは俺達の夢なんやろ!」

そう言う矢部の声も震えている。

「よっしゃあ!飛ばそうぜ!!」

「おおおお!!!」

加藤の掛け声に全員雄叫びを上げた。





「こらーー!!オマエ等ーー!!何してんだ!!」

ガラガラと音を立ててガレージから
グライダーが出されたのを見て江頭が声を上げた。

「馬鹿な真似は止めなさい!」
「そこを動くんじゃないぞ!」

4人の教師が駆け寄ってくる。
高橋の告げ口で慌てて飛んで来た、手の開いている教師達だ。

「ヤベェ!江頭達だ!」

「浜口!乗れ!」
「グッチョン、乗るのです!」
「優君、乗って!」


380 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:25 ID:1tmHME2v

「お、おぉ!」
浜口が自転車に乗ってペダルに足を掛けた。

「おりゃあああ!」
加藤と武田が、走り寄って来た教師に体当たりをして止める。

「行けぇぇええ!浜口ぃぃいい!!」

翼を押す皆も其々声を掛けた。

「行け!浜口!」
「江頭は俺が止める!」

ゴロゴロと補助車に支えられて、動き出す機体…

「飛んでぇぇえ!」
「飛べっ!!」

ゆっくりとだが、緩い斜面を走る機体…

「ぅ ぅ ぅ う う う…!」

力を込めてペダルを踏む浜口…

---ブン ブン ブン---

それに合わせて勢い良く回りだすプロペラ…




381 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:28 ID:1tmHME2v



「浜口ぃ!止まるんだ!!」

矢部のタックルを避け、追い掛けて走る江頭は機体と並んだ。

「……」
無言の浜口の額には汗が光る。

「浜口!!」

「先生…俺、行きます!!」

「…!」

江頭の顔を見た浜口の小さな瞳に何を見たのか、
江頭は走るのを止めて機体を見送った。


「飛べぇぇえええ!!」
「飛んでぇぇええ!!」
「行っけぇぇええ!!」


其々の想いを込めて走るグライダー…


382 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:32 ID:1tmHME2v

「うぉぉぉおおおおおお!!!」
ペダルを漕ぐ浜口も全力を出した。


フワリと浮いた…

10メートル…

20メートル…


滑空したとは言えないのかもしれない…


だが、それでも満足だった…


翼が折れて、バランスを崩した機体は、音を立てて地面に叩きつけられた。










383 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:33 ID:1tmHME2v

俺が目覚めたのは病院のベッドの上やった。

足の骨と肋骨が折れてた。

最初に目に入ったのが涙ぐんだ紺野の顔…

彼女の顔は俺には眩しくて、あんまり見られへんかったら
俺はバンザイをする矢部達と一緒に笑った。

紺野に聞いた話では、あの後 皆はごっつ怒られたらしい。

罰として一週間の便所掃除をくらったらしいけど
何故か皆はニコニコとして素直に罰を受け入れたそうや。
あと、手伝ってる店の、なんとか婆ちゃんにも怒られたって笑ってた。

江頭が病院に来て俺も怒られたけど、アイツはそんなに怒ってなかったな。


俺は、ほんまに、ええ友達を持った…


俺は、この出来事を一生忘れない…


絶対、忘れる筈が無いんや…



なぁ?  紺野…?



384 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:34 ID:1tmHME2v





俺達は知っている

あの時間が永延に終わらないと感じた事を…

俺達は信じている

ちっぽけな背中だけど、そこには見えない大きな翼が生えている事を…

だから俺達は忘れはしない

信じていれば、きっと必ず空を飛べるという事を…


ずっと、ずっと‥ずっと…


光り輝いていた、俺達の時間……








385 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/07 20:58 ID:1tmHME2v
今日はココまでです。次回は来週以降の予定です。

>>370
実は今回のは、KEI編がまだ書き上げてなかったので、(KEI編は結構長い)
あるアニメの一話からアイデアを頂戴して2日間で書いた物です。(すまん)
でも、結構こういう話しが好きなんですよ…ェヘヘ         では。

386 :名無し募集中。。。:04/01/07 21:56 ID:tTynXZxQ
。・゜・(ノД`)・゜・。ウワァァァァァァァァン!

感動した.......。

387 :名無し募集中。。。:04/01/07 23:18 ID:K6CI4o1D
ええ話や。ええ話や。
ハナゲさん感動をありがとう。

388 :名無し募集中。。。:04/01/08 04:05 ID:gS0rbbzj
名無しハネゲに感動  。゚(゚つД`゚)゚。

389 :名無し募集中。。。:04/01/08 08:30 ID:f4DYJ8z+
理事長カコイイな

390 :名無し募集中。。。:04/01/08 20:07 ID:VKo2k6fk
まさか羊でこんな青春群像を見れるとは思わんかった
ヨカタよ

391 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/10 18:31 ID:gKoRbXj2
皆様、ありがとうございます。
嬉しい限りでございます。

392 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 18:40 ID:M6+rOlbc

――― 16話 心臓の記憶 ―――



ハロー製薬本社ビル地下5階…
30畳程も有る広い室内に有るのはベッドとそれに繋がる機械類、
そして7人の人間だった。
ハロー製薬の藤本専務、ボディガード4名、飯田圭織、
そしてベッドに横たわる藤本美貴。

藤本専務を囲むように立つボディガード達と
壁に寄りかかる飯田は、ある人物を待っている。


青白い光に包まれた室内に呼び出された人間が一人。

自動ドアが開いて入って来たのは、石黒音楽事務所社長の石黒彩だ。


樫の杖を持つ黒尽くめの石黒は、不適に室内を舐めるように見回した。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000039.jpg


「何故呼び出されたかは分かっているな」
専務の重い声が室内に響く。

無言の石黒は唇だけ微笑の形を作った。

「娘の意識が戻らない…お前が依頼した暗殺者の事を教えてもらおう」

「……」

393 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 18:43 ID:M6+rOlbc

あの日、藤本美貴は直ぐにハロー製薬本社ビルに設置されている
最高級の手術室に運ばれた。

最新鋭の人工心臓が取り付けられて、蘇生手術は完璧に成功した。
しかし、藤本の意識は一ヶ月近く(三週間)経った今も戻らず
眠り姫の如くスヤスヤと その寝顔を湛えている。

KEIと言う名前の暗殺者と石黒の接点は
志村けん暗殺事件の時には掴んでいた。
だが、藤本美貴が心臓を抜かれたのは、藤本が偶然そこに居ただけで、
今の意識が戻らない状況が、KEI又は石黒が絡んでいるとは
誰一人思っていなかった。


只一人、飯田圭織を除いては…


事件の後直ぐに、飯田は責任を取らされる形で停職処分になった。
本来ならば、事件が事件なだけに
(ハロー製薬専務の娘が殺されるのを見逃した)
免職は避けられない状況だったのだが、朝娘市警察にとって貴重な存在である
魔人ハンターの処分は3ヶ月の停職という形で落ち着いた。

