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娘。小説作家養成塾〜実戦編〜

1 :名無し募集中。。。:03/11/18 08:54 ID:3vJPvyjT
 ボツネタや思い付いた設定はあるけど文章に起こせない人。
 書きたいけどネタや設定が浮かばない人。書いてもしっくりこない人。
ここでお題をだして短編を作ってみよう。
添削はこちらのスレで
携帯用
http://i2ch.net/z/---/M5/1068275525/
PC用
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1068275525/


2 :名無し募集中。。。:03/11/18 14:39 ID:XNdIIqlb
          |     |/ ◎◎ \|
          |     |  ◎◎◎=3
      ノハヽヽ.    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ε=(´Д`O) 
        ( つ⌒O───────────────
      / ヽつ"つ =3
    /     ブッ

3 :名無し募集中。。。:03/11/18 15:51 ID:C6Du5dul
>>1

書いたことないけど始まったら挑戦してみよ

4 :名無し募集中。。。:03/11/18 16:23 ID:dddJQa0i
>>1
ありがとう(●´ー`●)
お題は『デパート』からでいいんかい?

5 :名無し募集中。。。:03/11/18 17:54 ID:MoANhqil
関連スレ

小説総合スレッド8
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1053530764/

6 :名無し募集中。。。:03/11/18 22:59 ID:HFqRvPrV
消えちゃいそうだから書いといてあげる

7 :名無し募集中。。。:03/11/19 00:23 ID:Lb1y9OIl
初回テーマはこれでいいんですか?
33:名無し募集中。。。 11/09 02:16 fipQf71D [sage]
いくつか設定考えてるけど起こせないのあるし、試しに一つ上げるよ。

タイトル:デパート

ストーリー
小さな町にデパートが出来た。
オープン前に町の住民から数名にモニタリングしてもらうことに。
しかしそこには、招かれざる客が居てモニターと従業員を人質に立て篭ってしまう。
モニターと従業員が力を合わせ脱出を試みるが…

配役

モニター:現娘。メン+α(安倍・飯田・矢口辺りが主役)
従業員:中澤・保田・後藤+α
オーナー:つんく
招かれざる客:福田・石黒・市井・平家

8 :名無し募集中。。。:03/11/19 00:30 ID:Jx8g/rlj
いいんでない?とりあえずやってみんことには。
それで問題があるようだったら、色々考えていけばよか。

9 :名無し募集中。。。:03/11/19 02:34 ID:7Z1+Tbrr
中途半端で続きも出来そうにない感じでちょっとだけ書いてみました。

〜〜〜〜デパート〜〜〜〜

(あれからどのくらいの時間がたったのだろう・・・)

今度の日曜に開店するデパートのモニターに選ばれて、
今日来たは良いけれど、いきなり店内に閉じ込められて人質にされてしまった。
布で口をふさがれ、腕と脚はきつく縛られた状態のままで身動きがとれない。

遠くの時計売り場から時刻を告げる音が聞こえてくる・・・
ひとつ・・・・ふたつ・・・・みっつ・・・
四回目以降の音が聞こえない。

(もう三時かぁ・・・・あと、どのくらいここにいればいいんだろう・・・)

周りにはモニターとして来ていた客と、このデパートの従業員の人達。
みんな私と同じ格好で一箇所に集められていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

こんな感じでいかがでしょう?

10 :名無し募集中。。。:03/11/19 18:08 ID:Jx8g/rlj
やっぱり書き手としても、読み手としても、
全部書いてから載せた方がいいのではないでしょうか。
分量はまあ20レスぐらいを目安にして。

で、>>9についてですが、書き出しだけなんでなんとも言えませんが、
人質にされるまでの経緯をパラパラッと書いてしまうのは、ちょっともったいない感じ。
これからの話の流れによっては効果的になるかも知れないけど、
書き出しだけとしてみると、いまいちインパクトにかけるかなぁ。と思います。
でもそんなことより、最初に載せたことに対して拍手。

みんなこんな感じで気楽に書いちゃえ!

11 :名無し募集中。。。:03/11/19 18:48 ID:Lb1y9OIl
川‘〜‘)<どんどん盛り上げていきまっしょい!!

まぁオレはまだ書けてないんだけどな

12 ::03/11/19 20:18 ID:i6zyG7+w
飼育で一本短いのをはじめて書かせて貰いました。
批評、アドバイスを頂ければ凄く嬉しいのですが、ここのスレでお願いできるんでしょうか?

6期で、しかも微妙にエロなんですけど・・・

13 :名無し募集中。。。:03/11/19 21:47 ID:Jx8g/rlj
>>12
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1068275525/
こちらでどうぞー。作品のアドレスも載せてね。

14 :名無し募集中。。。:03/11/20 01:07 ID:8UucWcbq
思案しながら保全

15 :名無し募集中。。。:03/11/20 11:52 ID:8UucWcbq
保全しながら考え中

16 ::03/11/21 01:17 ID:1a+ZuRck
単なる保全だったと考えてもらえると助かります。(^^;

17 :名無し募集中。。。:03/11/21 13:56 ID:qNvlyf+p
保全

18 :名無し募集中。。。:03/11/22 02:00 ID:mcFyk+7L
ほしゅ

19 :名無し募集中。。。:03/11/22 14:09 ID:bJHK/mTO


20 :名無し募集中。。。:03/11/23 01:42 ID:W+oWUeDd


21 :名無し募集中。。。:03/11/23 18:01 ID:R8vlq3yK
どこぞで下手くそながら小説書かせてもらってる者です。
保全がてら書いてみました。(どう考えても長編になりそうなんで途中までですが…。)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「んん…あれ?」

いつの間にか眠ってしまったらしい。
矢口は家具売り場のベッドからゆっくりと降りる。
そして、すぐにこのデパートの様子がおかしいという事に気付いた。

「なんで誰もいないんだろう?」

たしかにここのデパートはもうすぐ閉鎖されるということで、普段から客足は少ない。
(だからこうやってたまにここで勝手に寝ちゃったりしてるんだけどね。)
だが、それにしてはあまりに静かすぎる。
というより、人の気配が感じられない。
もしかして閉店まで寝ちゃったとか?
そんなことを考えた時、矢口は外がやけに騒がしいことに気が付いた。

「…サイレン?」

外からパトカーらしきサイレンの音が微かに聞こえる。
それもかなりの量のようだ。
もしかして…。
矢口の頭の中に考えたくもないような最悪なシナリオがよぎる。
しかし、次の館内放送によってそのシナリオが現実に起こっているということを思い知らされた。

22 :名無し募集中。。。:03/11/23 18:02 ID:R8vlq3yK

『警察の諸君、このデパートは我々が乗っ取らせてもらった!人質の命が惜しければ直ちに我々のいうことを聞け!』

はぁ…なんて運が悪いんだ、と矢口は心の底から思った。
なんで寝に来ただけなのに(ってそれもどうかと思うが…)、こんな目に遭わなきゃいけないんだろう…。
私ってやっぱりこういう悲劇のヒロインになっちゃう運命なのかなぁ…、なんて暢気な事を考えながらふと思った。

「よく考えたら、私がいるってまだばれてない?」

周りに人の気配はまったくない。
という事、強盗は私の存在に気付いていないのだろう。
そう考えると少し気が楽になった。
と同時に、なぜか突拍子もないことを思いついてしまった。

「私がヒーローになれるかも!」

思った事はどうしても行動に出てしまう私…。
せっかくだから逃げちゃえばいいのに。
なんでこう変な事に首を突っ込んじゃうんだろうか…。
つくづく損な性格だな、と私は改めて思った。

「人質がいるって言ってたよなぁ〜、とりあえず探してみるか。」

そして矢口は勇敢にも一人、今最も天国に一番近いであろう場所へと歩き出した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
とりあえず、こんな感じで。
よかったら感想などお願いします。

23 :名無し募集中。。。:03/11/23 21:57 ID:8IA+owyZ
>>21-22
そのまま別スレ立てて最後まで長編を完結させてください。

24 :名無し募集中。。。:03/11/24 01:53 ID:z+mM5dIZ
おお、なんかたまにシリアス入るホームアローンみたいになりそう
面白そうなのでよかったら続きも書いてください。

25 :名無し募集中。。。:03/11/24 11:55 ID:yFxk4UnK
昔似たような設定の小説を書いたことがある。
…と保全がわりに宣伝してみる。
http://mseek.nendo.net/gold/1035892620.html

26 :名無し募集中。。。:03/11/24 12:41 ID:hApQBJR6
>>21-22
面白い
是非、続きも読みたいね
ただ、>>22の矢口の最後の台詞の前の部分

〜つくづく損な性格だな、と私は改めて思った。〜

ここは「私は思った」っていうのはちょっとおかしくない?
矢口の一人称で語られる小説ではないんだし・・・
矢口の心の中の独白だけど、ここは「私」が主語ではおかしいと思った
とにかく、そういう小説の「視点」には注意して書くといいかも



27 :名無し募集中。。。:03/11/24 12:54 ID:42r8eOQm
>>26
確かにちょっと変かも、私がなくても意味通じるし。
あの時私はこう思った、とか過去形と現在形の使い分けって結構、間違う
こと多いからね。

28 :21-22:03/11/24 14:40 ID:4ruIuXFL
皆さん、いろんな意見ありがとうございます。
一度書いてみる方向で検討してみまつ。

>23
羊だと立て辛いようなので、別スレ立てるなら空板とかの方がいいですかね?

>24
実は先のことなど全く考えていなかったという罠w

>26-27
経験が浅いのでそういうのをご指摘してもらえるとホントに助かります。
よければ今後もご指導よろしくお願いします。

29 :名無し募集中。。。:03/11/24 22:11 ID:Zvxc1lce
氏にスレで書けば良いのでは?

30 :21-22:03/11/24 22:50 ID:4ruIuXFL
>29
↓ではこの辺にでも書いてみることにします。
ttp://ex2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1063816701/l50

31 :名無し募集中。。。:03/11/25 11:32 ID:J/oyL4jc


32 :名無し募集中。。。:03/11/26 00:24 ID:We0sa2kn
堅守

33 :名無し募集中。。。:03/11/26 00:31 ID:x3QsK5Ou
そろそろ次のお題に移ってもいいんじゃないかと思うんだけどなんかない?

34 :名無し募集中。。。:03/11/26 19:50 ID:TSHuo342
デパートで途中まで書いてる人もいそう。
次からは期限付けてやってった方がいいかも。
あと、デパートみたいにストーリーを設定するんじゃなくて、
前スレでもやってたけど1シーンの設定の方がサクサク進むかもね。

35 :名無し募集中。。。:03/11/26 23:13 ID:VQ0WYYpJ
>>34
ここは、ストーリーを実戦的に書くところなんじゃない?
それは向こうでするって言ってたよ

36 :名無し募集中。。。:03/11/26 23:23 ID:WsS4Z5Il
>>35
あっちは相談に来た人の文の批評、分析を中心にしたいからって事にな
ってこのスレが立ったんだと思ったけど?

37 :名無し募集中。。。:03/11/27 21:53 ID:KRMBPHXd


38 :名無し募集中。。。:03/11/28 15:17 ID:YTwdDduE


39 :名無し募集中。。。:03/11/28 19:52 ID:/GeSbip0
今、初めて見たんだが、誰も設定や色彩を指摘してやらなかったのか?

40 :名無し募集中。。。:03/11/29 00:44 ID:XrZGs4X4
なんか誉めてるだけだよね。こんなんじゃ意味ないかも。


今回のお題は12/7でしめ切ってどう運営するかとか話し合った方が良くない?


41 :名無し募集中。。。:03/11/29 00:56 ID:Mt9oMshc
創作文芸板に似たようなスレがあるから参考にしてみたらどうだろう。

42 :名無し募集中。。。:03/11/29 14:32 ID:XrZGs4X4
スレタイ何?

43 :名無し募集中。。。:03/11/29 16:02 ID:OdkeVjBO
>>39 どういうこと?