藤本の意識が戻らない事に業を煮やした専務が
事件の洗い出しを命じて、初めて飯田の証言が出てきたのだ。

「抜き取られた藤本美貴の心臓は生きている」

KEIが抜き取った藤本の心臓が脈打つのを、目の前で見た飯田は
その心臓をKEIが自分の潰れた心臓の代わりにする事を確信していた。


394 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 18:44 ID:M6+rOlbc

今更になって自分に縋るハロー製薬に不審が募ったが
そんな事は微々たる物だ。

KEIを殺す…
それだけだ。


そして、藤本専務の目的は勿論、娘の意識の回復だ。

藤本専務と飯田の目的は合致した。

KEIを殺して、その心臓を取り戻す。

だが、そのKEIの居場所は皆目見当が付かない。

それならば、KEIとの接点を持つと思われる人物から聞き出す…
今日、石黒が呼び出された理由だ。


「私が暗殺者を頼んだ?…知らないねぇ、証拠でも有るのかい?」

「証拠は無い、だが、ここは魔界街だ、無理やり吐かせる事も可能だ」

藤本専務は顎をしゃくるとボディガード達が銃を構えて
石黒に照準を合わせた。

「…アンタ達、私の事は調べたのかい?芸能事務所社長以外の私の肩書きをさ」

「それ以外 何が有る?……!!」

怪訝そうな顔をする専務の表情が驚きのソレに変わった。

395 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 18:45 ID:M6+rOlbc
銃を握るボディガード達の手首が握った銃ごとボトボトと床に落ちたのだ。
呻きながら落ちた利き手を押さえる男達を冷ややかに見る石黒。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000038.jpg

「この部屋に入った時に私の髪の毛を数本飛ばしておいたのさ!」

キューッと石黒の唇の端が釣りあがる。

「き、貴様、何者だ!」
藤本専務が懐に隠していた護身用の銃を抜いて石黒に向けた。

「ヒャハハハ!撃ってみなよ!」
おもむろに歩を進める石黒は専務に近付く。

「貴様ぁああ!」

---パンッ!---

放った弾丸は石黒の胸の中心を貫いた。

ニーッと笑う石黒の体が薄くなりヒラヒラと人型の紙になり床に落ちる。

「…なっ!?」

その紙の中心には五芒星が描かれており、
専務の打ち抜いた弾丸は見事に五芒星の中心に穴を開けていた。

「ど、どういう事だ?」
藤本専務は事の成り行きを黙って見ていた飯田に振る。

「……」
飯田は無言で部屋のドアを見詰めていた。

396 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 18:49 ID:M6+rOlbc


「アンタ、私を殺したね…これで私がアンタを殺しても文句を言えない…」

声のする方向は飯田が見詰めていた自動ドア。

「…!!」
愕然とする専務。

ドアの前には石黒がヒッソリと佇んでいた。




「その髪の毛…何故、私を狙わなかったの?」
初めて飯田が声を出した。

「…強い相手とは闘わない…私の主義でね」

コツコツとヒールの音を立てて部屋の中央に進んだ石黒は
専務の足元に蹲(うずくま)るボディガード達に向かって言い放った。
「邪魔だよ、アンタ達のボスは殺さないから出て行きな」

藤本専務に促されて男たちが出て行くと
「な〜んてね」と、石黒が意地悪そうな笑いを浮かべた。

「強い相手とは争わないないけど、弱い奴は徹底的に叩くわよ」

石黒に『弱い奴』の烙印を押されたハロー製薬専務の首には、
石黒の髪の毛が一本、細い線のように巻きついている。


397 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 18:51 ID:M6+rOlbc

「…うぐっ!」
キューッと絞まる髪の毛に藤本専務の顔色が変わった。

「ま、まて…此方の非礼は詫びる」
ガクリと膝を付く専務は、絞まる首を押さえながら呻くように詫びを入れる。

「ふん、最初からそうしてれば良かったんだよ」

膝を付く藤本専務を見下す石黒が指を鳴らすと、髪の毛はハラリと落ちた。



「お前の その術…お嬢さんの心臓をKEIに入れたな、
そして、その娘の意識が戻る術(すべ)も知っている…と、見たが どう?」

壁に寄りかかったままの飯田は、タバコに火を点けて石黒の答えを待った。

「答えてもいいけど…保障が欲しいわ」

「保障?」

石黒が静かに頷く。

「そう、これ以上 私に付きまとわないって保障」

「…それは、俺が約束しよう」

藤本専務が喉を押さえながら答えた。


398 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 18:53 ID:M6+rOlbc
「だが、それは娘の意識が戻ってからだ…」

「…OK」
そう言いながら石黒はコツコツと自動ドアに向かった。

「最初に言っておくけど、殺し屋の居場所までは知らないわよ、
自分達で探しなさいね」

「分かった…で、娘さんの意識を戻す方法は?」
飯田も少しは見殺しにした責任を感じるのか、
それとも、吉澤を想う同級生という事情が気になるのか、
兎に角、藤本の意識が回復する方法に関心が有った。

「フフ‥貴女の考えた通り、その娘の心臓は私が移植した…
意識が戻らないのは、KEIが あの心臓とカオスの契約を結んだから…
心臓が元の場所に戻りさえすれば、カオスの契約が切れて
その娘も元通りに蘇るわよ…」

飯田を見ながら微笑む石黒。
「貴女の推測は全て正しいわ」


「何故、そんな面倒な術を掛けた?」
飯田は普通に移植しない事に疑問を感じた。

「面倒?私は医者じゃないわ…
それに、その娘が復活する時は完璧な方が良いでしょ?」

石黒は藤本専務に向かってウィンクをして見せた。
「私は優しい魔女なのよ…」

その言葉を残し魔女は自動ドアの向こうに消えた。

399 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 18:55 ID:M6+rOlbc





「それにしても、奴の居所が掴めないとな…」
腕を組んで考え込む藤本専務。

「アイツは私を殺しに来る…」
ポツリと飯田。

「ほ、本当か…?」

「KEIは私に怨みを持ってるの…」

飯田はKEIが最後に言い残した言葉を忘れてはいない。


----オマエの事は忘れない!必ず御礼はさせて貰う!----


KEIは そう言って飯田の前から消えたのだ。

「その日がお嬢さんの新しい誕生日になるわ」

余計な真似はしないでね、と専務に釘を刺して 踵を返す飯田。


400 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 19:02 ID:M6+rOlbc

「一人で大丈夫なのか…?」
藤本専務は飯田の実力を疑ってる訳ではない。
だが、娘を人質に取られてKEIを取り逃がした件が有る…
これは、愛娘の命が係っているいるのだ。
聞かずにはいられなかった。

「じゃあ、一つだけ…」
そっと振り向く飯田。

「なんだ?」

「貴方の お陰で停職中なのよね…」

「…分かった、何とかしよう」

「……」

無言のまま 薄く微笑む飯田は、とても美しかった…
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000041.jpg







401 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/13 19:09 ID:M6+rOlbc
今日はココまでです。次回は未定っす。
今回、挿絵を入れてみました。(´ー`)y−~~~
       では。

402 :ロリエッタムーン:04/01/13 23:10 ID:EyIIE6gb
飯田さんシブイ

挿絵の方は新鮮な感じで
本格的な小説読んでる気分になりますた

サシエカコイイ!!ハナゲモカコイイ!!


403 :名無し募集中。。。:04/01/17 00:42 ID:1245nY/6
絵も描いちゃうなんて
ハナゲやるなぁハナゲ

404 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:06 ID:LjWTDdJ8

『人造舎』の貸し出しリストに登録している人材は、
特に魔界街に住んでいると言う訳ではない。
それは、朝娘市警察の管轄が、市外には及ばないという事が主な理由…
足が付いても直ぐに逃げられるように、
朝娘市警察の手が届かない市外に住む魔人は多いのだ。


東京都港区、六本木ヒルズに有る高級マンション。
その高層マンションの18階に心臓を抜く暗殺者の部屋が有った。
豪華な造りの2LDKの洋室に有るベッドの上で『KEI』こと保田圭は
うなされる日々を送っていた。

新たな心臓を手に入れた保田の体は、拒絶反応に苦しみ
高熱にうなされ、身悶えする日の連続だった。

だが、拒絶反応の痛みは一週間で消えた。
魔人の体力が、拒み続ける心臓を吸収したのだ。

それなのに、眠れない日々が永延と続いた。

一ヶ月(四週間)たった今でも、ベッドの上で悶えるのには理由が有る。

眠ると、必ず見る夢のせいだ…

取り込んだと思っていた心臓は、未だに拒み続ける…

石黒が施したカオスの契約により、心臓には魂が宿っていたのだ。

その魂が悪夢を見させる…

…夢…

405 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:11 ID:LjWTDdJ8





真紅の世界にポツンと佇む、一人の少女…

真っ赤な花弁が咲き乱れる、気高き薔薇の絨毯の下には
保田の動きを止める,、棘(いばら)が足に絡みつく…

その少女は保田に気付くと、微笑みながら近付いて来た…

見覚えの有る顔…

当たり前だ。

その少女の心臓は今、自分の体の中に有るのだから。


「…藤本美貴」

少女は、そう名乗った。

「返して頂きますわ…」

そう言って、藤本は細い腕を保田に伸ばす…

「ふざけるな!コレは私の物だ!」

ビキビキと音を立てて禍々しく変形した右手で、
保田は藤本の左胸の中心を目掛けて鉤手を振った。


406 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:14 ID:LjWTDdJ8

だが、藤本の心臓を抜き取る筈の魔手は虚を掴む…

当然の事だ。

藤本の心臓は今、自分の体内で脈打っているのだから。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000045.jpg


「無駄な事を…」

藤本の後ろから、影の様に ひっそりと現れる、見た事も無い男…

冷たい眼差しの美貌の少年は、ゆっくりと右手を保田の左胸に向けて伸ばす…


---ドクン---

保田の心臓は、経験した事が無い胸の高鳴りに疼いた。


---ドクン---ドクン---ドクン---

「だ、誰だ…?」

自分の声が擦(かす)れている事が分かる…

「…吉澤ひとみ」

男とは思えない、ほっそりとした美しい指が胸に掛かった。


407 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:16 ID:LjWTDdJ8


---ズズ・・---

指は、静かに、そして確実に心臓を目掛けて沈む。


---ズブ---ズブ---ズブ---

「や、やめて…」


冷ややかな瞳の吉澤………

ブチブチと音を立てて動脈を引き千切りながら、
握られた心臓は引き抜かれた。


「返して!それは、私の…!」

「貴女の物ではないわ」

吉澤の隣に寄り添う藤本がそう言うと、
真紅の薔薇の花弁がブワリと舞い上がり、保田の視界を奪った…







408 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:22 ID:LjWTDdJ8


「わぁああ!」
保田は叫びと共に飛び起きた。
グッショリと寝汗を掻いている。

ハァハァと荒い息を付きながら、股間に手を伸ばして気付く。

濡れていた…

「…ふざけるな」

悪夢だ…

「…殺してやる」

有った事も無い人間を愛してしまっている…

「必ず私の手で殺してやる!」

保田の叫びに呼応するかのように、
ベッドの横に誰かが立つ気配…

「キサマ!!」

それは、ひっそりと不適に笑う藤本の幻影だった。


409 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:38 ID:LjWTDdJ8

「殺してやるぞ!キサマが愛してる男を!!」

保田を見下すように、藤本は高貴な微笑みを湛えている。

だが、その美しき微笑みさえも、保田には歪んで見えた。

憎悪に染まるドス黒い心…


「そして、その次はキサマだ!藤本!!
キサマを殺して、魂ごと完全に心臓を取り込んでやる!!」


揺らめく陽炎のように消える、 藤本の幻影を見詰める
保田の怒りに燃える目は、血色に染まっていた…
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000044.jpg










410 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:43 ID:LjWTDdJ8

---リリリリリリ---

肩で息をする保田の耳に滅多に鳴らない電話の呼び鈴が届いた。

取った受話器の向こうから聞こえるのは、
リサと呼ばれる豆みたいな少女の声だ。

「…何か分かったか?」

保田は、有る事を自分の所属する『人造舎』に頼んでいた。
それは藤本美貴と吉澤ひとみ という、悪夢に出てくる人間の所在だった。


---藤本の事件はハロー製薬によって完璧に隠蔽されていて
   同級生さえも(吉澤を除いて)事件そのものを知らない---


石黒に聞いても良かったが、彼女が知ってるとも思えないし、
知っていたとしても、これ以上 借りを作る事は保田のプライドに関わった。

『へへへ、分かったよ、藤本ってのはハロー製薬専務の一人娘で
吉澤ってのが、その同級生、事件が公(おおやけ)にならないのは
ハロー製薬がバックに付いてるからだよ』

受話器の声は、何時もの事だが やけに明るい。


411 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:45 ID:LjWTDdJ8

『相手がハロー製薬じゃ、少しヤバイんじゃない?
手を貸そうか?…勿論有料で』

「バカ言え…」

『ふふ‥そう言うと思った、じゃあ情報料は次の仕事が入った時に、
ギャラから天引きしとくから…』

皆から『殿』と呼ばれている、白髪で盲目の人造舎総帥と、魔人達の間を繋ぐ
連絡係のリサのハシャギ声を苦々しく思いながら、
頼んでいた情報をメモに取り、保田は無造作に受話器を置いた。

「……」

無言で胸に手を置いてみる。

トクントクン…と脈打つ心臓は、何時もより鼓動が早い…


仕事着のラバースーツに着替えて、部屋を出る保田の額には
うっすらと汗が滲んでいた…








412 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/17 17:49 ID:LjWTDdJ8
今日はココまでです。次回も未定っす。

>>402
>>403
ありがとうございまふ。そう言って頂けると、挿絵描いて良かったよん、と思いまふ。
ヽ(´∀`)ノ   では。。。

413 :名無し募集中。。。:04/01/20 11:54 ID:UEijElob
初めて読んだけどおもしろいね
つづきも期待してるよ

414 :名無し募集中。。。:04/01/22 17:37 ID:K/uqnfNr


415 :名無し募集中。。。:04/01/22 18:37 ID:jGIVRtX1
tes

416 :名無し募集中。。。:04/01/23 00:05 ID:47pghke8
http://lefthand.s26.xrea.com/thread/t.cgi?title=%D3%CB%B8%C6

417 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:27 ID:zlYrEIX+



藤本の心臓が抜き取られた日から、吉澤には心に誓った事が有る。

---絶対、仇を討つ---

藤本が事件に巻き込まれたのは偶然だ。
しかし、その原因が計らずとも、少しは自分に有ると 吉澤は思っている。


昨夜(飯田がハロー製薬で石黒と絡んだ日)、
事件以来(飯田も停職中の為、進展が無く連絡を取らなかった)、
久しぶりに連絡の取れた飯田から事情を聞いた吉澤は、
事件の背景に松浦亜弥の事務所が絡んでいる との飯田の説明を聞いて、
登校後、さっそく松浦の教室に乗り込んだ。