あと、>>40に賛成。今のままだとこのまま中途半端に終わりそうだわ。
でも一番の問題は人がいないことなのだけど。

44 :名無し募集中。。。:03/11/29 18:35 ID:lB3H3UVZ
ども。一応羊で書かせてもらってる者です。

前にも書いたと思うんですが、
自分の作品すら忙しくて進まないんですよね。

できればいろいろ書いて皆さんに批評していただきたい気持ちはたっぷりあるんですが・・・・・
自分の作品の読者のみなさん(いるのかどうかわかんないですけど)を放置しているようでなんかいまいち踏み切れません。

45 :39:03/11/29 21:42 ID:RPi1GqSX
上記の小説は、一人称と三人称の区別ができてない。
行動や展開の説明ばかりで、背景のない漫画を見ているみたいだ。

46 :添削:03/11/29 23:12 ID:9EycMvKQ
「んん…あれ?」

いつの間にか眠ってしまったらしい。
矢口は家具売り場のベッドからゆっくりと降りる。
そして、すぐにこのデパートの様子がおかしいという事に気付いた。

「なんで誰もいないんだろう?」

たしかにここのデパートはもうすぐ閉鎖されるということで、普段から客足は少ない。
だからこうやってたまにここで勝手に寝ちゃったりしてるのだが。
だが、それにしてはあまりに静かすぎる。
というより、人の気配が感じられない。
もしかして閉店まで寝ちゃったとか?
そんなことを考えた時、矢口は外がやけに騒がしいことに気が付いた。

「……サイレン?」

外からパトカーらしきサイレンの音が微かに聞こえる。
それもかなりの量のようだ。
もしかして…。
矢口の頭の中に考えたくもないような最悪なシナリオがよぎる。
そして、館内放送によってそのシナリオが現実に起こっているということを思い知らされた。

47 :添削:03/11/29 23:19 ID:9EycMvKQ
『警察の諸君、このデパートは我々が乗っ取らせてもらった!人質の命が惜しければ直ちに我々のいうことを聞け!』

はぁ……なんて運が悪いんだ、と矢口は心の底から思った。
なんで寝に来ただけなのに、こんな目に遭わなきゃいけないんだろ……。
私ってやっぱりこういう悲劇のヒロインになっちゃう運命なのかなぁ…、なんて暢気な事を考えながらふと思った。

「よく考えたら、私がいるってまだばれてない?」

周りに人の気配はまったくない。
という事は、テロリストは私の存在に気付いていないのだろう。
そう考えると少し気が楽になった。
と同時に、なぜか突拍子もないことを思いついてしまった。

「私がヒーローになれるかも!」

思った事はどうしても行動に出てしまう私……。
せっかくだから逃げちゃえばいいのに。
なんでこう変な事に首を突っ込んじゃうんだろうか……。
つくづく損な性格だな、と矢口は改めて思った。

「人質がいるって言ってたよなぁ〜、とりあえず探してみるか」

そして矢口は勇敢にも一人、今最も天国に一番近いであろう場所へと歩き出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
とりあえず文章上おかしいところの添削だけしてみた。人称の間違いと脱字、…を……に、会話文の最後の『。』、
接続詞の間違い(一レス目の最後の文)、強盗をテロリストに。
そんでもって今度は自分なりに同じ設定で書いてみようと思う。

48 :名無し募集中。。。:03/11/29 23:31 ID:9EAOwVR2
>>46ー47
どうせだったらやるんだったら
>>そんなことを考えた時、矢口は外がやけに騒がしいことに気が付いた。

こーゆうとこも直してみて。一人称のトコに矢口って入ってるのは変だよ

49 :名無し募集中。。。:03/11/29 23:31 ID:9EycMvKQ
「んん……、あれ?」

ぼんやりとする頭を二三度振って、私はあたりを見渡した。
見覚えのある風景。とあるデパートの三階家具売り場。
そうだ。たまにやるように、今日もここで売り物のベッドに寝転んでいたらいつのまにか寝てしまったのだ。

「それにしても……」

まるで全ての音がブラックホールみたいな穴に吸い込まれてしまったような静寂。
普段必ず流れている有線さえ今は聞こえてこない。
……私以外に、このフロアーに人がいないのだった。

そのことに、脳が水をかけられたように萎縮する。
まさかもう閉店してしまったのか。
そうだとしたらどうすればいいのか。
店の人にこっぴどく怒られるんじゃないか。
そんな不安が胸の中を飛び回っていた。

「……サイレン?」

微かに、パトカーのサイレンの音がした。それも、デパートのすぐ近くから。
どうやらかなり台数は多いらしい。
尋常じゃない状況に、頭がくらくらするのを私は感じていた。

50 :名無し募集中。。。:03/11/29 23:36 ID:9EycMvKQ
一レス目だけでいいか。こんな感じでどうでせう。
>>48
うーん、おかしいかな。自分にはよくわかりません。
まあ内容の添削はまた別に誰かがということで。

51 :名無し募集中。。。:03/11/29 23:45 ID:PwWeFiYn
>>49
ちょっと「〜のように」の比喩がうるさいような気がするが。
「ブラックホール〜」と「脳が水を〜」は、
比喩自体としてはとても面白いと思うんだけど、
続いてしまっていると、少ししつこい感もあるかな、と。

「・・・サイレン?」の部分へのつなぎが少しおかしいかな、と。
原文では「外が騒がしい」と言うのでつなげていたが、
ちょっと飛んでしまった感がある。

批評厨でスマソ。

52 :名無し募集中。。。:03/11/30 00:18 ID:R6cj0LwE
どうもありがとう。比喩好きなもんで…。
なんだか直書きで書いたせいか自分で見直してもへんな感じだなー。

53 :添削w:03/11/30 00:25 ID:kN1aDD6O
「んん…あれ?」

いつの間にか眠ってしまったらしい。
おいらはきょろきょろと辺りを見回しながらそっと家具売り場のベッドから降りた。
どうも、デパートの様子がおかしいのだ。

「なんで誰もいないんだろう?」

たしかにこのデパートはもうすぐ閉鎖が決まってるぐらいだから、普段も客足は少ない。
だからこうやって勝手に寝ちゃったりもできるんだけどさ。
ただ、それを差し引いてもあまりに静かすぎる。
というより、人の気配がまったく感じられない。
もしかして閉店まで寝ちゃったとか?
ぼんやりとそんなことを考えていると、外がやけに騒がしいことに気付いた。

「……サイレン?」

外からパトカーのサイレンらしき音が微かに聞こえてくる、見上げると窓際の天井がチラ
チラ赤く光っていた。
どうもかなりの量のようだ。
もしかして、まさか。
頭の中に考えたくもないような最悪なシナリオがよぎる。
おいらなんか警察に捕まるようなことやったっけ……不法侵入、とか?

そして、館内放送によってそのシナリオが現実に起こっているということを思い知らされた。


54 :名無し募集中。。。:03/11/30 01:23 ID:0xxq0a2K
初心者的な質問で悪いんだけど、
ここのお題で書いた小説はここに載せるの?
それとも、氏にスレに載せて直リンするの?

55 :名無し募集中。。。:03/11/30 01:54 ID:V+2l++tS
>>54
他スレ行きってのは、お題を元にして連載とかする人用で長く書く場合だ
から基本的にここでOK。

56 :21-22:03/12/01 01:50 ID:Xg0vJZRD
自分の文章をこうやって添削してもらえると嬉しいですね。
書き手さんによって表現方法がこうも変わってくるものなんですね。
いろいろと勉強になります。
自分で書いといて今更ながら気付いたんですが、矢口が自分のことを「私」と言ってることにワロタw

57 :54:03/12/02 02:40 ID:jDzM89/n
なるほど
>>55さん、ありがと〜

問題は小説が全然書けない事なんだよな〜(w

58 : :03/12/06 11:18 ID:gLYg/2UE
明日いっぱいで今回のお題は終了です!!
書けた人はうpお早めに。

59 :名無し募集中。。。:03/12/08 01:53 ID:4MrSgOAn
書けた人はおらんのかいな?

60 :名無し募集中。。。:03/12/08 23:40 ID:OO4NC2Bi
やっぱ短めにさらりと書けるお題の方がとっつきやすいかもね。
と言いつつ、お題の案は無いわけだけども。

61 :名無し募集中。。。:03/12/12 01:20 ID:mT5NpT+y
期待ほぜ

62 :名無し募集中。。。:03/12/15 20:44 ID:iDsJkIbS
しょうがねえな。
まずは、起承転結からだ。

起=娘がライブを終えた。
承=いつものようにホテルへ移動した。
転=深夜に火事がおきてパニック。
結=辻のいたずらだった。

これを4レスくらい使って三人称で書いてみろ。
三人称というのは、神の声とか言われるやつだ。
それが終わったら、辻以外のメンバーの一人称だな。

63 :名無し募集中。。。:03/12/27 01:59 ID:i9h709cN
あげ?

64 :名無し募集中。。。 :03/12/29 22:15 ID:atpq60TS
>>62
”結”だけは自由に書けるようにした方が、書きやすいんじゃない?


65 :名無し募集中。。。:04/01/07 23:38 ID:AwulEQZw
今年初カキコ。

66 :名無し募集中。。。:04/01/14 15:36 ID:rHdfIRxq
x

67 :名無し募集中。。。:04/01/15 02:25 ID:aywoGaKS
 スレが進まないので、ちょっとしたイベントしませんか?
・『卒業』を題材に30レス以内の短編を上げる(リアル・アンリアルは問わない)
・作品を添削する
という流れです。投稿期間は大体二〜三週間。
添削期間は次の企画が始まるまで。
いかがでしょう??

68 :名無し募集中。。。:04/01/15 04:01 ID:Z9JfxfYc
おもしろそうだし良いとおもうよ。
ただ俺あんまり長くかけない方だから書いても短くなると思うんだけど、
最低何レスとかはあんの?

69 :名無し募集中。。。:04/01/15 12:18 ID:aywoGaKS
最低は無くていいと思うよ。
1レス〜30レス程度でいいんでないかい??

70 :名無し募集中。。。:04/01/15 23:56 ID:7zC1nGHN
賛成賛成。
添削は養成塾の本スレで随時やってっても良いんじゃない?

71 :67:04/01/16 00:47 ID:xE27y35p
>>70
川o・-・)<そうですねぇ。
(●´ー`)<向こうも進んでないからね。
(〜^◇^)<何気に酷い事言うねぇ〜。
川o・-・)<それよりいつから始めたらいいと思いますか?
(●´ー`)<なっちは、1/20〜25から始めるのが時期的にいいんでないかって思うんだけど…
(〜^◇^)<でもさルールとかも詰めないといけないよねぇ〜。
川o・-・)<皆さんのご意見聞かせてください。


72 :名無し募集中。。。:04/01/16 22:02 ID:Xrx7fBkc
ほぼ>>67の通りで問題無いかと。
投稿期間はあんまりダラダラするのもちょっと嫌だから、
2週間で良いんじゃない?開始日時はお任せ。

それと、小説総合スレにちょろっと宣伝しといた方がよろしいかと。

73 :提案した人。 ◆BCYN6LaZJw :04/01/17 01:22 ID:dTACSvv5
一応考えてみました
・『卒業』を題材に30レス以内の短編を上げる(リアル・アンリアルは問わない)
・投稿期間は1/21 0:00〜2/4 23:59まで。
・必ず完結させたものを上げる事。
・投稿時、名前欄はタイトルを入れる。
・作品の最後もしくは次レスに『完』や『終わり』というように終了を明確に記す。
・作品を上げる時に前の作品が完結しているのか確認を。
・添削は『娘。小説作家養成塾 其の2』で随時行う。
このような感じでいい?

74 :名無し募集中。。。:04/01/17 20:14 ID:qJl+XZkH


75 :名無し募集中。。。:04/01/18 01:18 ID:NvKQe3Eb
俺はそれでいいぞ。

76 :提案した人 ◆BCYN6LaZJw :04/01/18 17:44 ID:BFjfwr8i
>>73を総合に貼りました。是非参加してくださいね。

77 :仕事:04/01/21 00:02 ID:26C9RQOW
 私の存在意義とは何なのか。
いつもそう思っていた。
ライブ会場でも私は考える。
それが、どこか無愛想なのかもしれない。
べつに、本気で交信してるわけじゃない。
私は考える時間がほしかった。
これまでも、これからも。

「飯田、仕事が終わったら卒業やで」

つんく♂さんにスタジオに呼ばれた。
この人の言うことは、どうも理解できない。
私の仕事? それはお客さんを元気にすること。
それがモーニング娘。というアイドルの仕事だ。
違うのか? それとも、他に仕事があるのか?
わからない。私にはわからない。

「ふう」

今日はライブがある。
久しぶりの横浜アリーナ。
新春ハロプロツアーの中日になる。
私はメンバーより遅れて楽屋入りした。
すぐにリハーサル。これは疲れる。

78 :仕事:04/01/21 00:02 ID:26C9RQOW
「圭織。乙女組、気合が入ってるねえ。さくら組も負けないよ」

なっち。
私、仕事が終わったら卒業だってさ。
仕事って何かなあ。
よくわかんないよ。
また考えることが増えた。

「飯田さぁん。お話があるんですけどぉ」

作ったような声が私の神経を逆撫でする。
私の至福の時間を邪魔する黒い顔した石川。
考える時間を邪魔されるのは、マジで腹がたつ。
絶対に暴力はいけない。なんてTVで言わなきゃよかった。
そうすれば、この無神経な女にヤキをいれられる。

「ののとあいぼんが卒業しちゃうじゃないですかぁ」

それがどうした。
卒業なんて詭弁じゃないか。
アイドルには自分の意志など必要ない。
この、乙女組の楽屋にも、多くの操り人形がいる。
私は操り人形のリーダー。
操り人形にリーダーなんか必要ない。
それが解かるまで、6年もかかった。

79 :仕事:04/01/21 00:03 ID:26C9RQOW
「メンバーだけで、送別会をしませんかぁ? 」

送別会?
まるで、左遷されるみたいだな。
圭ちゃんや後藤は、完全な左遷だった。
ハロプロのソロで成功してるのは松浦だけだ。
なっちはどうなるんだろう。

「いいじゃん! 焼肉をガンガン食おうぜ! 」

―――藤本。こいつも黙ってれば可愛いのに。
性格がきついとか言われてるけど、要するにワガママなだけだ。
大人になりきれてない。だから娘。に入れられたんだ。
私が甘やかしてるのだろうか。―――わからない。