「松浦は居るか?」

教室に入るなり、クラスメイトに囲まれて幸せそうな松浦を見付けて
カチンと来た吉澤がツカツカと詰め寄る。

「お前に聞きたい事が有る」

「…だ、誰?」

刺すような吉澤の表情に怯えた松浦が廊下で待機している
ボディガード兼マネージャーで石黒彩の夫、真也を呼び付けた。



418 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:27 ID:zlYrEIX+

屈強な体格の真也は、空手の有段者で魔女の忠実な僕(しもべ)だ。

「貴様!ここは女子高だぞ!……わぁあ!!」

自分の性別をも省(かえり)みない身勝手な言い分を発しながら
教室に入ってきた真也は誰かに足を取られ、
ガラガラと机を倒しながら、前のめりに転んだ。

勿論、真也の足を取ったのは吉澤の見えざる右手だ。

「今の俺は下らない冗談を笑う余裕は無いんでね」

冷ややかに見下ろす吉沢の踵がグシャリと真也の顔面を潰す。

「もう一度言う、お前に聞きたい事が有る」

悲鳴が木霊する教室内で、吉澤の声だけが自棄に透き通って聞こえた…









419 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:28 ID:zlYrEIX+

吉澤は松浦から事務所の住所を聞きだし、
その足で石黒音楽事務所に向かった。



「お前が知っている石黒音楽事務所の事を全て話せ」

「…わ、私より、直接社長に聞いてよ」

「社長は今いるのか?」

「…多分」

吉澤の氷のように刺す視線に怯えた松浦が、
顔面血まみれの真也に吉澤を事務所に案内するように
命じた事で決着が付いた。

ふて腐れた真也の運転するリムジンは吉澤を石黒の元に運ぶ。



石黒に怒られる事を恐れた魔女の僕(しもべ)の真也は
吉澤をリムジンから降ろすと、そのまま松浦のマネージャー業に戻った。






420 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:28 ID:zlYrEIX+

「あら、いい男だねぇ…アイドル志望者?」

ノックもせず、重厚な事務所ドアを開けて入ってきた
無愛想な美少年の吉澤を見て、石黒が最初に発した言葉だ。

「アンタが雇った殺し屋の事を教えてもらいたい」

頬を少し染めた石黒の流し目を無視して、本題だけを聞く吉澤に
魔女の色目は落胆に変わる。

「なぁんだ、違うの?…ふう…その件は昨日、約束したんだけどねぇ」

溜め息混じりに話す石黒は、昨夜、ハロー製薬が示した
『以後自分達に付き纏(まと)わない』との約束を吉澤に話した。

「あいにく俺はハロー製薬の関係者じゃないんでね」

「じゃあ、何?」

「…藤本の同級生、それだけだ」

「まぁ、それだけの理由で殺し屋に挑むの?」

「…悪いか?」

「いいえ」

微笑を湛えながら静かに首を振る石黒は、
吉澤の青臭い言葉に胸がキュンと鳴る。


421 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:36 ID:zlYrEIX+

「…いいわねぇ、若いって、切なさが伝わってくるのよねぇ…
いいわ教えてあげる、でも、相手は殺し屋よ、
いくら喧嘩が強くても貴方じゃ死ぬだけよ」

吉澤の能力を知らない石黒は、
吉澤の行動を『若い青春ゴッコ』だと思ったのだ。

それでも石黒は、知っている事を全て吉澤に話す。

石黒の話は、昨日飯田から聞いた通りの情報以外 何も無かった。
だが、話していく内に新たに分かった事が有る。
それは、藤本の記憶を共有するKEIが次に狙う相手は
吉澤の可能性が高いという事だ。

「プライドの高い暗殺者は、邪魔な記憶を摘み取ろうとする筈よ」

「……」

「例えば、藤本さんが愛する人間とかね…」

訳知り顔でニンマリと話す石黒は吉澤の顔色を伺う。

「貴方、あの娘が好きなの?」

「…同級生と言っただろ」

「フフ‥まぁいいわ…気を付けなさい…いい男が死ぬのは辛いから」

そう言いながら、石黒は吉澤の首の後ろに手を回し
首に掛けていた、赤い宝石がポイントのペンダントを そっと外した。


422 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:37 ID:zlYrEIX+

「綺麗な宝石ね…」

ルビーの周りをプラチナの花弁であしらった、
薔薇の形を成しているペンダントヘッドの銀の首飾り。

それは、事件の翌日飯田から手渡された、
藤本が吉澤に渡す予定だったペンダントだった。

「殺し屋が貴方に近付いたら反応するように、
ペンダントに術を掛けてあげるわ」

「…術?」

「こう見えても私は魔女なのよ」

そう見えなくても石黒の鉤っ鼻は魔女そのものだ。



「悪い事は言わないわ、ペンダントが反応したら逃げなさい」

どのような術を掛けたかは知らないが、
奥の部屋に入って 暫らくしてから戻って来た石黒は、
薔薇のペンダントを吉澤の首に掛けながら耳元で優しく囁(ささや)いた。








423 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:38 ID:zlYrEIX+

石黒音楽事務所を後にした吉沢は路上に止めてある
一台のシボレーに気付いた。

運転席には知っている顔…

「よう…送るぜ」

パワーウィンドウが下りて顔を出したのは、
石黒を張っていた飯田圭織だった。



「アイツは俺が殺る…」

車中で吉澤がポツリと呟いた。

「…いいけど、何か掴めたのかい?」

ハンドルを握る飯田は、あっさりと仕事を吉澤に譲った。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000046.jpg

「KEIは俺を狙うらしい…
それと、奴が近付けば居場所が分かるアイテムを手に入れた」

Tシャツの胸に飾られた薔薇のペンダントが揺れる。

「ふうん、随分気前がいい魔女なんだな」

「…俺を気に入ったらしい」

「ハハハ、モテモテなんだな、お前は」

424 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:38 ID:zlYrEIX+

吉澤を好きになる女達は、どうも一癖も二癖も有るらしい。
だが、今はそんな事はどうでも良かった。
飯田は話を戻す。

「それよりも、お前一人で大丈夫か?」

「…抜く練習をする」
吉澤は右手をテレポートさせて心臓を抜き取る決意だ。

「そうか、じゃあ殺るのは任せるが、こっちも譲れない事が有るぜ」

「……?」


吉澤がKEIを殺す事を譲る変わりに、飯田は ある条件を付けた。


「……と、言う訳で、お前がKEIを殺るまで、張り付かせてもらうよ」

「…ご自由に」

「決まりだな」


アクセルを踏み込む飯田のシボレーは、爆音と共に街路地を駆け抜けた…






425 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/23 18:43 ID:zlYrEIX+
今日はココまでです。次回も未定。
>>413
ありがとうございますです。
がんばっていきます。      では。

426 :和泉子 ◆Emjcf.lfLU :04/01/24 21:31 ID:6XGguwRG


427 :和泉子 ◆Zfk06os39A :04/01/24 21:32 ID:6XGguwRG


428 :a:04/01/25 21:37 ID:dsysKBdw
 

429 :名無し募集中。。。:04/01/25 22:18 ID:XhGG1GbU


430 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:08 ID:ynAlHsgq
---ハロー女子高---