「押忍! 藤本さん。田中は焼肉、賛成です! 」

「よっしゃー! そうと決まれば、小川! 焼肉屋の予約しろ」

「は? はははは―――はい! 」

こんなことでいいのか?
小川は年下だけど、娘。では先輩だろ?
藤本には注意しなきゃいけない。
でも、藤本は私の話を聞いてくれるだろうか。

80 :仕事:04/01/21 00:04 ID:26C9RQOW
「藤本、ちょっといい? 」

私は藤本を廊下に連れ出した。
藤本にもプライドがあるから、みんなの前では注意できない。
今の娘。で藤本が一目おいてるのは、私となっち、矢口の3人だけ。
なっちと矢口は、さくら組だから、私が注意しなくちゃいけない。

「何ですか? 」

「小川は先輩でしょう? 少し気をつけなきゃね」

廊下にはスタッフもいるから、私は小声で注意した。
ところが、藤本は迷惑そうに舌を鳴らす。
このままじゃ駄目だ。藤本のためにならない。
藤本は集団生活に慣れてないんだ。

「何? その態度は! 」

けじめをつけなくては。
私は藤本の髪をつかみ、廊下の壁に叩きつけた。
鈍い音がして、藤本の眉あたりから血が流れる。
驚いた藤本は額に手をやるが、指の間から血がこぼれた。

「藤本さん、焼肉屋って―――うっ! 」

小川が楽屋から出てきて、血まみれの藤本を見て固まる。
私は藤本に暴力を振るった。これじゃ、TVでの公約違反だ。
そんなことはどうでもいい。藤本にわかってもらいたい。

81 :仕事:04/01/21 00:05 ID:26C9RQOW
「小川、なっちを呼んできて」

「はははははは―――はい! ここここここ―――こえーよおおおおおおー! 」

血まみれの自分の手を見て、藤本は私を睨んだ。
どうした? 文句があるなら、かかって来なよ。
私は藤本くらいなら、余裕で相手になれる。
勝てる自信があるから、藤本を壁に叩きつけたんだ。

「痛いなあ! 」

「甘えんじゃないよ! 」

私が脇腹を蹴ると、藤本は涙を流しながら苦しんだ。
解かってほしい。何で私が怒ったのか。
何で苦しい思いをしなきゃいけないのか。

「圭織! 何してるんだべさ! 」

なっちは驚いてたけど、私が落ちついてるから安心したみたい。
自前の救急箱からガーゼを出して、藤本の傷の手当てを始めた。
それを、小川が震えながら見てる。
冷たい廊下の床に倒れた藤本が、少し可哀想になった。

82 :仕事:04/01/21 00:06 ID:26C9RQOW
「深くないべさ。バンドエイドでいいっしょ」

「安倍さん。飯田さんはひどいですよ。いきなり壁に叩きつけるんですから」

なっちに言いつけるとは、藤本も莫迦だ。
私となっちは、苦楽をともにした仲。
お互いの気持ちは、嫌というほどわかる。
まだ、子供なんだろうね。

「圭織が怒るなんて、よほどのことだべさ。藤本が悪いよ」

「どうして? あたしは怪我したのよ! 」

藤本は泣きながら走って行った。
まったく、世話のやける子だ。

「全部見とったで」

「裕ちゃん」

「うちに任し。心配せんでええから」

裕ちゃんは、ほんとうに頼りになる。
娘。を卒業したのに、私は甘えっぱなしだ。
藤本にも、いい機会かもしれない。
裕ちゃんと、できれば圭ちゃんの話も聞いてもらいたい。

83 :仕事:04/01/21 00:07 ID:26C9RQOW
 裕ちゃんが藤本に、どんな話をしたのかはわからない。
でも、それから藤本は素直になった。
小川を顎で使うこともなくなったし、娘。に馴染んできたみたい。
あいかわらず、私にツッコミを入れたりしているが、
以前のようなワガママな態度はとらなくなった。

「藤本、イイ感じだよ」

私がそう言うと、藤本は嬉しそうに笑った。
これでいい。藤本はようやく娘。になれたのだ。
私がしたことは、決して正しいことではないだろう。
でも、藤本はわかってくれた。それでいい。

「―――仕事」

つんく♂さん。私の仕事は終わりました。
これからは、矢口や石川、藤本が娘。を引っぱって行きます。
卒業の意味が、ようやくわかりました。
ありがとうございます。




     ――――― 終 ―――――


84 :コドモの卒業:04/01/21 20:57 ID:62ixBwEM
私もそろそろ卒業の時が近づいていた。
この国の人々は十五歳の誕生日に国家の組織を卒業し、国から出て行かねばならないことになっている。
それは血路だ。
この国の頽廃には目を覆うものがある。流行病が猖獗を極め、犯罪が跋扈し、人々の双眸に希望の色を見て取ることはできない。そんな国に、私、亀井絵里は生まれてきた。
人口たったの百名。国民全員が十五歳以下で「チルドレン」と言う組織に属している。掟は唯一つ、この国から出てはいけないということだけだったが、それを破ると確実に死が待っているとのことだ。実際に掟を破った人間がいるかどうかは知らない。
ここは子供の国なのだ。何もしなくても食事は出る。ある程度の医療も教育もある。もちろん教育なんかは放棄する者も少なくはないが。
豊かではあるがそれをもてあまし、頽廃している。それがこの国だ。

85 :コドモの卒業:04/01/21 20:58 ID:62ixBwEM
しかしただで卒業できると言うわけではない。十五歳の誕生日の前日、両足の小指を切り落とされるのだ。それを私たちは「卒業の儀式」と呼んでいた。
私には友達が二人いた。れいなとさゆみだ。彼女たちは私より年下だから、三人の中では私が最初に卒業ということになる。
私の誕生日が近づくにつれ、不衛生な街角で私たちは外の世界について語ることが増えた。もちろん「卒業の儀式」も話題にのぼった。これまでの艱難も慰めあった。

そしていよいよ、「卒業の儀式」の日になった。公開されてはいるが、見物人はれいなとさゆみだけだ。
私は台に載せられた。うつ伏せで寝転がったため、足は見えない。そんな私のまわりを二人の男女がせわしなく動く。やがて右の小指に何かが塗られたかと思うと、脳まで衝き抜けるような痛みの炎が熾った。息が詰まり背筋が凍る。じっとりとした汗を脇や手のひらに感じた。
やがて左足の小指も切り落とされた。じんじんとうねるような痛みが私を襲う。それで儀式は終わったが、私はしばらくそこで身悶えていた。


86 :コドモの卒業:04/01/21 21:01 ID:62ixBwEM
その日の夜、私は足の痛みに呻吟し、一睡も出来なかった。しかし翌日になると少し痛みはおさまった。
このぶんならいつか痛みも完全に消え、足の指が十本あったことも忘れてしまいそうだ。しかし、
「絵里さん、元気で。」
「あたしいつか絵里さんに会いに行きます。」
この二人のことは一生忘れないだろう。門の外に一歩踏み出すと、私の目の前には渺茫たる世界が広がっていた。



*「改行が読みにくい」、「会話の最後の。はいらない」以外でおながいします。

87 :瞬間スライダー:04/01/21 23:36 ID:qsnbB0Je
 あいぼんの投げたボールは、空をゆるやかなに横断しながら私のミットに。
 太陽が眩しくて少し目を凝らした。

「曲がった?」
「ううん、全然」

 キャッチボールなんて初めてだった。ご丁寧にグローブまでつけて。女の子の人生には一生ご縁のない遊びかもしれないから、きっと忘れることのできない日になる。

 だけど、初めてだけど初めてじゃない感じ。



88 :瞬間スライダー:04/01/21 23:38 ID:qsnbB0Je
 私は腕を大きく振り上げて、地面を平行線に走る直線的なボールをあいぼんに返す。
 あいぼんは少し慌てながらそれをとる。

「なかなか曲がらへんな」
「そんな簡単なもんじゃないでしょ」
「おとんに教えてもらってん。こうすれば曲がるって」

 そう言ってあいぼんはボールと睨めっこしながら、真っ白いボールに真っ白い指を忙しなく動かしている。

「次は曲がるで」
「はいはい」

 あいぼんが言う。私は返す。

 そう、これはいつもと何ら変わらない、同じようなキャッチボール。



89 :瞬間スライダー:04/01/21 23:40 ID:qsnbB0Je
 楽屋に入ってくるなり、いつものように私の膝の上を占拠するあいぼん。
「痛っいなぁー。少しはダイエットしろよー」
「うわぁっ! よっすぃーに言われたないわ!」
 あいぼんが私のほほを引っ張る。私はあいぼんのおでこを叩く。
 そんなことやり合ってたら、あいぼんが急に大人しくなってこう言った。
「なぁ、よっすぃー。──キャッチボールせえへん?」
「はぁ? キャッチボール?」
「うん、キャッチでボール」
 ふと見た、あいぼんの横にはスポーツ用品店の名前が入った袋が置いてあった。
 私の視線に気付き、あいぼんは嬉しそうに袋をひっくり返し中身を放り出した。
「買っちった」
 そこには新品のグローブとミット。そして真っ白い軟球のボール。
「うぉ! 本格的だな」
「ホンキホンキ。あいぼんはいつだって本気なの」
 じゃあこれ、と言ってあいぼんは私にミットを渡す。


90 :瞬間スライダー:04/01/21 23:41 ID:qsnbB0Je
「あ、ちょっと待ってよ。なんでグローブ二つじゃないのさ」
「お店の人が、受け取る側の人はこれですよ、って言ってたもん」
「なんだそれ? 私が取る側って決まってるの?」
「そんなん当たり前やん」
「なんだそれ」
 私は笑ってあいぼんをこずく。
「だってよっすぃーやったら私がどんなボール投げても取ってくれそうやん」
「なんでよ?」

「面積でかいやん」
「お前に言われたないわ!」


 そして私達は投げあう。



91 :瞬間スライダー:04/01/21 23:43 ID:qsnbB0Je
 青い空を渡りながら、茶色い地面を走りながら。
 ゆるやかな曲線を描きながら、真っ直ぐな線を引きながら。
 少しずつ距離は離れて行って、だんだん私達の声は大きくなる。

 あいぼんは投げる。

「曲がったやろ!」
「曲がらへん曲がらへん!」

 私は返す。

「なぁよっすぃー」

 また慌しく、ボールに指を絡めながらあいぼんは言う。

「なぁーに」
「よっすぃーはいつだってあいぼんのボール取ってくれるんやろ!」

 相変わらずボールと睨めっこしながら、大声で言う。



92 :瞬間スライダー:04/01/21 23:45 ID:qsnbB0Je
「おう! いつだってとったるでぇー!」

 ミットを一度叩いて、私も大声で返す。

「もう一歩離れたって取ってくれるんやろ!」
「おうおう! 何歩離れたって取ってやる! この吉澤様に不可能はなぁーいっ!」

 あいぼんの指が止まった。ボールに不器用にかかった指を見つめて、一度にやりと笑った。

「…いっくでぇー!」

 あいぼんが顔を上げて言う。腕を大きく振り上げる。

「おう、どんとこい!!」

 私は膝を少し折って、ミットを構える。


 あいぼんの投げたボールは、空をゆるやかなに横断しながら私のミットに。
 太陽が眩しくて少し曲がって見えた。




                                         おわり 

93 :卒業への道〜辻希美編〜:04/01/22 06:23 ID:cNctqqf3
私とあいぼんがモーニング娘。卒業を発表して数日後、私の下にやけに重いものが入った段ボール箱と、一通の手紙が届いた。
箱はしっかりとガムテープで口を塞がれている。
中身はなんとなくだが本類っぽい。
そして手紙の方は、なんの変哲もない普通の封筒に普通の便箋だ。
しかし、私は本能的にこれらのものがあまりよろしくないものだということを感じ取った。
いわゆる女の勘というやつだ。
まあ、そんなものがあてになるかといえばこの部屋が埋まりきってしまうくらい『?』といった感じだが…。
もしかしたら、何か重要なものということも考えられなくもない。
あれこれと考えてみるが、とにかく読んでみなければ何も始まらない、そう判断した。
ということで、何はともあれ、まず私はその手紙を読んでみた。
--------------------------------------------
辻希美へ

お前、モーニング娘。を卒業するらしいな。
そこでひとつ、お前に言っておきたい事がある。
お前は岡女の生徒として、成績があまりにも悪い。
だから、お前には抜き打ち卒業試験をする。
当然、点数が低かったら岡女には残すから。
日程は追って連絡する。

岡村女子高等学校教師 岡村隆史
---------------------------------------------


94 :卒業への道〜辻希美編〜:04/01/22 06:25 ID:cNctqqf3

はぁ……。

お世辞にも上手とはいえない走り書きしたようなこの手紙を読み終え、私は思わずため息を漏らす。
とりあえず、抜き打ち試験を予告してるってとこは置いておこう。
こんなの冗談じゃない。
なんで私だけこんなことをしなければいけないのさ?
確かに私はバカ女になっちゃったけどさ。

はぁ……。

ダンボールを開けてみると、そこには幸か不幸か、参考書らしき本がぎっしり詰まっていた。
そんな愛情があるのなら、極楽の加藤さんを一生私に近づけさせないでほしいものだ。

はぁ……。

その日から私、辻希美の卒業のための地獄のような猛勉強の日々が幕を開けたのであった。

95 :卒業への道〜辻希美編〜:04/01/22 06:26 ID:cNctqqf3
ある日。
私は体育の参考書を読んでいた。
どうやら今回の抜き打ち(?)卒業試験、期末と同様の5教科に加え、体育、音楽、芸術なんてのもあるらしい。
ただでさえ忙しいのに、と、私はひとりでぶつぶつと愚痴をこぼしながらも参考書に目を通す。

「珍しいな、のの。あんたが本なんて読むなんて、今日は地震でも起こるんとちゃうか?」

私の相棒、あいぼんこと加護亜依が茶かを入れてきた。
よく考えたら、この禿も私と2点違いじゃん。
なのに、何で私だけこんな目に遭わなきゃいけないんだ?
腸が煮えくり返りそうな怒りを心の奥に押し込め、私はあいぼんに事の次第を説明した。

「ま、この2点の差が、バカ女とそうでないものの違いや。」

そんなことをクソ女の禿に言われても説得力ないな…。
そんな口には出せないような事を心の中で思っていると、あいぼんは私の勉強を手伝ってくれると言ってくれた。
さすが、持つべきものはハ…じゃなくて友だ。
とりあえず、お手並み拝見ということで問題を出してみる。

96 :卒業への道〜辻希美編〜:04/01/22 06:27 ID:cNctqqf3

「ハロプロが現在行っている、サッカーに似た、ボールを蹴って試合をする競技は何?」

あいぼんは頭を抱え、そして何かが閃いたのか、手をパチンと叩いて勢いよく答えた。

「わかった!テナガザルや!」

今度は私が頭を抱える。
そして、とりあえずつっこんであげる。

「蹴る競技なのに、手が長くてどうするのさ。」
「じゃ、アシナガザルか?」

ダメだこりゃ。
さすがはクソ女、こと運動に関しては貫禄が違う。

「何かサルやったんは覚えてるんやけどなぁ、ミザル・キカザル・イワザルあたりやったっけ?」

卒業のための猛勉強はまだまだ続く。

97 :卒業への道〜辻希美編〜:04/01/22 06:46 ID:cNctqqf3
数日後、今日は社会の参考書を読んでみる。
娘。は全体的に社会は弱いので、これがよかったら結構目立ってただろうな。
そんな事を思っていたら、後ろから誰かが声をかけてきた。

「のの、お勉強中?えらいねぇ〜。」

社会が大の苦手の、なちゅみこと安倍なつみ。
日本で一番高い山が『ヒマラヤ山脈』、学校の地図記号で『奇妙な標識』を書いたという伝説を持つ、超天然だ。
例にもよって、なちゅみも手伝ってくれるらしい。
だが、今回はどうにも嫌な予感しかしない。
断ろうとも思ったが…。
そんなに笑顔で言われると断りにくいことこの上ないんだよね。
私は仕方なく諦める。
とりあえず、する必要もないだろうけど、なちゅみのお手並みを拝見してみる。

98 :卒業への道〜辻希美編〜:04/01/22 06:48 ID:cNctqqf3

「今のアメリカの大統領は誰でしょう?」
「クリキントン!」

間髪入れず答えられた。
はぁ…。
なちゅみ、それじゃ岡女の時の一の舞、二の舞、三の舞だよ。

「あれ、違ったっけ?じゃあクリオコワ?クリアンカケ?クリボー?」

なちゅみ、こんなんで岡女を卒業しても大丈夫なんだろうか?
間違った答えを必死で思い出そうとしているなちゅみを見ると、私はなぜか悲しくなってきた。

「わかったわかった!クリームシチューだ!」

卒業のための猛勉強はまだまだ終わらない。

99 :卒業への道〜辻希美編〜:04/01/22 06:49 ID:cNctqqf3
数日後、今日も社会の参考書とにらめっこをする私は、必死に日本の農業について暗記中。
食べ物に関してだけは、私もそこそこ頑張れる。
暗記をしつつ、頭の中で各地の名産品を浮かべては消してを繰り返していた。
伊達にミニモニ。で♪ささかま〜ささかま〜、なんてやってない。

「のんつぁん、ちょっと…あ、お勉強中?」

岡女の才女、紺ちゃんこと紺野あさ美。
岡女ではいっつもこの紺ちゃんと比べられる。
あ〜、私も紺ちゃんくらい頭がよければ、こんな苦労をしなくてもよかったのに…。
はぁ…。

「どうしたの、何か悩みでもあるの?」

紺ちゃんならなんとかしてくれるかな…。
私は紺ちゃんに事の次第を説明し、ぜひ私の手伝いをしてほしいと依頼した。
紺ちゃんはお菓子1週間分でなんとか手を打ってくれた。
実は紺ちゃん、こういうところは意外と抜け目がないのだ。
そして早速、不要かもしれないが、私はとりあえず紺ちゃんのお手並みを拝見させてもらう。

100 :卒業への道〜辻希美編〜:04/01/22 06:52 ID:cNctqqf3

「日本でじゃがいもの生産量1位の場所はどこ?」

すると、紺ちゃんは一生懸命真面目に考え始めた。
真面目に考える。
真面目に考える。
真面目に考える。
真面目に真面目に真面目に……。
一時間後、私の意識があるか否かという限界のところにまでやってきていた時、ようやく紺ちゃんが口を開いた。

「1位はやっぱりさ、王道のポテトサラダじゃない?」

その瞬間、私はガラにもなく、思わずこけてしまった。
んなあほな…誰が好きな芋料理ランキングを聞いたんだよ。

「のんちゃん、大丈夫?」

お前が大丈夫かよ、と言ってあげたい。
はぁ、このまま私が娘。を卒業してしまって大丈夫なんだろうか?

「あ〜、頭使ったらお腹空いたからお菓子食べに行こっと♪」

私の猛勉強は全然進まない。


−完−

101 :ばいばい:04/01/25 04:00 ID:VM9Q9CGg
「圭織、考えすぎなんだよ!そういう優しさは優しさじゃない。ウンザリしてくる」

私となっちがまだ2人で暮らしていた頃。
お互いに限界を突き抜けてしまった日、なっちは私にそう言った。
決定的だった。
私は千切れるほど唇を噛み締めて、なっちの言葉に耐えた。

程なくして、私たちは居を別に構えた。

その日から降り積もった時間に、あの頃の思いや感情は過去の堆積となって埋もれ、
今となっては何をあんなにいがみあっていたのかは覚えてない。
そのきっかけすらも。

私はなっちを、なっちは私を許せなかった。
なっちが涙を隠さずに叫んだ言葉だけが、はっきりと私に刻まれている。
事実だけが、ただ記憶として残った。

きっと、些細なズレが積み重なって、
気がついた時には大きな亀裂ができていただけのこと。
今なら、そのズレがその人の個性なんだと受け入れたり、
やんわりと距離を置くことだってできるのに。



102 :ばいばい :04/01/25 04:02 ID:VM9Q9CGg

───
──

『ちょっと、圭織、聞いてんの?』
電話の向こうからなっちの明るい声が聞こえる。

「ん?聞こえてるよ」
『嘘だぁ〜、またお酒飲んでるんでしょ。
聞いたよ、裕ちゃんから。量が増えてるんだって?』
「いや、飲んでないよ」
ワインのコルクを空いた手で転がしながら、意味もなく嘘をついた。

『ほんとに?』
「ホントだって」
『いや、絶対に飲んでるね』
「さすがに飲まないよ。明日はなっちの最後なんだから」
『だから心配してんの。無様な二日酔い顔でDVDに映って欲しくないの』

紗耶香と裕ちゃんの時、無様な醜態を晒してたの誰だよ。
そんな時期もあったね、なんて笑って流されそうだったから、言わなかった。

『圭織?・・・やっぱり飲んでるっしょ?』
「飲んでないって。そんなに心配なら、こっち来て確かめたら?」
『わかった。今から行く』
「え?うそ。ちょっと待っ──」


103 :ばいばい:04/01/25 04:04 ID:VM9Q9CGg
なっちは勝手に電話を切ってしまい、そのまま電源まで切ってしまったようだ。
本当に来るんだろう。
私に来るなと言わせない為に、なっちは電源を切った。
腐れ縁が故の理解を苦笑で吐き出し、半分ほど残ったワインを見る。
隠そうとも思ったが、酒の匂いに敏感ななっちには、すぐにバレてしまうだろう。
それに、冷蔵庫の脇でオブジェのように積まれている酒瓶を見られては、説得力も何もない。

なっちは食事の途中に電話してきたのだろう。
電話の向こうは騒がしかった。
のんちゃん、あいぼん、紺野にシゲさん。
腹ぺこ組は、間違いなくみんなと食事に行っていることだろう。
と、ここでのんちゃんと紺野の体調不良を思い出す。
矢口もあいぼんも、やはり全快ではなかった。
なっちの卒業を前に、どこか冷静でない自分がいる。


104 :ばいばい:04/01/25 04:06 ID:VM9Q9CGg

私はライブが終わってすぐ、
事務所に戻るという車に乗せてもらい、途中で降ろしてもらった。
一応、ホテルが用意されていたのだが、私は家に戻った。
これだけ人数が多くなれば、古株である私の多少のワガママは簡単に通る。
今、モーニング娘。についてるスタッフの多くは、
私よりもずっと後になって入って来たんだから。

何となく、一人になりたかった。
みんな、なっちよりも残される私に気を使っているのがわかる。
だからといって、何でもないフリはしたくなかったし、
一人でホテルの部屋に篭るなんてもっと嫌だった。

部屋の照明を全て落とし、無理して買った一目惚れのソファに身を埋める。
目を閉じ、深く呼吸する。
鼓動と、エアコンから吐き出される温風、
耳鳴りのようなパソコンのモーター音に車の往来。
そのどれもが、私を取り巻く静寂の隅に、ぽつぽつと存在するだけ。
つい数時間前に立っていたステージの、怒号のような咆哮が嘘のようだ。

モーニング娘。の今をスタートさせた一曲が、セットリストから外されていた。
LOVEマシーンの頃、なっちは当たり前のようにセンターにいた。


105 :ばいばい:04/01/25 04:10 ID:VM9Q9CGg
そのLOVEマシーン時のメンバーが5人いなくなり、明日になればもう1人。
あの頃から12人もメンバーが入り、夏になれば、その中から2人抜ける。
入ってきた当時は本当に小さくて、泣いたり拗ねたり笑ったり。
幼子のように喜怒哀楽を表現していた2人がモーニング娘。を離れ、2人で歩いていく。

常に変化していくモーニング娘。にあって、
唯一、結成当初から一度も動いていない私。

手探りでグラスを取り、一気に呷った。
口の端から一筋こぼれ、首筋を伝う。


「ったくよー、みんな勝手に去って行きやがって」
てきとーに見繕った独り言は、何の余韻もなく暗闇に吸い込まれた。



106 :ばいばい:04/01/25 04:12 ID:VM9Q9CGg

──

ほどなくして、本当になっちがやってきた。
私がドアを開けると、暗っ、と笑い、すぐに、臭っ、と酒の匂いを嗅ぎ当てた。

「別に私の勝手でしょ」
私はそう言いながら、なっちにスリッパを差し出し、部屋の電気をつける。
細かく明滅しながら部屋が一気に光を取り戻すと、
私の視界は一瞬白み、眩暈がしてよろけてしまう。
「『勝手でしょ』なんて、なーに甘ったれたガキみたいなこと言ってんのぉ」
そうなっちはヘタクソに私の真似をして、崩れそうになる私を支えた。

大丈夫だから、と私は自分で歩き始めると、なっちは黙って私の後をついてくる。
「まあ、何もない部屋だけど、ゆっくりしてってよ」
なっちはソファに座ると、置きっぱなしにしてあったワインのボトルに気が付く。

「なっち、お茶でいいでしょ?」
酒を飲んでないと言った手前、罰が悪く、努めて明るく振舞った。

返事は当然YESだろうと、冷蔵庫から作り置きしてある緑茶を取り出した。
「いや、なっち、ワインでいいよ」
「え?でも、明日・・・」
「いいから。グラス持ってきてよ」
腕を組んだ真顔のなっちは、視線を動かさず、小鼻が少し開いてる。


107 :ばいばい:04/01/25 04:12 ID:VM9Q9CGg

「なに難しい顔してんのさ」
私はなっちの前にグラスを置き、ワインを3分の1ほど注ぐ。
すると、なっちは一息に飲み干し、次を要求する。
言われるがまま、またワインを注ぐ。
なっちはそれもすぐに空にすると、再び私にグラスを突き出す。