藤本が登校しなくなってから一ヶ月が過ぎようとしていた。

そして、その日から石川を避けるようになった
吉澤が教室を飛び出してから一週間が経った。

自分の隣の席を気だるそうに見る石川は、
主の居ない机を見詰め、切な気な溜め息を付く。

何故、こうなったのか石川は知らない…

知らないが、藤本が登校しなくなった日から吉澤の態度も変わった。

話しかけても曖昧に「ああ」とか「おお」しか言わなくり、
最近では何を言っても無視する有様だ。



最後に交わした会話らしい会話は……たったコレだけ。

「もう、俺に関わるな…」



一週間前、石川に そう言い残して教室を出た吉澤は、
ある事件を起こし無期限停学の処分を受けた。

それは、一学年下の、アイドル松浦亜弥の教室に乗り込み、
制止する松浦のボディガードを半殺しにした事件だ。

吉澤は そのまま高校を飛び出し、それ以来 連絡さえ無い。

431 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:08 ID:ynAlHsgq


携帯にも出ないし、家に行っても会ってくれない…

理由も分からず突き放された石川の我慢は限界を超えていた…


「石川さん、どうしたんです?授業中ですよ!」

授業中にフラリと席を立ち、教室を出る石川に教師が声をかける。

「…早退」

ポツリと呟いた石川は、ある覚悟を決めていた…









432 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:09 ID:ynAlHsgq




石川は教室を出た足で吉澤の家に向かった。
急に自分を無視するようになった吉澤へ「何故?」の思いが強い。

---今日こそ絶対に会って話しをする、
   出来なければ、吉澤の目の前で死んでやる---

悲壮な覚悟で向かった足は吉澤の家の近くの路上で止まり、
そのまま物陰に隠れた。

吉澤が 髪の長いモデルのように綺麗な女性と、親し気に話していたのだ。

その女性は吉澤の胸のペンダントを触り、感心したように頷いている。

呆然とソレを見詰める石川の顔から血の気が引いていく…

吉澤が約一ヶ月ぐらい前から掛けているペンダントは
今、親し気に談笑する女性からのプレゼントと、
石川は勝手に思い込んだのだ。



---それが理由?---

---ふざけるんじゃないわよ---




433 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:11 ID:ynAlHsgq

ユラリと現れた幽鬼の表情の石川に、吉澤と飯田がギョッとした。

嫉妬に駆られた鬼に吉澤が後退りし、飯田は
「…お、お邪魔みたいね」
と、造り笑顔で、石川を見ないようにしながら石川の横を通り過ぎた。


「な‥何しに来た?」

ある意味、KEIより怖い石川の存在に吉澤の喉がゴクリと鳴った。

「誰?…今の女?」

「…お、お前には関係…」

「ふざけるな!」

ビクリとする吉澤。

「私の気持ちを知ってるくせに!!」

「…あぁ、知ってる」

「だったら、なんで関係無い なんて言えるのよ!!」

「…お前、なんか勘違いして…」

「何が勘違いよ!今、この目で 見たんだから!!」

叫ぶ石川の声は震えている。


434 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:17 ID:ynAlHsgq

「……」

「わ、私の事が嫌いになったなら…ちゃんとそう言ってよ!!」

「……」

「言いなさいよ!!」

「…」

「言えよ!!」

「…」
それでも答えない吉澤は、黙って石川を見詰めるだけだ。

2人の間の空気は固まり、暫らくの時間 沈黙が続く…


「…もう…」

沈黙を破ったのは石川だ。

「もう、いいわよ…」

そう言って俯(うつむ)く 石川の口元は、引きつったような作り笑い…

「…今日は覚悟を決めてきたの…」

「…覚悟…?」
聞き返す吉澤に向かってコクンと頷く石川。


435 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:18 ID:ynAlHsgq

「何も答えてくれなきゃ、死ぬって…」

「ハァ?」

顔を上げた石川の頬に流れる涙…

「さよなら…」

言いながら、脱兎の如く走り出した石川は、道路に飛び出して両手を広げた。

そこに突っ込む一台のトラック…



目を閉じてトラックに轢(ひ)かれたと思った
石川が薄く目を開けると、そこは吉澤の胸の中だった。

「アホ…俺がお前を嫌う筈が無いだろう」
右手をテレポートさせ、石川の襟を掴んで引き戻した吉澤は、
そのまま石川の頭を抱いて耳元で呟いた。

何故、吉澤の胸に抱かれてるのか解からないが、そんな事はどうでもいい…

「だって、だって…」
ポロポロと涙を零す石川は、
吉澤の胸に顔を埋め、自分からギュッと抱きついた。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000047.jpg



436 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:19 ID:ynAlHsgq

---吉澤の薔薇のペンダトントがチクリと痛む---


「…お前には、随分と隠し事をしてて、済まないと思ってる」
抱きつく石川の髪を撫でながら、吉澤は自分の秘密をバラす覚悟を決めた。

「……」
今度は石川が黙る番だ。

「俺のせいで、藤本の心臓が盗まれた…
藤本が登校出来ないのは、その為だ」

「…」

「俺は藤本の心臓を取り戻す」

吉澤の静かだが決意のこもった言葉に、石川が顔を上げて吉澤を見る。

「…私も手伝う」

吉澤は、静かに首を振った。

「危険だから、今までお前を遠ざけていたんだ…」

「でも…」

「お前は黙って見ていろ」

そう言いながら、石川が飛び出した道路の向こう側に佇む人物を
射るように見止める吉澤の瞳は、静かな決意に燃えている。


437 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:21 ID:ynAlHsgq

先程から薔薇のペンダントがチクチクと刺すように
反応しているのは、そのせいだ。

黒いラバー製のボディスーツに身を包んだKEIは
射抜くような視殺線を吉澤に送っていたのだ。


「もう直 終わる…」

「本当…?」

「あぁ…この件が終わったら…」

吉澤の唇が石川の耳元で何事かを囁き…
それを聞いた石川の瞳はハッと見開き、
腰がカクンと抜けて、呆けた様にペタリと地面に座り込んだ。


呆ける石川の元を そっと離れた吉澤が進む先には
KEIが待ち構えている。


フと我に返り、石川が振り向く先には対峙する吉澤とKEI…

「よっすぃ…」
立ち上がり、駆け出そうとする石川を
後ろから抱き止める万力の美しき細腕。

「…吉澤の秘密を知りたいんだろ?」

飯田圭織は石川の耳元で囁いた。

438 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:28 ID:ynAlHsgq

「…貴女は、さっきの?」

「あぁ、吉澤を この世界に引き込んだ張本人だ…
変な勘違いをしないでね」

ニッと笑う飯田は石川を そっと離して警察手帳を見せた。

「警察の人?」

ウンと頷く飯田。

「吉澤の恋人かい?」

そう聞かれて真っ赤になる石川は、それでもコクンと頷いた。

「だったら、未来の旦那さんの仕事振りを最後まで見届けるんだよ」

飯田は対峙する吉澤とKEIを見詰める。

「よっすぃ‥警官になるの?」

「…あぁ、それも私と同じ『魔人ハンター』としてね」

余裕有り気に答える飯田だが、さすがに心配なのか、
吉澤とKEIを見る その額には うっすらと汗が浮かんでいた。







439 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:29 ID:ynAlHsgq
吉澤の顔を見た瞬間から保田の心臓はドクンと脈打ち、
近付く吉澤の姿に鼓動は激しくなった。