「もうやめた方がいいんじゃない?」
「いいから」
「明日に響くよ。なっち酒弱いんだし」
「いいから!!これで最後」
この頑固娘を諭すのには時間がかかる。
そう思った私は、瓶を唇に当てると、残りのワインを一気に胃へ流し込んだ。
なっちはどこか解けたように、ソファに仰け反る。
「あ゙〜、気持ち悪い。圭織、やっぱお茶ちょうだい」

お茶を大きめのグラスに満たし、手渡す。
なっちはそれをおいしそうに喉を鳴らして飲む。
「いやー。やっぱ、日本人はお茶だね。ワインなんて、外国の飲み物はダメだよ」
「じゃあ、焼酎飲む?あるよ、圭ちゃんが持ってきたやつ」
「いやー、なんで圭織はこんな気分悪くなるだけのモノ、飲みたがるんだろうね」
なっちは笑顔でそこまで言うと、急に真剣な顔になる。
「ねぇ、なんで?」
「なんで?って言われても・・・なんでだろ」

ひとしきり考えてみるが、理由なんて見当たらない。
矢口が氷を食べてばかりなのと同じ、だと思う。


108 :ばいばい:04/01/25 04:15 ID:VM9Q9CGg
「なっち、それだけが心残りでさ。圭織、大丈夫?」
「大丈夫ってなにが?」
「その、健康面とか、ほら、その・・・いろいろあるっしょ」
私の生々しい傷口を撫でるかのような、なっちの口調。

「あの〜、安倍さん。もしかして、私が病んでるとか思っちゃってます?」
「え?いや、うん、まあ」
「で、酒に逃げてると」
「そんな感じ・・・かも」
意気込んで来たかと思えば、こんなんかい。
何とも言えない種類の脱力。

「何を勘違いしてんのよ。このオッチョコチョイ。たぶんだけどさ、裕ちゃん、
私が酒が強くなった、って意味で量が増えた、って言ってたんだと思うんだけど」
「でも、今日だって飲んでたし」
「確かに飲んでたけど、別に自分を見失うほど酔ってもないでしょ?」
なっちは自分の勘違いにゆっくり気付いたようで、その頬が徐々に紅潮していく。

「ね?」
私はとびっきりの笑顔を見せてみた。
なぁんだ、となっちはアホみたいに無防備に破顔する。
「なっちね、実はかなり心配してたんだよね」
「じゃあ、心残りが解消されたところで、日本の焼酎でも飲もうか」


109 :ばいばい:04/01/25 04:25 ID:VM9Q9CGg

なっちは私の意地悪な視線から顔を逸らすと、パソコンのモニターに目を留める。
白と青、2色のラインアートがモニターの中で踊るように形を変えていた。
「パソコンしてたんだ」
「ちょっとね。調べ物」
「なにを?」
「ひみつ〜」
なっちは立ち上がると、パソコンのところまで。
「ね、なっち、ちょっと!」
私の制止も聞かず、無遠慮にマウスを動かす。

パチン、と画面が切り替わる。

「え〜!なにこれ・・・チケット?・・・明日、の?」
「hello 横浜 25 夜」のキーワードで検索されたオークションサイトが開かれている。
そのどれもが高値で取り引きされ、中には何十万もの価格がついているものもある。
なっち自身、チケットがオークションで取り引きされていることは知っているだろうが、
自分の晴れ舞台がこれほどまでにプレミアがついていることは知らなかったのだろう。
後姿が小刻みに震えている。
「なんか、こういうの嫌だ」

「いや、私も帰りの車で社員に聞いて・・・」
興味本位の行動が、取り返しのつかない過ちのように感じられ、言葉を続けられなかった。
「・・・まあ、見ての通り。そういうこと」


110 :ばいばい:04/01/25 04:28 ID:VM9Q9CGg

「圭織。もう少し、飲もっか・・・」
力なく倒れるようにソファに沈み、身を小さく、自分の手で手を強く握り締めている。
伏せた瞳はうっすらと濡れているようで、ゆらゆらと揺れていた。

「お酒・・・まだあるんでしょ?」
半ば縋るように私の手を握り、瞳の奥まで覗き込んでくる。
なっちの手は冷たく、頼りない。

「あるよ。酒」
私はそう言うと、
キッチン備えつけの収納にしまってあったシャンメリーを取り出した。
クリスマスが過ぎて、半額で売っていたのを何となく買ったまま、飲まずにいたもの。
収納の中まで暖気は届いてなく、飲めるくらいには冷えていた。

新しいグラスに注ぎ、なっちに手渡す。
「焼酎じゃないの?」
「ほら、焼酎って、酒飲めない人にはきついから。甘いの、このスパークリングワイン」

なっちはグラスを両手で抱えるように持つと、そっと一口含み、
これなら飲めると、また一気に飲み干してしまう。

シャンメリーのボトルをテーブルに置くと、私はなっちの隣に座った。
「なんかさ、こうやってなっちと2人でいると、昔を思い出すね」


111 :ばいばい:04/01/25 04:32 ID:VM9Q9CGg

それきり、緩やかな沈黙が舞い降りる。
なっちはチビチビとグラスを舐め、私はなっちの息遣いを感じてる。

まだなっちと暮らしてしばらくしてからは、居心地の悪い沈黙が幾度となくあった。
当時、私達の仲は致命的だったが、2人ともそれを認められなかった。
だから、無理して2人、同じ部屋にいた。
仲違いをお互いに認めてしまったなら、
モーニング娘。の活動に支障がでるのではないかと、それが怖かったのだ。
馬鹿馬鹿しくて青臭い生真面目さだと、今なら笑い飛ばせてしまえることなのに。


112 :ばいばい:04/01/25 04:36 ID:VM9Q9CGg

「なんでかなぁ」
ちょっとした空気の切れ間、なっちがポツリと漏らした。
「ん?」
「あ、チケットのこと」
「需要と供給のバランスじゃないの?」
「まあ、そうだけどさ」
なっちは短く言葉を切り、少しだけ息を詰める。

「なんかね、そこまでしてくれる人がいるのは嬉しいことかもしれないけど、
わたしってそうなの?」
そこまでの魅力ある?
そう言ってるように聞こえた。

「私に聞いてもわかるわけないじゃん。
今更なっちを冷静に見ようなんて、無理な話なんだから」
あまりにも私に深く入り込んでいるから。
そう口にはしなかった。

「そっか。そうだよね」
なっちは嬉しそうに顔を綻ばせた。

私達だけにある関係、感じる温度、伝わる感情。



113 :ばいばい:04/01/25 04:47 ID:VM9Q9CGg

──

「いや〜。でも、なっちね、わかったわ。大人が辛い時、お酒を飲みたくなるの」
「なにそれ」
なっちはすっかり上機嫌で、シャンメリーをがばがば飲んでいる。

言葉足らずでも、存在を感じられるだけで事足りてしまう、絶対的な信頼。
それがなっちであることを、私は誇りに思う。

テンションの突き抜けてしまったなっち。
あまりにも私に飲ませようとするから、
私は何かの記念に飲もうとしていたワインのボトルを開けた。
なっちはそれを血の色みたいだと気味悪がり、いつもよりもっとアホみたいに笑う。

「なっち、圭織がいてくれて本当によかったよ」
曇りない眼差しで言う。
「圭織とは、いろいろあったよねぇ。いいことも、悪いことも、
嬉しいことも悲しいことも辛いこともむかついたことも、たくさん」
感慨深そうに言葉を噛み締める。


「そういえばさ、私達が仲悪くなるちょっと前にさ、なんか2人で・・・」
「あー!あれでしょ?圭織が足に画鋲刺さたってパニックになって、
なっちの大事にしてた置物かなんかを壊しちゃって、また泣き喚いて・・・」
「でもさ、あれって───」
───
──

私達は先を急ぐように、溢れる思い出を笑いあった。



114 :ばいばい:04/01/25 04:49 ID:VM9Q9CGg

言葉となった昔話が途切れると、なっちが遠慮がちに呟いた。
「ねぇ、圭織。明日さ、最後に泣く?」
「私が?泣くわけないっしょ」
「それが圭織の美学だから?」
「わかってんじゃん」
そう言って、私はそっぽ向く。
なっちの決心、鈍らせたくないんだよ。


「圭織、寂しがらなくてもいいんだよ。なっちはいつでも圭織の味方だよ」
「はい?」
「へへ、いいじゃーん。なんか言いたくなっただけ」
「じゃあさ、カオリの味方なら、モーニング娘。やめないで、
って言ったらやめないでくれんの?」
「でも、圭織はわたしのこと、応援してくれるんでしょ?」
「いーや。この際、はっきり言っとく。まだモーニング娘。一緒にやろうよ」

なっちは心底困った顔をして、散々悩んだ挙句、そのまま私に顔を近付ける。

「キスして誤魔化そうとすんなよ」
ビクッとなっちが距離を戻す。
「別にぃ?なっち、キスしようとなんてしてないよ」
唇を尖らせ、しどろもどろに言った。


115 :ばいばい:04/01/25 04:54 ID:VM9Q9CGg

そんななっちに助け舟を出すように、私の携帯が鳴った。
「矢口からだ」
なっちにそう言ってから、私は電話を取った。

矢口は酷く慌てた様子で、矢継ぎ早に話し出す。
『あ、圭織?今、ライブ終わってさ、あ、圭織もそん時はいたか。
でね、ご飯食べに行ったんだ。でね、もう帰ったんだけどさ、なっちがいないの。
あっ、っていうか、もうとっくにホテルなんだけどさ、ホテルにもいないし。
圭織、今何時なの?もうずっと探してんだけど。
携帯の電源も切ってあるし、あ〜、もうドコ行ったんだよ、なっちのやつ。
圭織、なっちどこにいるか知らない?って、知るわけないよね』

「今、ここにいるけど」
『だよね。わかった。なっちに何かあったらすぐに連絡して』
人の話を全く聞かずに、電話を切ってしまう。
かなり切羽詰っているようで、話の内容が微妙にちぐはぐだったし。


「なんだったの?」
「なんかね、メンバーが行方不明なんだって」
さーっとなっちの表情が翳る。
「だれ?」
「なっち」
「え?」
「なっち、誰にも言わずに来ちゃダメだよ」

ハッとしたなっちは、バタバタと鞄をひっくり返して携帯に電源を入れると、タイミングよく着信が来た。
「はい、もしもし。ごめんなさい。なっちは無事です。今から帰ります」
平謝りでぺこぺこ頭を下げていた。


116 :ばいばい:04/01/25 04:58 ID:VM9Q9CGg

電話を切っても、なっちはまだ落ち着かないようで、申し訳なさそうにあたふたしてる。
「ホテルに戻らなきゃ。あ、でも、お酒飲んでたってバレないかなぁ」
「大丈夫だよ。なっち飲んでたの、シャンメリーだし」
「はぁ?シャンメリー?・・・圭織、なっちをハメたのかい?」
「そりゃあねぇ。主役が二日酔いで酷い顔じゃ、DVDに残せないでしょ」

してやられた、といった風のなっちが、顔を真っ赤にさせて猛抗議。

ふと視線を外すと、掛け時計の針が12時に近づいていた。
やっとなっちのいなくなる日がリアルに感じられ、
それがどうしようもなく嫌で寂しくて、耐えられなくなってしまった。
なっちの顔、声、仕草、香り、温み・・・
その存在全てが私から遠ざかり、消えてしまうようで、涙腺が熱く震え、苦しかった。
未知の喪失感が、乱暴に私の胸の内を掻き乱した。

「いやぁ〜。でも、なっちはシャンメリー・・・飲んで、
大人が辛いとき、に、酒を飲む気持ちがわかっ、わかったんだ」
なっちをからかおうとしても、声が詰まり、
泣くまいとする意志とは裏腹に、ぽろぽろと涙が零れていくのがはっきりわかった。


117 :ばいばい:04/01/25 05:03 ID:VM9Q9CGg

「圭織?」
なっちが呼ぶと、堰を切ったように感情が私を突き破り、
気が付けば蹲って咽び泣いていた。

人前では泣かないと決めていたのに。
絶対なっちに涙は見せないと、固く心に決めていたのに。


「・・・圭織」
ふわっと包み込むように、なっちが私を抱きしめた。
なっちに抱きしめられるのは、たぶん初めてなんじゃないかと思う。


「ごめんね、なっち。なっちが気持ちよく卒業できるように、
ずっと頑張ってたんだけどね。無理だったわ。
泣きそうになっても、こっそりどっかで一人泣こうと思ってたのに。
あー、かっこわるい」

「ありがとう」
これまでに聞いたなによりも、なっちの言葉は優しかった。
私は、髪が乱れて露出したうなじに、ぽたぽたと降る滴を感じていた。


そのまま、私の嗚咽が止まるまで、なっちは私を抱きとめていてくれた。




118 :ばいばい:04/01/25 05:05 ID:VM9Q9CGg

──

なっちの腕の中、鬱積していた感情を全て吐き出して、妙にすっきりした気分だった。

「ねぇ、なっち」
「ん?」
「そろそろ戻れば?」
「圭織もでしょ?」
「・・・そうだね。みんなのとこに帰ろう」

私は涙を拭うと、なっちの背中に手を回し、力一杯に抱きすくめた。
非力な なっちも、同じ強さで返してくれる。
そこで、私はようやく顔を上げた。



119 :ばいばい:04/01/25 05:09 ID:VM9Q9CGg

──

マンションを出て、流しのタクシーを捕まえようと、大通りへ向かう。
その途中、後ろを歩いていたなっちが唐突に私の肩を掴み、強引に振り返らせる。
そして、まっすぐに私を見据えて言った。

「圭織、モーニング娘。を頼んだよ」
「・・・鬱陶しい」
「え?」
「鬱陶しいっつってんの。頼むとか、任せたとか。
みんな、私をなんだと思ってんのさ。どいつもこいつも勝手に出て行きやがって。
ったく、こんなこと言わせないでよ」

残される私の、精一杯の憎まれ口。


なっちは何もかも見透かしたように、私を優しく見つめている。
ただ、じっと。
私は無駄な抵抗は諦め、大きく息を吐いた。

「なっち、ありがとう」
──モーニング娘。には、私がいるから

底冷えする冬の夜気の中、東京では珍しく、星が綺麗に瞬いていた。





120 :ばいばい:04/01/25 05:10 ID:VM9Q9CGg

おわり

121 :名無し募集中。。。:04/01/29 02:12 ID:2YdTCl2V
保守

122 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:05 ID:KnHTVSSq
〈序曲〉

 すっかりと春らしくなった陽気に、庭のソメイヨシノの蕾が膨らみ、
風景全体が無機質な季節からの脱却を始めているようだ。
もうじき、薄ピンク色の花が咲き乱れ、美しい風景になるだろう。
中澤はブラインドの隙間から庭を覗き、春の息吹を感じていた。

「卒業式か・・・・・・」

本日、一人の少女が、ここを『卒業』する。
それはお目出度い事であり、彼女を祝福すべきだった。
あのソメイヨシノの蕾のように、彼女はこれから花を開く。
美しさと儚さ。ソメイヨシノと少女には共通点が多い。
中澤は溜息をつくと、立派な椅子に腰を降ろし、
机の上にあった『卒業証書』を手に取った。

「・・・・・・後藤真希」

昨日、雨が降ったせいか、この季節には珍しく、
透き通った青空に、眩しい太陽が照っていた。
庭先の水溜りに太陽が反射して、ブラインドに光のダンスを映している。
それを背に受けながら、中澤は机の上に置いたポカリスウェットを飲んだ。
二日酔い気味の渇いた胃は、水分を得て狂喜乱舞している。
その清涼感は、全てに勝ると言っても過言では無かった。

「そろそろやな」

中澤は腕時計を見て時間を確認すると、ポカリスウェットをもう一口飲み、
『卒業証書』を持って部屋を出て行った。

123 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:06 ID:KnHTVSSq
〈保田圭〉

 都内の某大手企業に総合職として入社した保田は、
将来を嘱望された優秀な人材だった。
そのせいか、配属先も活気がある第一営業部である。
彼女はここで、営業事務の仕事を任されていた。

「保田、お茶を煎れろ」

総合職の彼女にお茶汲みをさせるのは、
一般職だが先輩の石黒というOLだった。
石黒は鳴り物入りでやって来た保田を毛嫌いし、
露骨な虐めをしていたのである。
それでも我慢強い保田であるから、
嫌な顔もせずに、言われた事をやっていた。

「石黒さん、お茶が入りました」
「ぬるいんだよ!」

石黒は保田の顔にお茶をぶちかけた。
朝夕は若い男性社員がいるせいか、石黒も大人しくしている。
しかし、日中は営業マン全員が出払ってしまうため、
第一営業部は石黒の牙城と化していた。

「す、すみません。煎れ直して来ます」

保田には総合職としてのプライドもあったが、
とにかく我慢する事が必要だと思っていた。
ポジティヴな彼女だからこそ、そう考えられるのだろう。

124 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:07 ID:KnHTVSSq
 石黒の虐めは、次第にエスカレートして行った。
お茶汲みや雑用、残業を押し付けるのは当たり前で、
社員食堂で定食の入ったトレーを運ぶ彼女の足を引っ掛けたりもしたのである。
これにはポジティヴな保田も凹んでしまい、屋上で泣く事が多くなった。

「どうして虐められなきゃいけないの?」

遠くに見える東京タワーを見つめ、保田は悔し涙を流していた。
この就職難の時代に、自分の能力を評価してくれた会社。
彼女はそれに報いるため、全身全霊を懸けて奉仕しようとしていた。
だが、そんな気持ちも、石黒の虐めで頓挫しそうになる。
能力や知識だけでは補えないものが、そこにはあった。

「辞表を出したりするなよ」

驚いた保田が振り返ると、そこには同じ課の彼がいた。
彼は石黒と同期で、保田の事を心配していた一人である。
きつい性格の石黒に虐められ、これまでに何人も辞めて行った。
会社としては、そのくらいの事で辞める人間など必要ないわけであり、
卓越した能力を持つ石黒を責める事など無かったのである。

「ありがとうございます。私は辞めませんよ」

自分の事を心配してくれる人がいると思うと、
凹んでいた保田にも元気が出て来た。
彼は優しい笑顔が素敵な青年である。
保田に恋心が芽生えても、決して不思議な事では無かった。

125 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:07 ID:KnHTVSSq
 それからも、保田に対する石黒の虐めは続いた。
保田は精神的に追い詰められていたが、彼の存在が、
彼女を会社に何とか留まらせていたのである。
保田はストレスから眠れない夜が続き、
眼の下の隅を隠すのに苦労するようになった。

「疲れてるみたいだけど、大丈夫かい?」

彼に話し掛けられた保田は、鳥肌が立つほど嬉しくて、
思わず眼を潤ませながら笑顔で頷いた。
どんなにつらい事も、彼と話が出来ただけで忘れられる。
今、彼女を支えているのは、彼に対する恋心だけだった。

「へえ、あの保田がね・・・・・・」

石黒は物陰から、その様子を覗っていた。
彼に対する保田の恋心に気付いた石黒は、
精神的に立ち直れないほどの決定的な虐めを考えている。
それは、彼を保田から奪ってしまうというものだった。

「ねえ、今晩、空いてる?」

石黒は保田の眼の前で彼を誘った。
性格はきついが美人である石黒は、第一営業部の華である。
その華に誘われたのだから、彼に断る理由など無い。
石黒と彼は同期入社であるから、積もる話もあるのだろう。
保田は、そんな能天気な事を考えていた。

126 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:08 ID:KnHTVSSq
 翌日、彼に手作りの弁当を渡す石黒を見て、保田は茫然と立ち尽くした。
そこには、誰も入り込めない二人だけの空間が存在していたのである。
昨夜、二人が何をしたのか、いくら鈍感な保田でも予想がついた。

「そんな・・・・・・」

深く傷付いた保田は、眩暈を感じながら給湯室へ逃げ込んだ。
とにかく泣きたい。そう思った彼女はヤカンに水を汲み、ガスコンロに火を点ける。
これで、多少の泣き声は、お湯が沸く音が打ち消してくれるだろう。
失恋は悲しいが、保田にはどうする事も出来なかった。

「アハハハハ・・・・・・失恋しちゃった? 辞めちゃえば? 」

保田が顔を上げると、眼の前には勝ち誇った顔をした石黒が立っていた。
そうだ。この女は、私から何もかも取り上げてしまう。
保田の空っぽの頭の中に、悲しみと憎しみ、妬みや恨みが充満して行く。
彼女は全ての音が、遠くで聞こえるような錯覚にとらわれてしまった。

「彼を・・・・・・愛してるんですか?」
「んなわけないじゃん。あんな退屈な男。あんたが辞めないからよ」

これで石黒が彼を愛してると言えば、保田も納得しただろう。
しかし、石黒は保田を辞めさせるため、彼を利用したにすぎない。
これには、温厚な保田も箍が外れてしまった。

「この悪魔!」

保田は沸騰したお湯を、石黒の頭からブチかけたのである。
石黒は全治三週間の重傷。保田は殺人未遂と傷害の疑いで逮捕された。

127 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:08 ID:KnHTVSSq
〈矢口真里〉

 コンビニの前の公衆電話から、矢口は電話をしていた。
彼女の周りには、だらしない服装をした若い男達が屯している。
すでに日没の時刻で、あたりは次第に暗くなって来た。

「そう、あたし真・・・・・・真由美っていうの。中学二年生の十四歳」

彼女はテレクラに電話をかけ、中年男を誘い出す役だ。
小柄でハイトーンの彼女は、話し方によっては中学生でも通用する。
相手は三十代後半の男で、すぐに逢って食事をしたいと言う。

「ご飯食べるだけだったら、一万円でいいよ。
でも、それ以上だと、もっとお小遣いが欲しいな」

彼女達がやっているのは、俗に言うオヤジ狩りであり、
それは、実質的な強盗と同じ事である。
彼女達はこれまで、三人の男を襲い、二十万円を強奪していた。
下心がある男達は、決して警察に届けたりしない。
下手をすれば、淫行未遂で検挙されてしまうかもしれないからだ。

「それじゃ、甲州街道沿いの阿佐ヶ谷三丁目バス停の前で待ってるね」

そう言うと、矢口は電話を切り、男達にOKサインを出した。
彼女にしてみれば、別に悪い事をしているという感覚は無い。
それどころか、いたいけな少女を誘惑する悪い大人を、
自分達が退治するのだという正義感すらあった。

128 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:09 ID:KnHTVSSq
 矢口が待ち合わせの場所に来ると、男達は近くの物陰へと身を隠す。
後はスケベヅラをしたターゲットが現れるのを待つだけである。
矢口はすでに十九歳になっていたが、これだけ暗ければ小柄な事もあり、
中学生だと言っても充分に通用するだろう。
五分ほど待つと、スーツを着た三十代くらいの男がやって来た。

「あの、ちょっと・・・・・・」

男が矢口に話し掛けた途端、物陰から若い男達が姿を現す。
スーツ姿の男は、矢口の嫌悪感に満ちた顔を見て首を傾げた。
その直後、彼は若い男達に取り囲まれてしまう。

「何だ。君達は」
「うるせー!この変態オヤジ!」

腹を殴られ、腕を捩じ上げられた彼は、男達に近くの公園へ連れて行かれた。
すっかりと日が暮れた公園には、日中と違って人の姿など無い。
倉庫街にある公園の近くなど、ほとんど人通りが無かった。
彼はこの公園で、男達から何度も殴られたのである。

「カネを出せよ!この変態野郎!」
「待ってくれ。これは勘違いだ」

若い男達は彼の弁解など聞かず、執拗に殴りつけた。
一対一ならまだしも、数人がかりでは一方的な暴力である。
彼は鼻血を出し、唇を切って顔を腫らしていた。
そんな彼を矢口は冷めた眼で見ていた。

129 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:09 ID:KnHTVSSq
 男達が彼の財布を奪い取ると、これで終わりになるはずだった。
ところが、彼は財布を奪還しようと、男達に飛び掛って来たのである。
これには、何より男達の方が驚いてしまった。

「やめてくれ!それには今月の生活費が入ってるんだ!」
「この野郎!死にてえのか!」

彼がここまで財布に固執するとは思っていなかった男達は、
驚いた事もあって、徹底的に殴り付けてしまった。
すでに意識が無くなった彼を、男達は執拗に殴る。
さすがの矢口も、思わず止めに入ったくらいだ。

「やばいよ!死んじゃうよ!」
「この変態オヤジが!」

一人の男が突き飛ばすと、彼はジャングルジムに頭を強打して昏倒し、
そのまま動かなくなってしまった。
この時点で救急車を呼べば、まだ彼は助かったかもしれない。

「し・・・・・・死んじゃったんじゃない?」
「そ、そんな事ねえよ。行こうぜ」

矢口は後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。
まさか、彼が死んでいるとは、誰も思っていなかった。

130 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:10 ID:KnHTVSSq
 翌日、彼の死体が発見され、警察では強盗殺人事件として捜査を始めた。
強盗殺人事件ともなると、警察は威信にかけて捜査をするため、
数日で容疑者グループを割り出す事が出来たのである。
そして、逮捕された若い男の証言から、矢口は強盗殺人の共犯として逮捕された。

「お前達が殺した人には、小学生の子供がいるんだぞ」

検察官に指摘され、矢口は自分が犯した罪の大きさを実感した。
いくら少女を食い物にする悪い大人でも家族がいる。
矢口にしてみれば、そんな事は全く考えていなかった。

「で・・・・・・でも、中学生の女の子を食い物にする大人なんて・・・・・・」
「馬鹿!人違いだったんだよ!彼はたまたま通りかかっただけだ」

彼は妻に先立たれ、男手一つで子供を育てていたのである。
小学生の息子の誕生日という事もあり、彼は早く家に帰りたかった。
そこで、プレゼントを買い、早く帰れるバスを利用しようと思ったのである。
たまたま腕時計の電池が切れてしまい、彼は矢口に時間を聞きたかったのだ。

「そんな!」

彼女が裁判所から拘置所に移送される時、
ふと報道陣を見ると、その前に一人の子供がいる。
こんな場違いな風景は、彼女の中に違和感を残す。
俯きながら移送車に乗り込もうとした矢口に向かって、
少年は泣きながら大声で怒鳴った。