まだ日が高い午後の時間に、まばらだが人が行き交う路上で
向かい合う、吉澤と保田の間に流れる空気は、そこだけ温度が低い…


「保田圭と言う」

名乗る保田の声は枯れていた。

「何故名乗る?」

「お前の夢を毎日見る…」

「で…?」

「私は夢の中で、毎日お前に殺されている…」

「……」

「その夢でお前が名乗るんだよ…吉澤ひとみってね」

風に煽られサラサラとした髪を靡かせる吉澤の透き通る瞳を
正視出来ない保田は、ふと視線を外した。

「だから、私の名前も知って欲しくてね…それで名乗った」

吉澤は肩を竦めて「別に知りたくは無いが…」と続けた。

「何故、俺は夢の中でアンタを殺すんだ?」

440 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:36 ID:ynAlHsgq

スウッと吉澤が右手を上げて指差すのは保田の左胸。

「それが原因か?」

ハッとして心臓の部分を押さえる保田は、形相を変えて吉澤を睨み付ける。

「…やはり、お前…知っているな?」

ビキビキと音を立てて形を変える保田の右手…

薄く微笑む吉澤は五指を広げた。

「…返して貰うよ、ソレはアンタの物じゃ無い」


バッと5メートル程後ろに跳び、保田は構え直した。

「私が名乗ったのは、もう一つ理由が有る」

キリキリと軸足に体重を乗せて一気に距離を縮めるべく腰を落とす。

「それは…」

言いよどむ保田には、言葉に出来ない秘めた理由がある…

「死んでから、あの世で考えな!」

叫んで、一気に吉澤の懐に飛び込む。




441 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:37 ID:ynAlHsgq

瞬時に吉澤の懐に飛び込み、心臓を抜き取るのには
0,5秒もあれば充分な距離、5メートル。

たった5メートル…

しかし、その5メートルの距離は
保田にとって奇異な感覚に身を委(ゆだ)ねる夢幻の回廊になった…

視界に広がる真紅の薔薇の絨毯…

幻を見たのだ。

それは正に永延の時を彷徨(さまよ)う白昼夢…


吉澤の右手の指が一本一本自分の胸に溶ける様に沈み込む感覚。

毎日見る『悪夢』と同じ夢を 今 見ている…

これは夢だ…

解かっているが、どうしようも無かった…

吉澤はひっそりと冷笑を浮かべて、保田の心臓を握り締める。

「ぁぁああ…」

心臓を引き抜かれる感覚に全身が恍惚の身震いを始める。


442 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:39 ID:ynAlHsgq

「貴女の愛した男に殺されれば本望でしょう?」

耳元で誰かが囁いた…

「キサマ!」

声の主は薔薇の香りに包まれた美貌を湛える、藤本美貴だった。

その藤本の微笑みは、こう語っている。

---全てお見通しよ、貴女は愛する男を殺せない---

「ふざけるな!私は、断じて愛してなどいない!」

否定は空しい事だとは解かっている…

これは、夢なのだ。

「愛するなんて有り得ない!私は一流の暗殺者なんだ!」

それでも、否定する保田の叫びに、藤本は含み笑いで応じる。

「嘘を付かなくてもいいのよ…
証拠に貴女は彼を殺していないもの」

「殺してない…?」

「ふふふ…」と笑う藤本の声と、視界を覆う薔薇の花弁…


「…殺してない…‥?」

443 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:40 ID:ynAlHsgq





ハッと気付き、現実に戻った 保田の禍々しく曲がった鉤爪は
吉澤の心臓に突き刺さる事無く、ピタリと左胸の上で止まっていた。



「また、夢で お前に殺された…」

吉澤の冷たい視線に吸い込まれそうになりながら
独り言のように呟く、保田の唇からは一筋の血が流れている。

「…夢ではない」
表情と同様、冷たい吉澤の返答。

「なにを…!?」

そこまで言って保田は気付く…
吉澤を想うだけで高鳴る、自分のハートが鼓動していない事に…

ゲフッと咽(むせ)た口から大量の血を吐き、崩れ落ちる保田の視界の隅に
見覚えのある臓器が目に入った。

それは、吉澤を殺し、本当の意味で自分の物になるはずだった心臓…

ダラリと下ろした吉澤の右手には脈打つ藤本の心臓が握られていたのだ。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000049.jpg



444 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:44 ID:ynAlHsgq


「返してもらったぜ…」

愛する男は、にべも無く言い放つ。


「…どうやって抜いた?」

大の字になった保田の最後の言葉…


「…教えない」

保田の想いなど知る由(よし)も無い吉澤は、最後まで つれなかった…










445 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/01/26 22:46 ID:ynAlHsgq
今日はココまでです。
次回は、ちょっと先になりまして2週間後ぐらいになる予定です。
スマソ           では。

446 :ジェット ◆aJ1VZFRNi2 :04/01/27 16:26 ID:VEQjU2f+
カッケースレ発見!

447 :名無し募集中。。。:04/01/28 11:20 ID:KTMWfumc


448 :名無し募集中。。。:04/01/28 20:23 ID:OP7UNkv9


449 :名無し募集中。。。:04/01/29 20:26 ID:AiEnydce


450 :名無し募集中。。。:04/01/30 21:28 ID:ktou9tnJ
穂是゛ん

451 :名無し募集中。。。:04/01/31 04:34 ID:1jKBsZpa
n

452 :名無し募集中。。。:04/02/01 04:47 ID:NAeS2A5K
フォ

453 :名無し募集中。。。:04/02/01 16:47 ID:Xdy3UnK0
スレタイからは想像しない世界がここにあった!

454 :名無し募集中。。。:04/02/01 16:49 ID:Z7X/r5GB
UnKOて

455 :名無し募集中。。。:04/02/02 00:15 ID:596Q80H/
>>453 神だ・・・。

456 :名無し募集中。。。:04/02/02 00:46 ID:+DPNKIBa
UnK0の言うとおりだな

457 :ねぇ、名乗って:04/02/02 16:34 ID:S53UngKx
狼ってどうやって板ボタンに登録するの?
ギコナビ使ってるんですが・・・
羊と鳩しかない・・・

458 :名無し募集中。。。:04/02/02 18:39 ID:8qpRO1ZK
>>457
狼は羊、鳩とは別の下の方の「雑談系2」にある

459 :名無し募集中。。。:04/02/05 01:46 ID:kz4yI8ux
test

460 :ねぇ、名乗って:04/02/06 15:51 ID:hhQ3AtW+


461 :ねぇ、名乗って:04/02/07 09:13 ID:CNHSv/0W
>>1
お前もカスだね

462 :名無し募集中。。。:04/02/08 15:48 ID:Q3EHTZA9
なっちが最近全然出てこないな
登場人物が多すぎて、誰がどうなってるのかよく分からん