「この悪魔!おとうさんを返せ!」

その時の少年の眼を、彼女は一生忘れられないだろう。
その場で謝罪出来なかった自分に、矢口は後悔していた。

131 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:10 ID:KnHTVSSq
〈市井紗耶香〉

 市井は幼い頃から、あまり両親と一緒では無かった。
団体役員の父と市民運動家の母は、家に居る事が少なく、
彼女は一人で夕食を済ませて寝ていたのである。
市井家は市営住宅に住んでおり、裕福では無かったが、
いつも夕食を作ってくれる人が来ていた。

「紗耶香ちゃん、今日はオムライスですよ」
「わーい」

玉子を二個も使ったオムライスは、彼女の大好物だった。
しかし、食事を作ってくれる人も、彼女に食べさせると、
洗い物をして、さっさと帰ってしまう。
彼女は自分で風呂を沸かして入浴すると、
テレビを観たり本を読んだりして眠くなるのを待った。

「寂しいな・・・・・・」

彼女はテレビの前で膝を抱え、そこに顔を乗せて呟いた。
空腹でもなければ、欲しい物があるわけでもない。
ただ、両親と一緒に過ごしたかったのである。
そんな彼女の願いが叶う事は、残念ながら一度も無かった。

132 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:11 ID:KnHTVSSq
 やがて、市井も成長し、高校へ通う頃になると、
両親の仕事を理解するようになって来た。
五月一日には、両親が着飾って出掛けて行く。
この日に行われるものはメーデーであった。

「我々労働者の権利は、いつから踏み躙られるようになったのでしょうか!」

日比谷公園で行われたメーデーに、彼女は初めて参加した。
小雨の降る天候ではあったが、日比谷公園には二万人もの人が集まった。
傘の花が咲く中、彼女はここで初めて、両親の演説を聴いたのである。
そこには二十世紀の遺物である階級闘争が存在していた。
中間搾取と階級差別を否定した団塊の世代は、
年功序列の方程式に従い、順番で得た役職に、
しがみ付いているのが実態である。

「団結、ガンバロウ!」

いつからか、労働者の団結の象徴だったメーデーは、単なるお祭りとなり、
今日では日経連、経団連の役員を招いて開催されている。
七十年代には数千人の機動隊が警戒を行ったメーデーも、
今では申し訳ていどに、数十人が公園の隅で雑談していた。

「警察庁では、労働組合員の監視を始めています!」

ステージ上でそう言ったのは市井の母だった。
慌てた主催者側がマイクの音を切ってしまう。
降りしきる雨の中、聴衆が困惑した声を上げていた。

133 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:11 ID:KnHTVSSq
 それは、蒸し暑い夜の事だった。
一学期の期末テストの勉強をしていた市井は、
家の外で誰かが唸っているのを聞いたのである。
恐る恐る窓から覗いてみると、そこには彼女の父が倒れていた。

「お・・・・・・お父さん!」

彼女は家から飛び出して行って、血だらけの父を抱き起こした。
バットのようなもので殴られたらしく、あちこちに打撲があり、
両目は開けられないほど腫れ上がっている。
鼻骨は折れ、顎の骨も砕けているようだった。

「誰か!誰か救急車を呼んで!」

彼女が叫ぶと、近所から人が出て来た。
近所に住む同級生の母親が救急車を呼んでくれる。
幸い彼女の父の命に別状は無かったが、
通報した警察の対応は、とても冷たいものだった。

「酔っ払って転んだんだろ?」
「いいえ。父は下戸なんです」
「これは事故なんだよ!」

警察では彼女の話など、全く取り合わおうとしない。
その夜から彼女の母は姿を消し、父も病院からいなくなった。

134 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:12 ID:KnHTVSSq
 途方に暮れる市井は、眠れぬ夜が続いた。
数日すると、数人の捜査官がやって来て、
誰に遠慮するわけでもなく、家の中をひっくり返し始める。
市井が泣いてやめるように懇願すると、
捜査官はいきなり特殊警棒で殴り付けた。

「公務執行妨害の現行犯だ。連行しろ」

彼女の頭蓋骨は陥没し、全治一ヶ月の重傷だった。
それでも、警察は彼女を三日間入院させただけで、
公務執行妨害、銃刀法違反、殺人未遂の容疑で逮捕したのである。
まともに歩けない彼女を、警察は一睡もさせなかった。

「紗耶香ちゃんのご両親は、ある左翼団体の幹部だったの」

弁護士の接見で、彼女は両親の仕事を初めて知った。
アフリカ某国の反政府ゲリラに、大金を援助していたのである。
その資金は言うまでも無く、某共産国から出ていた。

「あたしをここから出して!お父さんやお母さんに逢わせて!」

彼女は泣いて弁護士に訴えたが、その日以来、弁護士の接見は無くなった。
今では食事を作りに来てくれていた女性が、たまに面会に来るだけだった。

135 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:12 ID:KnHTVSSq
〈後藤真希〉

 真希は幼い頃に父を亡くしたが、何ひとつ不自由無く育った。
平凡な小学生、中学生を経て、この春に高校へ進学した。
勉強は嫌いでは無かったが、平凡過ぎる毎日に嫌気がさしている。
そこそこ可愛い子ではあったが、魚顔の自分に自信が無く、
恋愛などは無縁であると頭から決めつけてしまっていた。

「アハハハハ・・・・・・だからさー」

窓際の席で大声で笑う豪快な少女は、
クラスで人気者の吉澤ひとみ。
真希は彼女のようになりたかった。
しかし、真希は無理である事を悟っていた。
なぜなら、吉澤ひとみはクラスの太陽だからである。
太陽はひとつあればいいのだ。

「真希ちゃん。クラブって行った事ある?」
「んあ?」

昼休みに真希がウトウトしていると、吉澤が話し掛けて来た。
寝惚けていた真希は、眼を擦りながら吉澤を見上げる。
ホクロの多い吉澤は、イタズラっぽい眼で真希を見ていた。

「クラブ?行った事無いけど、面倒そうじゃん」
「面白いよ。ねえ、明日の夜、一緒に行かない?」

なぜ吉澤が誘うのか判らなかったが、ここまで熱心に誘われたら、
断ってしまうのが気の毒に思えてしまった。
真希は何気なく約束してしまったが、これが全ての始まりだった。

136 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:13 ID:KnHTVSSq
 渋谷のクラブは、裏通りの雑居ビルの地下にあった。
薄暗い照明の中、ヒップホップが大音量で流れている。
半裸に近い恰好で踊り続ける少女達。甘い匂いのする煙。
そこでは、まるで治外法権のように、大麻が吸われており、
覚醒剤を注射し、コカインを鼻から吸引していた。

「何となく、かなりヤバイところみたいなんだけど」

さすがの真希も、こんな場所は危険だと思った。
中学生ほどではないが、女子高生はカネになる。
こうした少女を薬漬けにし、売春で儲けようとする男が後を断たない。
薬物中毒になった少女達は、麻薬欲しさに売春を始めるのだ。

「平気だって」

吉澤は近くの男を呼び止め、財布から三千円を出すと、
見るからに怪しい白い粉末の入った薬包を買った。
そして、真希と二人でテーブル席に座った吉澤は、
薬包を開けてから、ポケットから短く切ったストローを取り出す。
真希が唖然として見ていると、吉澤はストローを鼻に入れ、
白い粉末を少しだけ吸い込んだのだった。

「うはっ!効く!」

クラスの太陽が、法的禁制品を満喫している。
それは真希にとって、とてもショックな事だった。
しかし同時に、自分でもやってみたくなってしまう。

137 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:13 ID:KnHTVSSq
「真希ちゃんもやってみる?」

クラスの太陽と秘密を共有化したいという感覚で、
真希は差し出されたストローを握り締めた。
緊張のあまり手が震え、彼女は白い粉に顔を近付けてゆく。
そして、粉にストローを付けると、一気に吸い込んだのである。

「あうっ!」

鼻腔から耳に突き抜けるような痛みがあり、
真希は堪え切れずに悲鳴を上げてしまった。
素人にしては、大量に吸い込んでしまったのである。
ところが、痛みはえもいわれぬ快感へと変化し、
全てに刺激を感じて気分がハイになって行く。

「何か飲まない?」

軽そうな男が声を掛けて来た。
返事をするのも億劫な真希は、椅子に座ったまま虚空を見つめている。
吉澤にも別の男が声を掛けていた。
真希は介抱されながら、胸や太腿を触られる。
普段であれば悲鳴を上げるような事だったが、
彼女は嫌悪感よりも快感を感じていた。

「もう!真希ちゃん、帰ろう」

しつこい男に怒った吉澤は、真希の手を引いて店から出て行った。

138 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:14 ID:KnHTVSSq
 それから、真希は一人でクラブに行くようになった。
あのトリップ感は、他に味わえないほど刺激的だったのである。
やがて、真希は学校や渋谷のクラブにも行かなくなり、
自宅でコカインをやるようになった。

「アハハハハ・・・・・・原色・・・・・・ギャル・・・・・・アハハハハ・・・・・・」

ふくよかだった身体も、あまり食事をしないせいか、
頬はこけ、手足は栄養失調の子供のように細くなっていた。
わずか数ヶ月で、真希は重度のコカイン中毒になっていたのである。
彼女の状態は、刺激を求めた平凡な女子高生の堕落ぶりを、
まるで絵に描いたような状態だった。

「後藤真希だね?麻薬取締法違反で逮捕するよ」

捜査員が部屋に踏み込んだ時、彼女はベッドの上に座り、
涎を垂らしながら、虚空を見つめて笑っていた。
彼女は病院に搬送され、そこで医療少年院行きが決定する。
誰もが社会復帰は不可能だと思っていたが、
彼女は奇跡的な回復を見せ、逮捕されてから二年で、
一般の刑務所へと移って来たのだった。

139 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:14 ID:KnHTVSSq
〈逃亡〉

 たった六畳間しか無い部屋で、彼女達は暮らしていた。
室長の保田圭、矢口真里、そして市井紗耶香の三人である。
この寒さに耐え兼ね、三人は毛布に包っていた。
裸電球の真下にある食卓兼勉強机兼作業台では、
保田が手紙を書き、反対側では市井が小説を読んでいる。
矢口はというと、市井の背後で瞑想していた。

「ん?来るよ!」

耳のいい保田が、足音に気が付いた。
ここでは就寝時間外に、寝具を出す事が禁じられている。
三人は慌てて毛布を脱ぐと、丸めて押入れに放り込んだ。
その直後、ドアが開いて中澤が入って来た。

「今日から、この子が入るしな。虐めたらあかんよ」

中澤の隣には、どこか魚類を連想させる顔をした少女が立っていた。
少女は中澤に促され、気が付いたように自己紹介を始める。
『先輩』の三人は、寒さに震えながら彼女の自己紹介に注目した。

「後藤真希。十八歳です」
「あたし保田圭。ここの室長なの。判らない事があったら、何でも聞いてね」
「オイラ矢口真里。ちょっと背は低いけどナメんなよ」
「市井紗耶香。よろしくね」

一通り自己紹介が済むと、中澤は押入れからはみ出た毛布に気付くが、
見て見ぬふりをして出て行った。

140 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:15 ID:KnHTVSSq
 真希は最年少という事もあり、とても可愛がられた。
特に市井は、真希を事の他、面倒をみていたのである。
朝寝坊の真希を起こしたり、頬についた御飯粒を取ったりと、
まるで母親のように接していたのだった。

「いちーちゃん。寒いよう」

まだ十二月半ばだというのに、今年は寒さが厳しかった。
すでに日付が変る時間帯だったが、真希は寒くて眠れない。
そんな劣悪な環境ではあったものの、『全寮制』のここはある意味、
世俗に塗れた外界から隔絶されたパラダイスだと言える。

「しょうがないね。おいで」

市井が言い終わる前に、真希は彼女の布団に潜り込んで来た。
どんなに寒くても、二人で抱き合っていれば暖かい。
真希は市井を実姉のように慕い、いつも寄り添っていた。
彼女の天真爛漫な性格は、他の同居者にも癒しを与え、
みんなの妹的存在になっていたのである。

「うっせえんだよ!」
「そういう言い方はないじゃん!」

小さくても気が強い矢口と真希は、しょっちゅうケンカしている。
それでも、本当の姉妹喧嘩のようであるため、みんな笑いながら見ていた。
どこか影のある真希だったが、いつしかみんなの中心になっていた。

141 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:16 ID:KnHTVSSq
 大晦日は就寝時間が一時間だけ延長される。
明日は元旦で、なぜかみんなワクワクしていた。
そんな中、四人は部屋の中で頭を寄せ合い、何やら謀議を始めている。
例年に比べて寒くないが、それでも室内の温度は五度にも満たない。

「深夜一時に、厨房から出火するの」
「マ・・・・・・マジ?」

いつもは陽気な矢口も、ゴクリと固唾を飲み込んだ。
すると、市井は袋から小説を取り出し、フォントが違う活字を拾ってゆく。
知人からの差し入れだった小説には、暗号が隠されていたのだった。