463 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:28 ID:uOGB0jui

――― 17話 KEI後日談 ―――


朝娘市警察病院。
以前、パパラッチ田代の遺体が司法解剖された病室に
保田圭の死体がベッドに横たわっていた。

ベッドの横には大型の機械が静かに動いていて、
機械から伸びる2本のチューブが保田の死体の左胸に収まり、
透明なチューブからは、赤い血液が流動しているのが見える。

機械は大型の血液ポンプだった。

微かに動く保田の胸は呼吸している。

つまり、保田は生きているのだ。


保田の傍(かたわ)らに立つのは田代の時と同様、
サイコメトラー平家みちよ…


飯田が吉澤に、保田を殺すのを譲る代わりに付けた条件…
----「出来る限り綺麗に殺せ」----
その理由が此処に有った。


「さてと、貴女の記憶を全て貰うよ…
終わったら、そのチューブを抜いて機械を止めてあげる」


464 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:28 ID:uOGB0jui


意識の無い保田の額に手をのせる平家の手の平は
肌と融合するかのように溶けて沈む。

「掴んだわ」

脳味噌を掴んだ平家の脳内に保田の記憶が全て入り込み、
必要な情報だけを選別し、それを引き出す。

死んでいる人間から情報を取り出すのと違い、
生きている人間から記憶を引き出すのは容易で、
引き出される情報にも雲泥の差がある。

殺し屋の情報が欲しい飯田が、吉澤に頼んだ殺しの条件は
この事を見越してのことだったのだ。


「凄い…KEIは『人造舎』の人間だったのね」

今まで謎のベールに包まれていた『人造舎』の深部の情報が
引き出せた喜びに、滑(ぬめ)る唇をペロリと舐める
平家の表情は恍惚のソレだ。

「この情報が有れば一生遊んで暮らせるわね」




465 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:28 ID:uOGB0jui

ポンプの電源を切って手術室を出ようとした平家は
ふと振り返り、完全に冥府に旅立った保田の顔を見た。

その死顔は、安らかなのか、それとも無念なのかは分からない。

だが、一瞥をくれただけで向き直る平家の顔には、
哀れみの表情が宿っている。

それは、今まで生きてきた保田の記憶を垣間見た
サイコメトラーとしての職業病なのかもしれない…

知らずに涙が頬を伝っていたのだ。

他人の人生の記憶ほど、悲しいものは無いのだから…








466 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:30 ID:uOGB0jui

平家は手術室を出ると、待ち構えている飯田に向かってウィンクをした。

「おおきに飯田さん、凄い情報が手に入ったわ」
「ふーん」

「いい物が手に入った代わりに、ただで一つだけ情報を提供するわよ」
「おいおい、一つかよ…」

「フフ‥商売、商売、あとは買ってね」
「ハ‥ハハ…」

平家がチラリと飯田の隣に目を移す…
そこには吉澤、それと石川という少女が待っていた。

平家を連れて来た飯田が居るのは当たり前だ…
まぁ、吉澤が居るのも理解できる。
だが、何故、吉澤の知り合いというだけで
石川梨華と名乗る少女が着いて来ているのか?

平家にとっては、どうでも良い事だったが、少しだけ気になった。
石川は平家に対して、興味を持っているようだったからだ。

だから、聞いてみた。

「私に興味が有るみたいね?」

石川はウンウンと頷く。


467 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:31 ID:uOGB0jui

「何故?」

「だって、魔人ハンターには情報屋っていう強力なパートナーが必要でしょ?
飯田さんが平家さんを必要としているように…」

「…貴女も情報屋になりたいの?」

ニッコリと笑って「ハイ」と返事をする石川の後ろで、
飯田と吉澤が拝むように手を合わせ、苦笑いで「ゴメン」と合図している。

どうやら、石川という少女は無理矢理 着いて来たらしい…

「平家さんの弟子にして下さい」

「…ハァ?」

石川の後ろに隠れるように身を縮めている2人をキッと睨み付けると、
飯田と吉澤の拝み手はハエのように擦り合わせている。

「……ハ ハ ハ…」

乾いた笑いが警察病院の廊下に木霊した…






468 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:32 ID:uOGB0jui




帰り道、平家は(石川が情報屋になる事を諦めさせるために)
手相を見てあげると、石川の手を取った。

「手相なんて見れるんですか?」

「ハハハ、まぁね」

勿論、過去を見ることは出来るが、未来の出来事を見ることは出来ない、
だが、テレビに出てるような占い師よりは当たるほうだ。
朧気(おぼろげ)ながらだが、漠然とした予知は出来るのだ。

「…うん?」

おかしな感覚だった。
石川にサイコメトラーの要素は全くと言って無いし、
将来においても無さそうだ。
他の能力についても、その欠片(かけら)さえも見当たらない。
只単に普通の女子高生だ。

だが…しかし…

極近い未来、確実に この娘の何かが変わる…

手相を見て、こんな感覚になったのは初めてだった。



469 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:33 ID:uOGB0jui

「どうかしました?」

「いや…」

不安気に聞く石川に首を振って見せ、
「貴女、少し間 私の手伝いをしてみる?」
と、聞いてみた。

「本当ですか!」
手を叩いて喜ぶ、石川に微笑みながら頷いて見せた平家は、
自分に関心を寄せる、この少女の近い未来に起こる筈の
出来事?に興味が沸いたのだ。


「おい、いいのか?」
本気なのか、と聞く飯田に「ええ」と答えて、
平家は石川に「行きましょ」と促し、
呆然と見送る飯田と吉澤にニーッと笑って見せた。










470 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:34 ID:uOGB0jui

窓一つ無い真っ暗な室内で、車座になって座る3人の少女…

白い布を巻いて目隠しをした少女達の中心には、
頭蓋骨が置かれていて、そのドクロをロウ台に
一本の太いロウソクが立てられ、揺らめく小さな炎が
瞑想をする少女達を薄く照らしていた。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000050.jpg

「死んだ!保田が死んだよ!」
「殺された!相手は手強いよ!」
「私達の秘密も盗まれたよ!」
「盗んだのは記憶を読み取る情報屋だよ!」
「ここの場所も知られたよ!」
「大変だ!あっちには警察が付いてるよ!」
「殺されるよ!次は私達が殺されるよ!」
「殺される前に殺さないと駄目だよ!」

次々に喋りだした少女達に
「その情報屋は、警察に情報を流したの?」
と聞いたのは、『人造舎』の連絡係、
3人の少女達が陰で『マメ』と呼んでいる新垣里沙という少女だった。

保田の動向を追うように社長の北野から指示されて
保田が自宅マンションを出てから、『六鬼聖』と呼ばれる
少女達を使い、その少女3人が力を合わせる事で可能になる秘術、
『鬼術其の一、千里眼』を用(もち)いて保田を追っていたのだ。
(ちなみに鬼術は其の六まで有るので六鬼聖と呼ばれている)

「警察には、まだ話してないよ!」
「でも、バレるのは時間の問題だよ!」
「早く情報屋を殺さないと、殺されるのはこっちだよ!」

471 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:34 ID:uOGB0jui

「…で、その情報屋って?」

「知らないよ!」
「保田が死んだから、探れないよ!」
「これ以上は無理だよ!」


「…ちぇ、使えない子達だねぇ」

「なんだって!」
「許さないよ!」
「謝りなよ!」


「…ウグッ!…い、痛でぇ!!」
ギュルギュルと腸が捻じれる感覚に、新垣が腹を押さえて のた打ち回る。
『鬼術其の四、超念転』で内臓を掻き回され、
涙ながらに謝って、新垣は解放された。


「と、とにかく、殿に連絡しないと…」

顔面蒼白になりながら『六鬼聖』を睨み付け、
新垣はポケットから携帯を取り出した。








472 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:35 ID:uOGB0jui


吉澤の無期停学は解除され、藤本も登校する事になり、
久しぶりに3年B組にも活気が戻っていた。

昼休み、弁当を広げていると 遅い登校の藤本の高笑いが
廊下に響いて来る。

「ゲッ、あの笑い声は…」
「また、石川と喧嘩するな」
仲良く弁当を食べていた安倍と矢口が顔を見合す。

その石川は嫌がる吉澤にベタベタと くっ付き、
廊下に響く藤本の高笑いを聞きながら、立ち上がり 手を上げて
「重大発表よ!みんな、聞いて〜〜!!」
と、クラスの注目を引いた。

「実はぁ、私とよっすぃは近いうちに結婚する事になりました〜!
きゃー!パチパチパチ」

どよめく教室に、目が点になる吉澤。

矢口はオレンジジュースを噴き出し、
安倍はコロッケを喉に詰まらせて咽(むせ)た。

「ななな、何言ってんだ、アイツ」
「が、学生結婚だべ!高校生夫婦だべさ!」


「この前、よっすぃが約束してくれたんだよ!」
皆に向かって手を振る石川はハッピーの極致だ。


473 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:39 ID:uOGB0jui


「有り得ませんわ!バカバカしい!」
教室に戻った藤本は開口一番、石川を指差し怒鳴りつけた。

「吉澤さんは、私を命懸けで助けてくれたのよ!」

「だから、何よ?」

「それ程、私の事を想ってくれてるって事だわ、
愛情の深さが違いますのよ!」

「単なる同級生を救っただけじゃん、
よっすぃはね、私と結婚の約束をしたのよ!」

さすがにムッとする藤本に向かって、ニーッと白い歯を見せた石川は、
目が点になってる吉澤にニコリと少女のように微笑んだ。

「ねぇ、よっすぃ?」

喜びいっぱいで聞いた石川に向かって出た、
吉澤の答えは「約束してない」と、そっけない。

一瞬「へ?」と顔が固まる石川。

「何言ってんのよ!あの時言ったじゃない!結婚しようって!」

「言ってない」

石川の言う『あの時』とは、保田との魔戦の時、
吉澤が石川を抱きしめて、耳元で囁いた時の言葉だ。


474 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:39 ID:uOGB0jui

吉澤は確かに『あの時』、『結婚しよう』と、言った。
だがそれは、殺気を放つ保田の存在に気付いた吉澤が、
足手まといの石川を黙らせるために付いた方便、
つまり、嘘の言葉だったのだ。

それを吉澤は、石川が浮かれて発表した、今の今まで忘れていた。

「言いました!」

「言ってない」
それでもシラを切り通す吉澤。

「言ったもん!」
石川は涙目だ。

フウっと溜め息を付いて「やれやれ…」と肩を竦める吉澤に、
藤本が「ほらね」と鼻で笑った。

「そんな事より、私と貴女では、歴然とした差が出来ましたのよ」

「な、なによ?」

「…私も吉澤さんと同じ世界に棲む人間になったという事」

フフンと勝ち誇る藤本の言葉に、ピクリと反応する吉澤。


475 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:40 ID:uOGB0jui

「どう言う事よ?」
詰め寄る石川に背を向けた藤本は
「ホ〜ホッホッホッホ」と何時もの高笑いで返した。

「逃げるの?」
クラス中に恥を晒した石川はプルプルと震えている。


少し振り向いた藤本の横顔は、ポツリと囁くように呟いた。

「いずれ分かる事よ…」


高笑いをしながら、クラスの取り巻き連中と
談笑する藤本の背中を見る、石川の唇はワナワナと振るえ、
それを見た吉澤は、コッソリと教室から逃げ出した。


「…逃げたべさ」
「いつもの事だろ」

事の成り行きを見守っていた、安倍と矢口も
いつものクラスに戻ったと、顔を見合わせてクスリと笑った…







476 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 18:44 ID:uOGB0jui
お久しぶりです。今日はココまでです。
次回更新も未定って事で、スマソ。

>>462
次回はなっちと矢口の物語です。
…確かに、解かり辛くなってるかも。。。
後で、登場人物紹介を書いて貼っときます。    では。


477 :名無し募集中。。。:04/02/08 18:57 ID:ugol/4mS
ハナゲ乙
やっぱ登場人物把握しにくいねぇでもガンガレ

478 :名無し@チャチャチャ:04/02/08 19:21 ID:06W+7/lx
でもこの三人のやり取り好きよ俺
藤本はとりあえず、白百合つぼみの成長したバージョンだと勝手に脳内変換

479 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 21:10 ID:uOGB0jui
『魔界街』登場人物紹介

安倍なつみ:私立ハロー女子高3年B組。
        MAHO堂で修行する魔女見習い。
        使い魔は白猫のメロン。矢口と仲が良い。
        ハロー製薬部長の父を持つ恵まれた家庭に育つ。
        (真夏の光線の時のイメージ)

矢口真里:私立ハロー女子高3年B組。
       MAHO堂で修行する魔女見習い。
       使い魔は猫のヤグ。安倍と仲が良い。
       (ミニモニリーダーの時のイメージ)

辻希美:市立朝娘中学3年。MAHO堂で修行する魔女見習い。
     家が貧乏で、同じ長屋に住む飯田圭織を慕う。使い魔はハムスターのマロン。
     加護、紺野と仲良し。
      (中三の時のイメージ)

加護亜依:市立朝娘中学3年。MAHO堂で修行する魔女見習い。
       小料理屋を営む母親と二人暮し。使い魔はハムスターのボンボン。
       辻、紺野と仲良し。
        (中三の時のイメージ)

紺野あさみ:市立朝娘中学3年。MAHO堂で修行する魔女見習い。
        どんな死の病に感染しても死なない特異体質の少女。
        ハロー製薬の実験体だったが、辻達に救出されて、MAHO堂に住み込む。
         (5期新人の時のイメージ)


480 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 21:10 ID:uOGB0jui
飯田圭織:朝娘市警察の特殊刑事(デカ)。別名、魔人ハンター。
        (今のイメージ)

吉澤ひとみ:私立ハロー女子高3年B組。
        魔界街での影響なのか?男に変わった元女。
        ただし満月の夜は女に体に戻る。
        右手をテレポートさせる事が出来る。
        魔人ハンター見習い。家庭は極普通。
         (4期で入った頃のクールな美少女の時のイメージ)

石川梨華:私立ハロー女子高3年B組。
       吉澤を慕う天然ハッピーな女子高生。
       夜中に外出しても怒られる事の無い複雑な家庭環境に身を置く。
        (ハッピーなイメージ)

藤本美貴:私立ハロー女子高3年B組。高慢チキな生徒会長。
       ハロー製薬専務の一人娘。吉澤を慕う。
       魔人KEIに心臓を盗まれた事によって特殊能力を身に着ける?
        (美貴帝なイメージ)

平家みちよ:『スナックみちよ』を経営するサイコメトラー。
        普段は17時から0時まで営業するスナックママ。
        だが真の家業は午前3時から開業する情報屋。
         (スナックママのイメージ)

中澤祐子:MAHO堂を経営する、齢200歳の魔女。
       辻達に辛く当たるも、実は可愛くてしょうがない。
        (200歳の婆のイメージ)

石黒彩:石黒音楽事務所社長。中澤の元弟子の魔女。
     あややと高橋愛の2人のアイドルを抱える敏腕社長。
      (若く見えるが実は80歳の魔女のイメージ)

481 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 21:11 ID:uOGB0jui

松浦亜弥:私立ハロー女子高2年A組に通うスーパーアイドル。
       通称あやや。彼女の出自については不明。
        (ぁゃゃのイメージ)

高橋愛:市立朝娘中学3年。辻達の同級生。
      新人アイドル。石黒を師事に仰ぐ魔女見習い。小悪魔的な存在である。
       (現在の高橋のイメージ)

後藤真希:朝娘市警察の巡査。魔人ハンターを志す。
       (今のイメージ)

殿:犯罪組織『人造舎』主催。盲目の白髪鬼。

新垣里沙:犯罪組織『人造舎』の連絡係。
       (豆のイメージ)

6期生:犯罪組織『人造舎』に所属する六鬼聖と呼ばれる3人組。
       (今のイメージ)

小川麻琴:小川姓発祥の寺、小川神社の末妹。巫女さん。鬼拳小川流拳法の使い手。
         (今のイメージ)

小川直也:小川神社の長兄。全国に散らばる小川一門を手中に治めるべく
       小川家当主、小川龍拳と対立。鬼のように強い。
        (そのまんま)
        
なお、この物語は日本とは魔震で隔離した陸の孤島、朝娘市、通称 魔界街で
繰り広げられる娘達の青春奇譚である。

482 :ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/08 21:15 ID:uOGB0jui
>>477
人物紹介貼ったぜ。
>>478
ありがとうございます。
イメージは一応書いたけど適当なので、皆様のご自由に。

483 :名無し募集中。。。:04/02/09 22:12 ID:uYiBOQ98
人物紹介乙
がきさんのキャラが俺のつぼだ

484 :名無し募集中。。。:04/02/09 23:53 ID:d+iEjsN6
ハナゲ乙

人物紹介で登場人物のイメージがふくらんだよ

マコの登場が楽しみ

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