「裏の出入口が開いてるの?」

保田が市井に訊くと、三人が唇に人差し指を当てた。
厨房が火事になって電気がショートしたら、あたりは真っ暗になる。
ダークグレーの『制服』であれば、壁際に移動すれば誰にも見付からないだろう。
普段は鍵が掛けられている裏口が開いているとすれば、
きっと、職員の中にも協力者がいる可能性が高い。

「外に出たら『制服』は着てられないから、中に違う服を着てようね」

とはいっても、大した服があるわけでもなし、
恐らく作業着等になってしまうだろう。
エプロン等を紐で縛ったりして加工すれば、
そこそこの服に見えなくもなかった。

142 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:17 ID:KnHTVSSq
 四人は寝たフリをして、午前一時になるのを待った。
遠くで除夜の鐘の音が聞こえ、新しい年の到来を告げている。
このあたりには民家も無く、人通りも少ないので、
まず誰かに目撃される事は無いだろう。

「そろそろだよ」

市井が押し殺した声で言うと、保田と矢口の返事が返って来た。
ところが、横にいるはずの真希の声が聞こえて来ない。
市井が真希を覗き込むと、事もあろうか寝息をたてている。
緊張で胃が痛くなるような中、真希は平気で眠っていた。

「起きなさい。この馬鹿」

市井に鼻をつままれ、真希は「んあ?」と言いながら眼を開けた。
その直後、けたたましいベルの音が響き、全員が飛び起きる。
非常ベルが鳴った時は、電灯を点けても良い事になっていたので、
保田が手探りでスイッチを押してみるが、点く事は無かった。

「厨房から出火しました!全員、外へ避難しなさい!」

廊下を眼をやると、マグライトの光が見えた。
四人はセロハンテープで右目を閉じさせる。
こうする事によって、右目を暗さに慣れさせるのだ。
そうでないと、暗い壁際を移動するなど不可能だからだ。

「行こう!」

市井が三人の肩を叩くと、全員が深く頷いた。

143 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:18 ID:KnHTVSSq
 四人は計画通り、壁際を通って裏口に向かった。
まさか、こんな騒ぎの時に、壁際を移動する者などいない。
警備の盲点を突いて、四人は裏口に到着した。

「やった。開いてる」

保田は嬉しそうに、上着を脱ぐと外へ出て行った。
他の三人も、慌てて上着を脱ぎ、保田に続く。
すると、待っていたように一台のクルマがやって来て、
市井に紙を渡して走り去って行った。

「これは地図だわ」

四人はとりあえず、見付からない場所へと移動し、
そこで地図を見ながら、今後の事を話し合う。
何しろ小銭さえ持っていないので、移動は徒歩に限られた。

「約二キロね。とりあえず、ここへ行ってみようよ」

市井はここに協力者がいると思っていた。
まずは、服を着替えて当面の逃亡資金を得る。
四人はゴミ箱からコンビニの袋を取り出し、
あたかも買い物をした帰りのように装った。

「心配しなくてもいいわよ。何かあったら、あたしが対応するから」

今年、二十四歳になる保田は、どう見ても大人だった。
いくら元旦とはいえ、深夜に少女だけの外出は警察がうるさい。
こうした時に保田のような大人がいれば、何かと便利だった。

144 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:19 ID:KnHTVSSq
 四人は怪しまれずに、住宅地のはずれにある民家へと向かった。
薄着だったが、早足で歩いたせいか、少しは身体が温まっている。
そして、目的地に着くと、一人の男が現れて、彼女達を中へと案内した。

「おじゃましまーす」

四人は何の疑いも無く、民家の中へと入って行く。
すると、男は「同志を呼んで来る」と言い残し、出て行ってしまった。
四人は居間のソファに座り、その同志が来るのを待っていた。

「圭ちゃんは、これからどうするの?」

市井はテレビとファンヒーターのスイッチを入れた。
たった六畳間であるから、すぐに暖まるだろう。
温かい飲み物が欲しかったが、同志が来るまで待つ事にする。
真希が押入れから毛布を引っ張り出して来て、市井と一緒に包った。

「あたしは・・・・・・今度こそ石黒を殺しに行く」

保田は石黒を殺さないと気が済まなかった。
そのために、市井の作戦に参加したのである。
石黒を殺害して逮捕されれば、待っているのは絞首台だろう。
それでも彼女は、憎い石黒を殺そうと思っていた。

145 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:20 ID:KnHTVSSq
「それも人生かもしれないね。やぐっつぁんは?」
「オイラは、あの子に逢って謝るよ。そうじゃないとオイラ・・・・・・」

矢口は、あの少年に謝罪したくて参加したのだ。
何の罪も無い父を惨殺され、少年はどれほど傷付いただろう。
それを思うと、矢口は胸が張り裂けそうになる。
普段は元気で陽気な矢口も、こんな傷を背負っていた。

「そう言う紗耶香は、これからどうするの?」
「アフリカに行く事になると思う」

彼女の両親が無事ならば、資金援助したゲリラに匿われているだろう。
協力者によって、ロシア経由等でアフリカへ渡る可能性が高かった。
彼女は右翼系作家の本を読んで、監視者を油断させていたが、
根本的に両親から受け継いだ左翼思想は曲げていなかったのだ。

146 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:21 ID:KnHTVSSq
「真希は?」
「あたしは・・・・・・」

その時、外が騒がしくなり、電気が消えてしまった。
驚いた市井が外を見ると、そこには赤色灯が回転している。
夥しい数の警察官が、この家を取り囲んでいた。

「ど・・・・・・どういう事?」
「逃げなきゃ・・・・・・うっ!」

台所へ飛び込んだ真希は、何かに躓いて転んでしまう。
窓から入る回転灯の明かりで凝視してみると、
彼女が躓いたのは、中年の女性の死体だった。

「い・・・・・・いちーちゃん!」
「真希!どうしたの!」

市井はライターを見付け、怯える真希を照らしてみた。
すると、その足元には、頭が半分吹き飛んだ死体が転がっている。
真希を抱き締めて悲鳴を上げる市井に、矢口は怖くなって浴室に逃げ込んだ。
すると、そこには後頭部に大きな穴が開いた初老の男の死体があった。

「そ・・・・・・そんな」

腰を抜かす矢口に、さすがの保田も抱き付いて怯えた。

147 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:21 ID:KnHTVSSq
 次の瞬間、裏口が破られ、二人の男が飛び込んで来た。
一人の男が散弾銃を天井に向けて何発も発射する。
悲鳴を上げて怯える四人に、もう一人の男が拳銃を向けた。
強力なライトで照らされ、四人は眩惑されていた。

「こいつは保田圭だ。実行!」

そう言うと、男は拳銃で保田の頭を撃ち抜いた。
即死した保田の頭を蹴ると、蹲って震えている矢口を引き起こす。
その間も、もう一人の男は散弾銃を撃っていた。

「矢口真里だ。実行!」

男は矢口を放り投げると、背中めがけて三発発射した。
苦しそうに唸った矢口も、すぐに動かなくなる。
そして、悲鳴を上げる市井の髪を掴んだ男は、
ライトで顔を照らしてみた。

「いたぞ。市井紗耶香だ。実行!」

男は市井の額に銃口を当て、引き金を引いた。
市井が即死すると、男達は引き揚げようとしたが、
真希の悲鳴を聞いて困ってしまった。

「おい、誰かいるぞ」
「こいつは、同室の後藤真希だな」
「まさか、一緒に逃げるとは思わなかった」
「実行するのか?」
「いや、後藤は未成年だ。殺すとまずい」
「とりあえず、気絶させておこう」

男は真希の頭を散弾銃の銃床で殴った。

148 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:22 ID:KnHTVSSq
 一日午前二時ごろ、鹿児島市内の山崎直樹さん方に、
近くの鹿児島女子刑務所を脱獄した四人の女たちが侵入した。
四人は山崎さん所有の猟銃を奪い、山崎さんと妻を射殺し、
約一時間にわたって立て篭もった。
 再三の説得にも応じなかったため、警察は強行突入をした。
女たちは猟銃を撃って抵抗したため、警察と銃撃戦となり、
主犯格の市井紗耶香容疑者(20)と共犯の保田圭容疑者(23)、
同、矢口真里容疑者(20)が警察官により射殺された。
 抵抗をせずにいた十八歳の少女は無事で、
警察では事件との関与を調べている。

 新聞報道は捏造されたものだった。
これは警察庁による罠であり、市井を殺害する事が目的だったのである。
彼女は母親以上のカリスマ性を持っており、警察庁では暗殺を企てていたのだ。
刑務所内で病死すれば、市井は殉教者として崇められる事になるだろう。
そうならないために、警察庁では合法的に市井を殺す計画をたてていたのだ。
刑務所の所長以下数名を買収し、『内通者』が存在するように思わせ、
市井に脱獄をさせようと企んだのである。
市井と同室の保田と矢口は、最初から一緒に殺すつもりで同室にし、
山崎夫妻も警察庁のエージェントが殺したのだった。
真希の存在は予想外で、警察庁では責任の押し付け合いを行った挙句、
ウヤムヤにしてしまう事でおしまいとなった。

149 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:23 ID:KnHTVSSq
〈たった一人の卒業式〉

 その大きな部屋には何も無く、ただ数脚の椅子が並べてあるだけだった。
薄汚れた床や壁からは、冷たさと悲しみしか感じない。
そんな中、窓から差し込む春の日差しだけが、少しばかりの温かさを感じさせていた。
限り無く無音に近い部屋の中に、その少女は俯いたまま座っている。
彼女の名前は後藤真希。本日、ここを『卒業』する少女だった。

「・・・・・・」

数人の足音が聞こえて来る。それは真希が何度も聞いた音。
革靴の音。恐怖の音。非常識の音。そして非情の音だった。
足音は部屋の前で止まり、ドアが開いて彼女達が入って来る。
真希は疲れた顔を上げて彼女達を見た。

「時間や。始めるで」

中澤が無造作に椅子に座ると、彼女達は壁に貼られた国旗に礼をしてから、
厳めしい顔をしながら、形式的に椅子へ腰を降ろした。
こんな単純なデザインの国旗が、何の意味を持つのだろう。
ある国では侵略者の象徴であり、ある国では差別の対象。
また、ある国ではユートピアであり、ある国では、どうでもいい事だった。

「どうも保護者がいないと、サマにならへんな」

司会・進行役の稲葉は、苦笑しながら立ち上がった。
中澤に眼で促されて真希が立ち上がると、
たった一人の『卒業式』が始まったのである。

150 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:23 ID:KnHTVSSq
 柔らな春の日差しが差し込む窓を見ながら、中澤は在り来たりの話を始めた。
こんな話が真希にとって、いったい何の意味を持つのだろう。
俯くこの少女に、死んで行った彼女達は、どう映ったのだろうか。
真希に長い冬が終わったような、晴れやかな顔は無かった。

「卒業生、後藤真希」
「はい」

『卒業証書』を授与された真希は、卒業にあたっての作文を朗読する。
勿論、それは予め用意されたものであるのは、言うまでも無い。
こんな馬鹿げた卒業式でも、仕事だからやらなくてはいけなかった。
中澤は疲れた顔でため息をついた。

「卒業に当たり、お世話になった教官の先生方、せ・・・・・・先輩・・・・・・」

真希は声を震わし、涙をポロポロと溢し始めた。
そして、少しすると、膝を付いて号泣してしまう。
慌てた稲葉が真希を抱き起こそうとすると、
裕子は唇を振るわせながら立ち上がった。

「泣くんやない!これが現実や!生き残れただけでも感謝せえ!」

中澤は稲葉を突き飛ばして、号泣する真希を抱き締めた。
そして、一方的に卒業式を終わらせ、自室に戻ってしまう。
前代未聞の卒業式に、教官達が動揺している。
それを落ち着かせたのは、司会・進行役の稲葉だった。

151 :ひとりぼっちの卒業式:04/02/03 22:24 ID:KnHTVSSq
 警察庁に買収された鹿児島女子刑務所の数人は、
発覚を警戒した警察庁によって、別の職場へと移動させられた。
そのため、一気に管理者がいなくなり、中澤のような年齢でも、
所長代行を務める事になってしまったのである。
公表される事は無かったが、中澤はこの事件の概要を悟っていた。

「これからは、しっかり生きなあかんで」

稲葉は真希の出所(卒業)の手続きを済ませ、
正面玄関まで真希を見送る事にした。
誰も迎えに来ない不幸な少女だったが、
それ以上に彼女の心は傷付いている。
十八歳の少女にしてみれば、あまりにも辛い現実だった。

「ほんま、辛いやろな・・・・・・」

中澤は窓から外を見ながら溜息をつく。
悪夢は悪夢で終わった方がいい。
覚めない夢など無いのだから。

「うちも、もう疲れたわ」

卒業式を終え、ここから去って行く真希の後姿を見つめ、
中澤は一気にポカリスウェットを飲み干した。


〔終〕

152 :名無し募集中。。。:04/02/05 00:42 ID:XDN/ob0z
○●終了●○

153 :名無し募集中。。。:04/02/06 02:52 ID:87WoyBmF
ho

154 :名無し募集中。。。:04/02/07 02:14 ID:20xDgE1U
age

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